3-16 再会1
小型管理機のお披露目から日が経ち、秋の下月1週目も中頃に差し掛かった。
小型管理機はお披露目から数日間は物見遊山客が現れたが、週の終わりにはすっかり下火になった。
中にはじっくり観察していった者もいたから多分来年の春には似たような物がお目見えするかもしれない。まあ魔闘技や魔力量の制限があるために敷居は決して低くはないので実際お目見えするかは未知数だが。
そして本日は来客が来る予定となっている。
「こんにちはー。誰かいますかー」
昼前頃待ち人来たり。
返事をして扉を開けると、そこには、
「いらっしゃい、2人とも久しぶりだね」
「ウィルもな」
「こんにちは」
今日の客はニックとトリアだ。
2人との手紙のやり取りは続いていて今日遊びに来ることになったのだ。
会うの自体はニックが約2年半ぶりでトリアが約1年ぶりだ。
昨年秋にお隣さんAの手伝いが無かったのでちょろっと祖父母宅へ遊びに向かったのだが、少し遠回りして前アパートメントに寄り道したのだ。行きには2人とも会えなかったが、帰りにはトリアに会う事が出来た。
その時には他にも数人と話し込んじゃって家に着いたのが日没ギリギリだったのが思い出だ。
2人を家に招き入れると、
「兄ちゃん、その人たちがニックとトリア?」
「そうだよ。
2人ともわるいね。どうやら2人のことあんまり覚えてないみたいなんだ」
リュートとフェリの2人は俺とよく一緒に人が2人いたのは覚えてるみたいなのだが、それがニックとトリアであると認識はできていなかったみたいで、2人が遊びに来ることを伝えると、それって誰?って返って来た。
2歳頃の記憶とはそんなものだろうか?
そしてうちの母と挨拶を交わして庭にやって来た。
庭には敷物を敷いて傘を立てた環境を整備しといた。
そしてティータイムがてら旧交を温めた。
「それでそっち生活はどうだい?移ってから間もないだろ、上手くいってるのか」
「うーん、大分勝手が変わったからまだ何とも。でも結構閉まってるところが多いから不便になった気もする」
「でも近くに大きな店があるからそんなに不便ではないと思う」
2人の家庭は今年の春にあのアパートメントから出て、今は同じ第3層南区だが西区との境界付近に住んでいる。
「そうなんだ。大きな店ってあれだっけ、ハーメイト何とかって商会が出した店だっけ」
「ハーメルトイン商会」
「そうそうそんな名前だったね。あの店が開店した当時はここまでいろいろ噂が流れてきたよ。ずいぶん大きな店らしいね」
第3層の店のオープンの話何かがこの第4層まで来るほど、話題性がある店みたいなのだ。
第3層は基本的に井戸を中心にその周りを数棟から十数棟の建物が囲むブロック単位の区画構造しているのだがその店は元からあった建物の内壁外壁をぶち抜いたりつなげたりしてひと区画丸ごと店舗としている店らしい。
「ああものすごく大きいんだ。外からの見てくれはつぎはぎだらけで最初入りにくかったけど、慣れてしまえばどの建物に何があるかが分かりやすいのが良いんだ」
「なるほどね。でもまだ行ったことないんだよな、第3層に用はないし」
「用事が無くてもいく価値あるって」
しばらくそんな話題で盛り上がり、
「じゃあそろそろ1回お開きにして、やっちゃおうか」
「まずは何をするの?」
「まずは魔術関連にしようか」
2人が今日来たのはただ遊ぶためだけじゃなく、作業の手伝いや数年間の研鑽を見るためでもある。
さて、どれほど成長したかな?
「じゃあこれを何回持ち上げられるかで魔力量をはかるよ」
倉庫から持ってきたのは臼だ。
臼と言っても実際に使っている臼ではなくて前の住人が置いていった物で、下の石が割れていて錘として使っている物だ。
これは持てない重さではないが転がせるためそれなりに重用している。
「それ軽すぎ」
ニックが臼を見てそう言ってきた。
「おっと、言うねぇ」
ずいぶん魔力量に自信があるみたいだ。
でも落とした時にたとえ壊れても大丈夫な物なのがベターなのでこれを選択したんだが、
「うーん、他に何か丁度良さげな物ないかな」
今度は2人の意見も聞くため3人で倉庫に入った。
「ウィルこれは何?」
「それは農具だよ。小型管理機って言うんだ」
「小型管理機。・・・聞いたことない」
「うん。農家ってこういう道具も使うんだな」
「・・まあね」
・・・このままにしておこう。
「うーん、候補としてはこれらかな」
しばらく倉庫で探した結果、使えそうなのが小型管理機かリヤカーしかなかった。
物体浮遊の魔術に使えそうな良さげな錘が無かったため、物体前進の魔術に使用する魔術を切り替えた結果だ。どちらかにいくつか錘を積載して走行距離を測るのだ。
2人とも魔闘技ができてよかったよ。
「さて、・・・・・小型管理機にするか」
どちらにするかちょっと考えたが、考えてみれば小型管理機一択だった。そもそも物体前進の魔術前提で作った物だ、リヤカーに比べ今回の用途に合っている。
小型管理機一式を持って倉庫から出し手早く組み立てた。
仕様上バランスをとるため耕作部が必要であったが、耕したりする必要が無いため採用しなかった耕作部品を軽く曲げて操作専用に仕立て直したりした。
組み立て終わったそれに負荷用として臼一式を乗せて完成だ。
「じゃあ使い方を教えるよ」
2人に使用方法と実演をして測定を開始した。
「ふむ、なるほどね」
ニック、トリアの順に魔力量を測定した。
「次はウィルだぞ」
「そうだね。でも・・・」
そう言って空を仰ぐと、2人の記録の程度から俺の魔力量測定が終わる頃にはあとの時間を有意義に使える程時間が残りそうにないと思う微妙な時間だと思われるため、
「微妙な時間だな、先に勉強にしようか。皆が問題を解いてる間にはかることにするよ」
小休憩を挟み授業を開いた。今度はリュートとフェリの2人も参加だ。
「この感じも久々だな」
「そうね」
「じゃあ皆始めるね」
今日開いた授業は学力テストだ。大量にある問題を記入している木板から適当に数十問選択した。
結局のところニックもトリアも奉公先では俺の授業で主に扱う数系は四則演算以上は求められないみたいで、だからこれは確認テストみたいなものだ。というか特殊な職種以外、自然数の四則演算が可能なら特に問題はないみたいだ。
当時の俺の授業は自然数以外に整数、分数、少数の四則演算を教えていたので少々行き過ぎてた感があるが、まあ誤差の範囲だろう。
でも2人に関しては完全に逸脱しているのは認めざる得ないがな。
「じゃあ2人ともあとは任せたよ」
リュートとフェリの2人にはまだ改変ひらがなは教えていないため、木板の問題文をニックとトリアの2人に交互に読ませることにして解かせることにした。
俺はその間に測定だ。
4人が勉強しているのを横目にしばらく魔力量を測定していると、
「何してんだウィル」
ヨークがやって来た。
「やあヨーク。ボクはこいつを使って魔力量をはかってるんだ。
それと紹介するよ、あっちでリュートとフェリと一緒にいるのが前話したニックとトリアだ」
魔力測定の道すがら互いに紹介し合い、あとは若い者同士でと放置した。
測定中止まると誤差が大きくなるのだ、止まるわけにはいかん。
「全然終わらん」
さらにしばらく測定を続けてそう呟いた。
どうやら見積もりが甘かった?みたいだ。
一応魔力は減ってるが微々たる消費で、消費量と回復量が釣り合う寸前って感じだ。
そしてずいぶん前に勉強が終わりあとは採点するだけなのだが採点者がこの体たらく?なのでテキトーに時間を潰してもらっている。
次回からはもっと負荷を増やさないといけないなっと思いながらも、
「はぁ、いつになったら終わることやら」
そう呟くしかなかった・・・




