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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第3章 少年期移住生活編
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3-38 冬の結果と周りの移り変わり

 ペットに浮かれつつも冬仕事に訓練にと精を出した冬も下月の中頃、俺も漸く他人の魔力が分かりだした。


今冬からたまにリュートとフェリがサウナ石の中規模の塊に挑戦しているのだ。

まだまだ暖房になるほどではないが、起き始めの冷え切ったサウナ石を仄かに温める程度には魔力量は増えて来ている。


中規模の塊になると存外魔力が動いているらしく、魔力を感じ取れている。もっとも、集中すれば4回に1回くらい違和感を感じる程度だ。

リュートの言っていた事も本当だと分かり一応の検証を終了したが、今は確実に違和感を感じ取れるよう目下集中力を磨いている。

何となくこの他人の魔力を観測する技能は役に立つと思うからだ。




 冬もあと少しで終わりの時季まで経った。

畑については昨年の様な畑の除雪作業をするほど切羽詰まっていないので自然に任せることにし、農具の点検を行い春の訪れをゆったりと待っている。


シラタマやリュートが見つけたリグルスライム、名前はニューラは、すくすく成長し、今やスーパーボール程の大きさになった。

ただし、


「さてリュート、冬の間は暖房に魔力を使っていたが、春からはどうする?」


そう、冬の間は暖房用に使っている魔術でシラタマ達のエサを補充しているが、それ以外の季節は何か補充方法を考えないといけない。


「そもそもどれ位の頻度であげたらいいんだろう?」

「たしかに」


俺達はまだこのリグルスライムについて何も知らない。

どれ程の期間内にどれ程の魔素を取り込めれば健康?に支障が無いのか全く分からん。通常の生物の様にエサの量が目に見えるわけじゃないのが特にいたい。

それに元気がいいのか弱っているのかすらまだ見分けがつかんし、検証を行うわけにもいかない。


「だが、案を準備しておく事に越したことはない」

「うん」


こうして、リグルスライムのエサの補充方法に関する話し合いが行われた。



 話し合いから数日経ち、春も目前の今日は本屋に来た。


「いらっしゃいませー」

「うん?・・・・新人さん?」


本屋への扉を開けると、店主さんではない人がカウンターに居た。

人を雇っただろうか?


「はい、今月からこちらにお世話になっているピリンです。よろしくお願いね」

「これはどうも」


ふむ、背は店主さんと同じくらいの子、つまりまだ成人前の女の子だな。

やっぱり店主さん人を雇ったんだな。貸本業も始めたから接客頻度が写本作業に差支えだしたんだろうな。


「では、まずこれの返却をお願いします」


俺は借りていた本入りの袋をカウンターに乗せた。

店員さんは中に入っていた本の状態を何かメモみたいのを見ながら確かめていた。今月と言っても最近なのかな?


「クロディーアさんはお出掛け中ですか?」


店主さん、何時もいるカウンター奥の作業スペースには居ないし、今日は営業に出ていない日を選んできているんだが。


「クロディーアさんは事務室にいますが、あの、私ではダメですか」

「いえいえ、そう言うわけでは。事務室?・・・あー3階か」


この店に事務スペースなんて裏方の場所は無い。だから家を事務スペースとして確保しているのだろう。


「クロディーアさんのお知り合いですか」

「数年来ここには通ってますからね。・・では、秋頃から新たに並んだ本はありますか?」

「あっ、はい」


いくつか本を並べられたが相変わらず魔術関連本が無いな。前に来た時貸本の中に魔術関連本が無かった。

魔術関連本はどうやら魔術協会で探すが一般的だそうで、ここの本屋では需要が無くほぼ死蔵状態で写本の優先順位が低いみたいだ。


今回こそ要望を出すか?・・いや、自力で見識を深めるのも大事だ。・・・うん、やはり自然に出るまで待とう。

魔術協会では本の購入や閲覧は会員である必要があるそうで、そちらで用立てるつもりは端から無い。


「はい、これが秋頃から新たに並んだ本達です」

「なるほど・・・・・・無いな」


今回新たに並んだ中に食指が動く本は無かった。そのため棚から直接選んだ。



 本を借り終え、店を出て今度は3階に上がった。

関係者以外立ち入り禁止だが、1階の骨董店の店主とも知り合いのため、内階段を上っていても止められなかった。


家の扉をノックすると、掛け声と共に店主さんが出て来た。


「こんにちは」

「あら、こんにちはウィル君」

「人を雇ったんですね、店に行った時店員さんがいて驚きましたよ」

「ええ、1人では回らなくなってね。それで家まで訪ねてきたのは?」

「もちろん、コレですよ」


持って来た紙を見せた。


得心がいったのか家に通され机の上に今回の分を置き代金を貰い、その後雑談に講じて家路についた。





 春の上月に突入し、うちでは例年通りに作業するだけだが、周りの畑、昨年だけ利用された畑にはあるものが植わっていた。


そのあるものとは菜種だ。

菜種。所謂油用作物でこの都市の植物油の殆どはこれが原料だ。

それが植わっているのだ。


菜種は生命力が強く、手間も掛からないため都市政府が避難民が帰る前に種を蒔かせた。

収穫期には労働者を募集するみたいだから、漸く都市政府が休耕地対策を始めたという事だろう。まったくタダじゃ起きないな。


あと半月ほどしたらあの黄色い花が辺り一面に咲き誇るそうだ。

これで油の値段が下がったら家計に優しいな。




「じゃあ2人とも任せたよ」

「「はい」」

うちは例年通りに作業する訳だが、今春からリュートとフェリが小型管理機を扱える程魔力量が増えた。

まだ少し魔闘技の習熟は出来ていないため不安要素があるが今春中に慣れれば十分モノになるだろう。

2人が扱う小型管理機は冬の間に2台作った。つまり計3台家には小型管理機がある訳だ。過剰戦力気味だな。


2人が各々の小型管理機に魔術を掛けて耕起作業を開始した。

俺は2人が十分仕事になるか最終チェック後作業を開始する予定だ。



ふむふむ


ふむふむ



2人の実演が終わり、2人とも今は小型管理機にもたれかかって休んでいる。

「じゃあ結果を発表します。・・・・・・・2人とも頑張り過ぎだね」

これが2人への評価だ。


「えっと、どういう事?」

「もう大丈夫ってことでいいの?」

「大丈夫では無いな。2人とも速度の出し過ぎてる事が問題だ。いいかい………」


俺はこんこんと2人に畑作業とは何かを説いた。

畑作業とはただ速く作業できればいい訳ではなく、周りの状況を確かめながら作業できる余裕が必要だ。

2人は普段俺がしているような速度で運転していた。それは魔闘技に慣れていない2人には余裕が無い厳しい速度だ。

適度な余裕の程度は人それぞれだが、これも訓練をしないと見に着かないもので、経験とでも言い換えても良い。


「……ってことで自分で周りを見れる程度に速度を落として作業するように」


そう説くと、2人を遠巻きに見れる畑に移動して母と一緒に収穫植え付けが残っている畑の作業に入った。

操作自体は問題なかったからあとは2人に任せても大丈夫だろう。



「今年は小型管理機を使う機会があまりないなぁ」

「あら、畑を増やして欲しいっていう意味~?」

「いや全然全くそう言う意図はない。ただ単に事実確認をしただけ」


今年は畑を増やしていないから俺が小型管理機を使う機会がほとんどない。フーホーは収穫後直ぐに植え付けを出来るため数回毎に畑を均す程度で今年はその作業をリュートとフェリの2人だけで十分回せるだろう。


「あらそおう?」


母の隙あらば仕事を増やす癖は何とかしてもらいたい。


だが、これで2人も戦力に数えても良さそうなので、今年は堅実な農業計画を立てたが来年はいろいろ変更を加えても大丈夫そうだ。・・・・うん?・・・どうやら俺は母の隙あらば仕事を増やす癖を継承している可能性があるっぽい。



 春の下月に突入し菜種の花が辺り一面に咲き誇った。


「まるで絨毯だな」


手入れをされていない菜種はところどころ歯抜けだがそれでも十分絨毯という印象を俺に与えてくる。休日ならゆったり花見して過ごしたい風景だ。

また半月位すれば今度は収穫が始まり一面に禿畑が広がるだろう。


今年はこれが休耕地対策のモデルケースで次蒔くかはまだ話が流れて来ていないため、もしかしたら最初で最後の機会かもしれない。

しっかり目に焼き付けておこう。




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