2-16 冬の日々4
本日から投稿を再開します。
それとこれからは隔日投稿を予定しています。
「ニックどう?」
「やっぱり2日は無理みたい」
今、ニックの冷蔵庫の性能実験の報告を受けている。最初の実験からいくつか改良を施したが冷蔵庫を今置いている環境では丸1日とちょっとしか持たない。
「うーん」
やはりものが元々小さいのが原因か?
理論的に考えると相似比が2倍になると溶けるまでの時間が最大4倍になるはずだ。他の言い方をすると質量、つまり体積が2倍で約1.5倍に延びるってことだ。
実際にはそこまでの倍率がでないだろうがスケールは間違ってないだろう。
でもそれじゃ身も蓋もないんだよな。
中々冷蔵とは難儀なものだな。
「どうしたのウィル?」
「ちょっと考えごとをしてた。こほん、それじゃあこの報告を以ってニックの課題は終了とします」
「はぁ、色々改良したと思うんだけどあんまり延びなかったか」
「確かになかなか難しいものだね。でもあの箱は雪を入れなくても家具として使えるし、良い木工の練習になったと思う事だね」
「そういうもの?でも俺も魔闘技を使える様になったのが一番の成果かな」
ニックは魔闘技を少し使えるようになった。訓練の成果が出ているようだ。
「・・・できた・・・・」
ニックの課題終了宣言とそのあと世間話をしているとトリアがハンカチーフを見せに来た。前に完成品を見せに来たときにはちょっと及第点をあげるか迷ったので少々手直しをさせていた。
刺繍のモチーフは糸巻き棒と椅子で、最初そのモチーフを聞いたとき、独特な感性だな、とか、現社会に対する風刺かはたまた生活の一部を切り取っただけかと思ったが、本人が良いならそれでいいやと続行させた。
今まで見てきた刺繍は幾何学模様や花、植物のモチーフが多い。もちろん変わり種はあるが。
「では拝見」
・・・うん。直ってるな。前は糸巻き棒と椅子が重なってるところがおかしかったからな。モチーフ部分はこれで大丈夫だな。全体のバランスはあまりよくないが、折ったときにバランスが良くなるなかなか渋いチョイスだ。
「うん、上出来だね。これでトリアの方の課題も終了とします」
2人の課題も終わった。
「2人ともおつかれさま。次回からは何をするか決めてないけど何か要望はあるかな?」
2人のスケジュールは、1日目が魔術訓練、魔力回復待ち時間に宿題の答え合わせ、2日目が座学と宿題を出す、3日目木工か裁縫、その繰り返しとなっている。
俺はこのスケジュールに臨時学校を3日に1度加えられる。時間は大概3日目の午前中だ。
「うーん」
「・・・・・・・」
「まあ今すぐ思いつかなくてもいいよ。明日でも構わないから要望があったら言ってね。では解散」
ここは2人の家だから解散するのは俺の方だが。
俺は家に帰り、久々に珍しい時間に帰って来たこともあり、昼寝をしたり、幼児2人と戯れてその日を過ごした。
冬の月ももう終わりに近づいてきた今日この頃、今日は臨時学校の日で俺は黙々と壁に向かって問題を記入していた。
「うおっ!何だこりゃ」
最初の生徒が登校?したようだ。振り向いて確認すると、
「なんだライルか」
そこにいたのはライルだった。
この臨時学校は年齢不問の自由参加形式だが1番上の子でも俺より1つ上がせいぜいでそれより上の者はめったに参加しない。1階で行っているためたまに親数人が教室の近くで勉強風景を眺めている非公認ミニ授業参観が開かれることがあるが。
「今日は試験だって聞いてないの?」
そう、今日は今までの勉強範囲のテストの日だ。2回前の授業から今日のテストの告知をして、丁度参加していない者にも子ども情報網で広めてもらった。まさかライルがそれを知らない爪弾き者だったとは。
「それは聞いてる。でもまさかこんなことになってるとは思ってなくてな」
ちぇっ、残念。
「なかなかの光景だろ。朝からずっとやってるからね」
今日は速攻で家の手伝いを終わらして黙々と問題を書いていた。ここに元々掲げられている大きな板1枚では足らず、家に掲げているやつも2枚持ってきてびっしり問題を記述している。
ライルと会話をしているうちに最後の問題も書き終え、確認作業をしつつさらに待っていると続々と生徒が登校してきてこの光景に驚いたりとさまざまな表情を見せてきた。
「では、本日の授業を始めます。本日は前から言っていたように今までの試験をします。皆さん頑張ってくださいね」
今日はいつもより多くの者が参加していて、常設している机と椅子では足らず、近くの机や椅子を借りてきた。特に上の連中の参加上昇率が高く、普段まったく授業に参加してない者もいたが腕試しのつもりなのだろう。ライルの他その同年代までいるし、来た時から気づいていたがラックもいた。最近天候が安定しているため毎日のように奉公に行ってるのに珍しく家に居たわけだ。
それに今日はニックとトリアも参加させている。
「それと本日の問題の答えはこちらが用意したこの板に記入して、皆さんが持ってきた板は計算用にしてください。解答が終わった者から解答用の板を提出して退出してください。もちろん試験中は私語厳禁で他の人の解答を見てはいけませんよ」
解答用の板を皆に配った。この解答用の板にはシリアルナンバーを彫っていて提出時に番号と名前を控える予定だ。
その後解答板の記入の仕方の例を示し、
「分からないことがあったら今質問してください。試験中は原則質問禁止です」
その後いくつかの質問を受け答えをし、
「では始めてください」
試験開始だ。終了時間は普段の授業終了時間ぐらいという俺の目分量だがだいたいこんなもんで十分だ。
「こほん。それでは解答を止めて提出してください」
提出された解答用の板と名前を控えて今日の授業は終わりだ。採点作業は少し大変だがしかたがない。
人数分の板を受け取り、
「では本日はこれで終わります」
「平均80点とちょっとか」
授業後すぐに採点を始めてもう少しで夕食の時間というところでようやく終わり、平均点を算出した。
初めての試験だったので難易度設定と点数配分に苦労したがまあこんなもんだろ。
更に統計をいろいろとっていくと中々面白い結果が出てきた。
あまり授業に参加しない上のやつらの点数が低い傾向にあることだ。つまり授業の難易度がちょっとやりすぎたってことかもしれん。あれでか。
「ウィル、俺の出来はどうだった?」
部屋で子守りをしていたラックがさっきの呟きが聞こえたみたいで問うてきた。もちろん衛生状態確認済みだ。
俺は正直者だから、
「ラックの出来は弄りがいのない面白くもなんともない平々凡々な点数だよ」
ラックの点数は平均点と同じ80点。つまり授業に良く参加している者より低く、授業にほとんど参加しない者より高い点数だ。
ちぇ。
「その言い方に悪意を感じるが」
「ボクは正直に言っただけだよ。それに採点が終わったことまだ漏らさないでね。みんなが聞きに来ちゃうから」
まだ採点してないとか採点中だからーで3日後まで躱すつもりでいる。
「まあいいけど、それで平凡てことは良いのか悪いのか?」
「だから平凡だよ。つまり良くも悪くもないって言ってるんだけど」
「それは分かってる。俺が良くつるんでるやつ等と比べてどうだ?」
「それなら、うーん・・・いい方かな」
その言葉を聞いてラックは何やらにやにやしだした。
「いったいどうしたん?」
いやーいきなりそんな顔するなよ。思わず口調が崩れちまったよ。
なんでもないと言っていたが絶対ウソなのでラックにお話、それはもう詳しくお は な し して話を聞くに、どうやら賭けが行われているらしい。
ラックが賭けているのはプライド賭けるタイプで、
所謂、
『俺の方が頭いいもんねー
そんなわけないだろ俺の方が良いさ
いやいや俺の方が
はぁ!じゃあ勝負だ』
だ。
ついでだが物品も賭けているようで、上の方から取り分が多いらしい。
だからにやついてたってわけだ。
そして、さらににいろいろ話してくれた。
賭け事をしているのはラックたちだけではなくアパートメント中で行われているらしい。
曰く、『俺の子の方が上だ。いいや俺の子の方が上だ』の親バカ対決から、
『最高最低点は誰?また点数は?』とかのシステマティックなやつまでだ。
まったく。
全てを洗いざらい話してくれたラックには、
「ありがとうラック、君の決断は忘れない。英断だったよ」
とりあえずラックに何かするのは後回しにして、対策を考えなくては。
学問を弄ぶギャンブラーどもには安くはない授業料を払わせなければ。
俺はその日から3日間一切テストに関する情報を漏らさず、ニックとトリアの2人にすらも言い訳と黙秘を貫いている徹底ぶりだ。もちろんたまにラックを見て視線でクギを刺し続けている。
3日後、
「皆さんおはようございます」
「「「おはよーございます」」」
まったく元気だな。今日は周りの大人連中も多いが気にしない。
「では本日は最後の授業ですが、前回の試験の評価を返して終わりにしたいと思います」
「では今からこれを各人に贈りますから質問は後にしてください」
そう言うと俺は対応表を見ながら1人1人にある物を配り終えた。
「こほん。皆さんのお手元にこれは届きましたか?」
「せんせーこれは何ですか?」
「はい、今から発表させていただきます」
「まずは咲いている花の刻印が入った証を持っている者」
一通り皆を眺めた後、
「君たちにはこの言葉を贈ろう。よくできました、君たちは秀でた生徒だったよ」
「次に、花のつぼみの証を持っている者、君たちにはこの言葉を贈ろう。
基本は良くできている、あとは世間でそれを磨いてくれ、君たちは優れた生徒だったよ」
俺の策それは、テストの点数ではなく5段階評価で伝える方法だ。
色々考えたけどこれ以上いい案が俺には浮かばなかった。これで完全ではないがある程度効果があるだろう。
その後も評価の言葉を贈り、最後に、
「これで全員分は終わったはずだ。最後にこの種の証を受け取る人がいなくてボクはうれしいよ。これは見込なしの人用に作ったんだけど無駄になっちゃったね」
皆が4段階に入っていてよかったよ。授業を開いたかいがあったってことだ。
「ではあとの時間は質問を受け付けます。何か聞きたいことがある人は言ってください」
「最高点とったの誰?」
「試験の点数知りたいー」
「教えて貰いたい問題があるんだけど」
「「……
「はいはい、一旦質問やめて、順番に答えていくから」
「えーと、まず自分の点数を知りたい人はあとでボクのうちに来てください。個別に対応します。次に試験全体の点数関係ですがこちらは点数、個人名ともに対応しかねます。それと教えて貰いたい問題についてですが、こちらも対応をしかねます。」
「何で対応しかるんだよ」
賭け参加組と思われる上のやつが質問してきた。
「どちらですか?」
「点数と名前」
「自分の点数ならまだしも、他人の点数なんて知ってどうするんですか?何か問題でもあるんですか?」
「問題があるから言ってるんだが」
「そうですか。ボクの方は特に問題ないと思ったんですが、どういった問題があるか言ってもらえますか?正当な理由だったら対応しますが」
「なんで隠してるんだよ」
「いえ、質問されるまで質問されることすら思っていなかったので隠してると言うより質問の意図が分からないんですが?如何なる理由で知りたいんですか」
「・・・いや、わるかった。なんでもない」
ふー、乗り切ったぜ。賭けなんて言葉出したら外聞悪いからな。
「分かりました。では、他に質問はありますか?」
「問題にも対応しかねるのは?」
「そうですね。最後の2問以外は過去に出した問題ですから誰かが知ってると思いますのでその方に教えて貰ってください。そして最後の2問については問題の意図が違います。この2問は皆さんが習った範囲でもこれだけ難しい問題があるんだってことを知ってほしかったから出しました。また、授業は今日で終わりですが、ここで勉強を止めず自主的に勉強に励んでもらいたという思いも出題した理由です」
「では他に質問はありますか?」
その後もいくつか問答が続いてそして、最後の授業を終えた。




