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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第1章 幼少期編
7/93

1-06 幼児プレイ5 初魔術と交易祭、そして奴との因縁の始まり

初の1万字越えです。

連続投稿継続中。

 あの忌まわしき出来事から一夜あけ、不貞寝も朝までしっかり取った。つまり熟睡だ。

昨日の出来事はとりあえず『許すまじラック帳』に記帳して、いよいよ今日は魔術を使える。


 朝食も終わりいつものように家事のお手伝いを終わらせて、部屋で練習しようとすると母も一緒に入ってきた。

「ウィルちゃん、今日はがんばってね」

そう言いながらこちらを見てる。これは、

「まず1人で練習したいんだけど」


「ウィルちゃんの雄姿をみたくて。ね、ダメ?」

「ダメー!」


「えー、そんなこと言わないで。ママ悲しいわー。悲しくて悲しくてもう呪文を忘れてしまいそうだわー」

くっ、人質を取られた。これはヤバい。・・・しかたない

「ママ、ボクの雄姿を見ててね」

1人での練習を諦めた。



 さて、母はいない者として集中しないとな。まずは、精神を落ち着かせ、・・・やるぞ

「cma jsomrohikeou ouhoookitoyusiio covs」

呪文を唱えるとあの感覚があった。経路が開いたな。後はこれを保持するだけだ。




失敗した。もう1回挑戦だ。


「cma jsomrohikeou ouhoookitoyusiio covs」

後は保持する。保持する。保持する。・・・・成功だ。何か、たぶん魔力が一気に抜けていく感覚がして、指先に光の玉が出現した。ほんの10秒ほどだったが初めての成功だ。


「ヨッッッシャ―――――――!」

俺はついにやったぞ、魔術を使ってやったぞ。俺も今日から魔術師デビューだ。マ○ラタウンにさよならだぜ。



「やったわね、ウィル」

・・・ギッギギギ・・・・・忘れてた。俺は見られてることに。

くろれきし~確定。『ゆる帳』にとりあえず記帳して、この件は忘れることにしよう。


「うん、やったよママ。これでボクも魔術師になったよ」


「うんうん、おめでとうウィル。水を差すようだけど、あんまり使いすぎないよう気をつけてね。魔力が使いすぎると、体力も落ちちゃうから病気に罹りやすくなるから、しっかり休むこと。いいわね」


「分かったよ。今さっきので結構疲れたから今から一旦休憩にするよ」


「いい子ね。しっかり休憩を取ることも立派な魔術師への大事な一歩と言う話よ」

そう言い残して母は家事をしに部屋を出て行った。


ふぅー。初めて魔術を使ったが、疲れたな。それに体に力が入らん。昨日まで疲れ方とは明らかに違い、一気に疲れが押し寄せてきたみたいだ。これは何度も魔術を使用できないな。

だが魔術を使った今なら今まで感じられなった自分の魔力を何となく感じ取れる。

これは朗報だ。


気を取り直したところで、よし寝るか。朝の昼寝だ。





・・・寝れん。

おかしい。普段でも寝つきが悪いときがあるが、その時の比じゃねぇ。感覚が鋭敏すぎる。窓から入る日の光が眩しいし、服の衣擦れも煩わしいし、果ては自分の息遣いすらもどかしい。


これでは外を走り回った方がまだ建設的だと思い、寝るのを諦めた。



 眠れはしなかったが、体調は楽になってた。少しは魔力が回復してるのだろう。だが、それ以上は分からん。魔術を使った後には分かっていた自分の魔力も感じ取れなくなっている。・・・もしかして魔術使うと感覚が鋭くなり、魔力が分かるようになるけど、それ以外では元の鈍感に戻って感じ取れなくなるってことなのか?

確かめるにはもう1回しないと分からないな。とりあえず母のところへ行ってこの現象についても聞いてみようか。


「ママー」

「あらどうしたのウィル?お休みはもう終わり?」


「なんか体が変になって、眠れないの」

そう正直に報告すると、


「・・・・・!、忘れてたわ。魔術を使い始めた頃には体調を崩す人が偶にいるのよ。ウィルもそうだったのね」

それは先に教えておいてほしかったな。


「それはもう我慢するしかないわ。症状は人によって違うけど、体の感覚が鋭くなる人や、体が冷える、逆に体が熱くなるっていうのが症状が出る人が多いと聞くわ。ウィルもこのどれかなの?」


「うん」


「なら大丈夫よ。これは魔術を使い続けるうちに収まっていくらしいわ」

ふむ、別に俺だけが変だったわけじゃないみたいだな。


「ママはこの症状がでなかったの?」


「ママは出なかったわ。パパには聞いたことないから分からないけど、ラックも出なかったからすっかり忘れてたの」

出る者は半分以下のなのかな?


「あっ、あれも忘れたわ。ウィル、ママちょっと出かけてくるけど、ちゃんとお留守番しててね」

そう言うと母はそそくさと家から出て行ってしまった。

あれも忘れてた?あれって・・・



 しばらく部屋で悶々としていると母が帰ってきた。


「どこいってたの?」

「これを貰いに行ってたのよ」

母が持ってたカゴの中を覗くと、・・・・奴だ。奴がいた。

「ねぇ、これって」


「ええ『フーホー』よ」

やっぱり。


俺は好き嫌いはあるが、食べ物に関してはそんなに気にしない性質だ。だがこの『フーホー』は別だ。こいつは見た目はジャガイモみたいに見えるが、植生と食感が全く違うこの世界でしか見たことがないイモ?果菜?だ。ジャガイモのように植えるとどんな荒れ地でも育ち、果実としてこいつ(・・・)が実る。更に地面を掘るとまたこいつ(・・・)が取れる。つまり、地下茎?と同じものが地上にも実るというトンデモ植物だ。地下茎の奴と果実の奴は厳密には違うからもしれんが、土を綺麗に落としたら俺には見分けがつかん。

ここまでは別に、面白い植物もあるもんだなーと思う程度だが、こいつの真価はそこじゃない。

味だ。


食感自体は外側がまあまあの噛み応えで、中に行くほど柔らかくなり真ん中あたりははんぺんのような食感だ。そして味は美味くはない、いや不味くもない。というか味がない。徹底的に味がない。味も染み込まないし、一緒に食べたものの味も薄くなる万能の調味料?だ。ただ、カロリーと栄養は有るようで、荒れ地でも育つ性質から開拓地のお供としてこの地で長く愛されてきた食材だ。


俺はこいつを食べるのが悔しい。味がすべて消滅するのだ。死ぬのはいい死体は残るからな、いやよくないが。でも不味いという結果を残してくれる。なのにこいつは何も残さない。それがどうしようもなく悔しい。


「なんで貰ってきたの?」

全くなんでだよ。


「ふふっ、ウィルは本当にフーホーが嫌いね。でもこれは魔力関連で体調を崩した時の定番の病人食よ。体調を崩した時、他の物を食べるともどしてしまうことも結構あるんだけど、これはほとんどそんなことがないことが分かってるから魔術師には必需品なのよ。昔はこれがこの都市の主食だったんだけど、味がちょっとね。最近は他の食材に押され気味だけど、栄養と魔力関連から1週間に2個以上は食べるよう領主様から御触れが出されているわ」

なっ!なんだと。この都市の領主はこいつを推奨してるだと。・・戦争だ。くさった利権の匂いがしやがる。フーホー農家と商人と領主との癒着だ。これを理由にとりあえず吹っかけてやる。・・・20年後くらいに。


「・・・」


「ウィル、これで存分に魔術の練習をしてもいいわよ。倒れたらちゃんとフーホー料理を作ってあげるからね」


「オレ、シッカリヤスミナガラレンシュウスルカライラナイヨ」

俺は部屋に逃げ込んだ。負けられない戦いがここに誕生した。週に2回は食べてんだ、これ以上増やされるわけにはいかん。だが魔術の練習もしたい。あぁー俺はどうすればいいんだ・・・・・




決めた。魔術の練習は呪文を覚えるのに集中して、発動は日に1回だ。それ以上はあいつの餌食になる可能性が高い。



 今日はもう魔術の発動をしないことに決めると、一気に暇になった。ここ数日家事の手伝い以外はずっと練習していたからな。さてどうしようか。


えーと、この部屋にある物は、寝具が2、机、椅子が2、タンス・・・・何もないな。仕方ない、今はあまり会いたくないが母に会いに行くか。


「ママ、他の呪文も教えて」

「あら、どうしたの。光の呪文も1回しか成功してないわよね」

「うん、魔術の発動は疲れるから休憩中は呪文を覚えることにしたんだ。だから教えて?」

「うーん、あれ以外で安全なのは・・・・あれね」

「準備するからちょっと待っててね」

次の魔術は何かなと待っていると、母が持ってきたのは桶だ。

「じゃあ井戸のところへ行きましょ」


連れて行かれたのは家の水を汲んでいる井戸。ちょうど今は誰も使っていなかった。


「さてと、まずは水を汲むわよ」

俺はまだ小さいから水汲みはできない。がんばってー


「じゃあウィル見ててね」

汲んだ水を桶に入れて、

「cma jsomrose tituoomowiueide gteihjo mev」


そう唱えると、桶の水の一部が盛り上がって、・・浮かび上がった。そして、その状態が5秒ほど続いたら水球が崩れ桶に戻った。飛ばさないのかよ。

「はい、これが水浮遊の魔術よ。そしてこれが」

「cma jsomrose tituoomowiueide mentelte mev」


今度は浮かび上がった水が2メートル程飛んだ。

「水飛翔の魔術よ。今日はこの2つを教えるわ」

水を操るか、水汲みや楽になるか?いや、光の魔術は結構疲れた。これも魔力的に厳しそうだ。


「今のさっきの呪文は最後が違うだけで、ほとんど同じものよ。さぁ復唱して」

こうして、呪文の練習が始まった。



 今回の呪文は光の呪文と始まりは同じで、途中から変わっていく。覚えるのは難しくなかったが、何か書くものがあれば法則性を見つけるのが楽になると思い、練習を終え家に帰ってきてから母に聞いてみた。

「何か書くものってない」

「どうするの?ママも文字は知らないわよ」

そうなのだ市民のほとんどが字が読めないし書けない。文字はあるらしいのだが俺はほぼ見たことがない。お金はあるから数字だけは認識されているがそれ以外は口伝いに聞くしかない。

でも俺には前世の日本語がある。

「文字が分からなくても同じ音に同じ記号を使えば大丈夫だよ。ね、書くものある?」

「そう?・・確か前パパが使ってた石筆があったと思うわ、あとは石板か木板ね。木なら自分で割って作った方が早いかもね」

戸棚から石筆を持ってきてくれた。

「割れやすいから気を付けてね」

「ありがと、板は自分で作るよ、使ってもいい木ってある?」

「薪に使うようの木ならあるわ、でもまだ丸太のままだからウィルにはちょっと無理じゃない」

そうだった。井戸の水も汲めない俺には丸太を割る用の斧なんか使えない。

「・・おねがいします」

「ふふっ、おねがいされました」

不覚。


石筆と木の板を手に入れ、俺の生活レベルは上がった。チャチャチャチャーチャー♪~・・ゴホッゴホッ!あぶない。



 次の日、水運びを無理を言って手伝って何とか魔術練習用の水を確保した。さて他の手伝いも終わったからそろそろ昨日習った魔術を使うぞ。昨日習ったのは2つだからどっちにしようかな?・・・・まずは、浮遊でいいか。


よし、集中して、・・・

「cma jsomrose tituoomowiuede gteihjo mev」


・・・成功だ。今回は3回失敗して、4回目に成功した。目の前に水の玉が浮いてる。今回は眠らずこの感覚がどれくらい持つのか調査だ。


意識を集中しているが、前回と同じように感覚が鋭くなってるのが分かる。おかげで集中が乱され、危うく魔力を見失いそうになったが今のところ追えている。


どれぐらい経っただろう?5分?10分?それとも1時間だろうか、時間の経過も忘れるほど集中している。もう魔力は今にも追えなくなりそうな程しか感じ取ることができなくなった。



魔力を感じ取れなくなった。


ふー、疲れた。さて魔術を使ったのが朝の終わりくらいだから、今はっと?・・・分からん。太陽は動いているようだけどそれがどれくらいかって分からん。結局朝の終わりくらいだという事しか分からん。昼に太陽高度測るか、夜に北極星(あるかは知らん)を測ろうか。はぁ、時計欲しい。


仕方ないか時間関係はまだあきらめよう。考えてみたら物差しの類も見たことがない。定規や秤はあったから、無いわけではないだろうが。分度器は使わないことがあるかもしれんが物差しがないのは納得いかん。


魔術を使うと感覚が鋭くなり、さらに愚痴っぽくなっていかんな。はんせーはんせー。





 そんなこんなで今日も今日とて手伝いアンド魔術訓練の日々を送り、夏も下月に突入したある日、町は活気に包まれていた。今日はこの都市に王都からの交易団が来る日だ。この都市は塩が取れないためこの交易祭はこの都市の生命線だ。塩は海に面している王都や王都南側の都市サルハルスから来ている。こちらは主に農作物、金属が主な輸出品だ。



 この都市ネマールから王都まで徒歩で約1週(15日)間の距離にある。かつては王都―ネマール間には20近い都市や村があったが、ここ200年ほどでほぼ全滅している。ネマールは王都のちょうど東側にあるが、その間には山脈が走っており、南に迂回する形でこの国は発展してきた。


あるとき、山脈の南端にあった都市が魔物の襲撃によって外層区が滅ぼされた(この都市でいうところの第4層)。その時生き残った者は内側の層に避難し立て籠もり、周辺の都市からの応援でようやく追い払うことができた。ここからこの国の衰退が始まる。大体200年前のことだ。

漸く襲撃の爪痕が消えかけた数年後、2回目の襲撃があった。都市の備蓄は数年前の襲撃時、復興時に尽き、また備蓄し始めた矢先のことだったらしく、備蓄はすぐに尽きた。民は都市を捨て決死の覚悟で周辺都市に避難した。そんなことがこの200年に何回もあり今現在に続いている。もちろん、ただ手をこまねいていた訳ではなく、何回かは取り返すことができたが、そのあとが続かなかった。


この国は消耗し続け、都市を運営できる人数をも下回り始めた都市が出始めた。そこで国は対応を切り替え国中の民をいくつかの都市に集中させ、立て籠もる作戦に変更した。そして人口が十分に増え反撃の機会を待っている。それがこの国の今の状況だ。

この都市ネマールは200年前には2000人を下回る規模の都市にすぎなかったが、現在は30000人に迫ろうかというほど人口が増えた。いや、増えすぎた。もう開拓できる場所が少ない。そしてそれは他の3都市も同じだ。そのためそう遠くない未来この国は打って出るだろうという話だ。


さて、長々とこの国の歴史を浚ったが感想を一言。魔物強すぎじゃね。

往々にして歴史は捻じ曲げられるので一概に言えないが、この国が崖っぷちなのは間違いなさそうだ。この長大な作戦がもし失敗すればまた、100年くらいは閉じこもるんだろうな。討伐&開拓隊にはぜひ頑張ってもらいたいものだ。



 今日交易団が到着して、年に1度の商いのお祭りが始まる。早いところは早速明日から店を出すそうで俺も連れて行ってくれるみたいだ。今から楽しみだぜ。



 次の日、俺たちは朝食をとり早速交易祭に向かった。祭りの会場は東西南北に分かれており、団が到着する南側が1番大規模な市が開かれ、西側は特殊な物が多く、東、北側は日用品が中心だ。俺たちは南区に住んでるので南会場に向かっている。



 俺は3歳にして初めて第3層から外に出た。市の開かれる第4層の広場には所狭しと露店が開かれ、いろいろなものが売られていた。糸に織物、服に服飾品、工芸品に美術品、酒に医薬品の類まで置いている。俺たちのお目当ては塩と海産物だがな。

魚の干物食べたいな、醤油もほしい、後お米。俺の欲望が駄々もれだ。


「おいウィル、いいところ連れてってやるよ」

そうラックが言って、両親に許可を求め、両親もそれを承諾した。さて、なーにかな。まぁラックだからなしょせん。

「何処へ連れて行くつもり」

「今日はなんと、城壁に上ってもいい日なんだ。見える景色に驚くぞ」ムフフ

「城壁の上か」

確か何とかと何とかは高いところが好き、とか言うよな。まあ高いところは前世で見てきてるから驚きはしないな。チッチッチ


「いい景色だね」

城壁のすぐ外の畑に広がる青々とした葉っぱ、そして壁。そうなのだ。第4層には城壁が幾重にも重なっている。南に行くほど標高が低くなっていくから壁が網目状に広がっているのがよく分かる。段々畑を見ているようだ。

「ウィル、驚くのはあっちだ。あっちをよく見てみろスゲーのが見えるんだぜ」

なんだよラック?あっち?あっちも壁しかみ・・え・・・な・・・

「ファ!!!」

なんだあれ

デカい。ここから1番外の城壁まで10キロはあったはずだ。それなのに肉眼で見えるほどでかい。デカい亀だ。

あの遠くに見える城壁が俺たちが立っている城壁と同じ高さとしたらざっと、3、4倍の高さがある。遠すぎて仔細は見えないが動いているのは分かる。


「スゲーもん見れただろ」

「ああー、・・あれって何なの?」

「あれは『グレイグラトル』と呼ばれてる魔物さ。交易団のやつらが連れてきてるんだってよ」

「あれが魔物か。初めて見た。あんなのが敵なら人も追い込まれるわけだ」

「さすがにあのサイズがそこら中にいたら父さんたちはもういないさ」

珍しく父が話に加わってきた。父は話好きらしいが、家では寡黙なため主に母とラックと俺が喋っていることが多い。

「じゃあ、どんな魔物が多いの?」

ゴブ系かウルフ系か、はたまたゲルゾル系か、具体的な話は初めて聞くな。


「この辺じゃ、『ウォーキングウッド』か『ラードラット』が多いな。あとは『リグルスライム』なんてのもよく見かけるな」

ふむふむ、トレント系とネズミ系とスライム?系がこの辺りに多いのか。

「パパは倒したことあるの?」

「あるぞ、特にウォーキングウッドなんて伐採のときには必ず会うからな、この都市の大人なら大抵の奴が倒したことがあるはずだ」


「ウォーキングウッドってつまり木なんだよね、どうやって倒すの?」

「やつらの攻撃手段は踏み潰すか木の実を落とすかだ。木の実はやつらの種類によっても違うが、大体頭くらいの大きさがあって当たり場所によっては倒れたり骨を折ったりするが、基本的に近づかずロープを引っかけて横倒しにしてしまえば何もできなくなるからな、あとは普通の木と同じように切ればいい。まあ倒す時に巻き込まれるドジな者もいるがな」

ウォーキングウッドは強くはなさそうだ。


「ボクにも倒せる?」

「そう言うことは丸太用の斧を持ってから言いなさい」

「なら俺は大丈夫だな」

ラックはもう持てる。


「そうだな。もうラックなら小さ目なウォーキングウッドなら倒せるかもな。まあ成人してからの話だがな」

6歳くらい子どもでもやれるのか、本当に弱いみたいだ。

「厄介なやつはいないの?」

「そりゃもちろんいるさ、『スカルバタフライ全般』と『パトバリス』が厄介なやつらだ」

「スカルバタルフライとパトバリス?」

「ああ、スカルバタフライのやつらは鱗粉をとばして、獲物を毒で殺したり、麻痺させたりしてその体液を啜るやつらだ。よっぽど森の奥地に行かない限り会うことはないが、たまに都市の近くで幼虫がでたときは即座に退治に動く」

体液を啜る・・・恐ろしい。


「そしてパトバリスは厄介であり変なやつらだ。やつらはトゲだらけの体をしていて、同じ地点をぐるぐる回ってるだけだ」

「確かに変なやつっぽいけど、それは厄介なの」

「あいつらは数体から数十体規模の群れで移動してるんだが、たまに仲間同士でぶつかってはじけ飛んでくる時がある。運悪くそれにあたると体中穴だらけさ、酷いものさ」

体中穴だらけ・・・恐ろしい。


「厄介なだけじゃなく変なやつらもいるんだね。他にも変なのいるんでしょ?」

「そうだないるな、この都市の東側にも変わったのがいる。こいつ「パパ、そろそろ市に戻りましょう」・・そうだな。ウィルこの話はまた今度な」

母から催促が来てこの話は終わった。そうだな今日は市を見に来たんだ。


「さぁ、行きましょう。あんまり遅いといい塩が無くなってしまうわ」

塩は商店でも買えるのだが、粗悪品ではないが大量生産の平凡な塩なのだ。この市を逃せば高級品は一般市民まで回ってこないから、お祝いの席、贈り物用に買い求める人が結構いるのだ。


その後、塩、海産物、生地などを買いあさった。



 次の日、今日も市に向かっている。今日は父とラックは仕事へ行ってるので、俺と母の2人で出かけている。昨日は主に重いの物やかさばる物を買ったので、今日は小物を見に来ている。



 現在、母は裁縫道具を売っている店の店員と話してる。・・・長い。何か周りに面白い店はないかと、キョロキョロしてると対面の店から4件隣にこじんまりとした露店が目に留まった。その店の商品は最初、色とりどりの丸い石が置いてあって、宝石やアクセサリーの類だと思いスルーしていた。しかし、ずっと見てると店の方から何か嫌な感じがする。・・・なんだろう?


ずっと見ている内に、店員との話が終わったのか、

「どうしたのウィル?行くわよ」

そう言ってきた。

「あの店って何を売ってるの?」

指差した店を見て母は、


「あれは・・魔石屋さんね。魔石を加工して売ってるのよ」

あれが魔石か。嫌な感じがするし近寄らない方が良さそうだな。

「魔石って何に使うの?」

「そうねぇ、主に魔道具の動力として使われるわ。でもあのお店においているのは綺麗に加工してるからアクセサリー用ね」

あったんだ魔道具。でも、お高いんでしょー。

「魔道具って?」

「魔道具っていうのは、魔力を供給すると、いろんなことを起こす道具のことよ。うちにも1つあるじゃない」

「そんなの見たことないよ」

初耳だ。

「あるわよ。いつも使ってるはずなんだけどなー」

くっ気づかなかった。


「それって小さい?」

「小さくはないわ」

「じゃあ重い?」

「そこそこね」

「毎日使ってるんだよね?」

「そうね」

んー、なんだ?光源は木か蝋燭の火だし、自動扉やホットカーペットとかは見たことないし、時計や冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、トースターもない、・・・無限収納の類か?いやでもそこそこ重いんだろ、これは見たこともないし違うな。ホントになんだ?


ええっと母の行動は、朝食を食べたあと、お洗濯に行って洗濯物を干して、飲み水用を水を煮沸して、掃除をして、繕い物をしつつ俺に魔術を教えて、昼はティータイム、昼からは糸を紡いでいる。大体こんな感じだ。

この中で使ってるのがあるのか?・・・・分からんお手上げだ。

「分かんない」

「ふふ、帰ったら教えてあげるわ」


そのあといくつかの店で買い物をして家路についた。



 家について買ってきた物もそこそこに早速魔道具はどれか聞いてみると、驚いたことにそれは家で使ってた鍋であった。何処が魔道具なんだよこれ?


「どう、これが魔道具よ」

「魔道具ってことは魔力を供給すると何か起こるんだよね。鍋ってことは・・」

「ええ、熱くなるわ」

・・・俺が悪いのか、魔道具っていえばよく分からん魔術回路とかを使ってて、魔力通すと炎が出たりバリアを張ったりする道具だとばかり思ってたぞ。くそっ!俺のドキドキ返せこの世界っ!


いや、これは所謂ホットプレートだよな。鍋型魔力版の。そう考えるとこの世界スゲーな。だって生活レベル、完全に紀元数世紀レベルと思う。道具なんて荷車の類しか見てないし、この前の亀は別として牛、馬に類する荷車とかを牽引する動物もほとんどいない。なのにホットプレートなんか地球じゃ・・・・・いつだ?少なくとも俺の生まれた時にはあった。まぁファラデーさんとかマクスウェルさんの時代以降なのは間違いなさそうだが。とまぁ200年より前という事はないだろう。それが一般家庭にある。さすが異世界、一筋縄じゃいかない。あれ?でも・・

「いつも火をおこして使ってたと思うんだけど、いつ魔力補給してたの?」

「薪がしてくれるわ」

???薪とは何ぞや。ウッドゴーレムさんですか?それともトレントさん?ここじゃウォーキングウッドか。


「これに使う魔術は危ないからウィルにはまだ早いと思って教えてないの。でも今日は特別に見せてあげる」

母は機嫌が良さそうにかまどに薪を入れ、手をかざし、

「cma jsomrohike gwihoti tomoueydiioe covs le radol」

呪文を唱えた。それって着火の魔術って言ってなかったっけ?


「かまどの中を見ていてね」

俺は言われた通りかまどを食い入るように見つめた。薪に火がついて燃えて・・・・いない。なんだこれ?薪から火が出てるのに炭化もせず、火だけ出ている。もう1度言おう、なんだこれ?


「なんで木が燃えてないの?」

「それがこの魔術のすごいところよ。これは火に見えるけど火じゃなくて光の魔術で立ち上ってる魔素を見せているだけなの。だから実際には魔素が上ってるのよ。そしてこのお鍋は上ってきた魔素を吸収して熱を出す特殊な金属でできてるの。欲しかったんだけどとっても高くて手が出なかったの。でもパパが買ってくれたのよ」


つまりあの魔術は魔素を物体から追い出すか引き剥がしてるってことか、こういう魔術もあるんだな。いろいろな使い道がありそうだ。ちなみにそのパパって、父のことだよね母よ。


「魔術ってやっぱりすごいんだね」

「そうよ。この魔術とお鍋のおかげで1回目は魔術で燃やして、2回目は普通に燃やしてと1本の木から2回も煮炊きができるのよ。薪代も節約できるんだから」

おお!なるほど、だから魔術でつけていた時と火打石の時があったんだ。目を剥くとはこういうことをいうんだな。・・・・・でもうちってほとんど外食だよねと聞くと飲み水は沸かしてるわと言って拗ねた。




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