1-02 幼児プレイ1 俺この地を知る1
しばらく毎日投稿する予定です。
あれから季節はうつろい、俺は1歳になった。
ハイハイできるようになっても部屋からは出してもらえなかった。動けるようになった俺にはこの部屋は狭すぎる、あっちへハイハイこっちへハイハイ、3日もすれば探索にも飽きた。
歩けるほどには足も発育してないのでもう少しの辛抱が必要そうだ、でもつかまり立ちはできるかもしれん。
舌足らずだがしゃべることもできるようにもなった。
さらに1年が経ち、2歳になった。
そしてこの世界のことをいくらか知ることができた。どうやら俺は異世界に来てしまったようだ。
なぜなら魔術があった。
周りを見て最初は文明度が低いと感じた。この時点で過去の地球に来たか別の惑星か異世界に来たのかの3択だったが、母が魔術を使うのを見てしまった。着火の魔術と言っていたが地球ではそんなもの見たことがなかった。・・別の惑星っていう可能性もあるがもう異世界という事にした。地球じゃなきゃ、全部異世界だ。
それはともかく、
「ママー、おはよう」
とあいさつをすると、
「おはようウィルちゃん、さぁ行きましょう」
と母とラックと共に向かったのは、食堂である。どうやらこの地域では大衆食堂?の様な場所でご飯を食べるようだ。家のかまども小さかったしね。
この付近の建物は3、4階の建物ばかりで、1階は食堂か貸店舗となっているようだ。うちが入っている建物の1階は食堂兼雑貨店だ。
「おはようございます、アーレイさん」
母が、食堂のおばちゃんのアーレイさんに挨拶している。
「おはようございます、エアリスさん、それにラック、ウィル」
「「おはようございます」」
「すぐ持ってくるからちょっと待っててね」
と言いって奥の部屋に入っていき、すぐに配膳台を二つ持ってきた。
「今日はこれだね」
と配膳台を渡してきた。
うーん香ばしい、今日のごはんは何かな?
「あそこがあいてるわね、2人とも行くわよ」
席について台に乗ってるものを見ると1つにはパンが、もう一方には目玉焼きとベーコンらしきものが見える、見えるというのはそれらの上には大量のハーブ類(種類不明)が乗っているからだ。
この町の一般的な料理はとりあえずハーブというか生草がついてくる。だから全てほぼ同じ味がするといっても過言ではない。まぁ一昔前の日本でもとりあえず昆布やら鰹節やら煮干しやらでとったダシの全部ダシ味だから一緒か。と、こういう食文化だと理解している。
食に特にこだわりはなかったが前世はいい時代に生まれたなっとしみじみ思った。
とりあえず朝食も終わり家にとんぼ返り、母は家事を兄はその手伝いをする、俺は1人遊びに興じる。
これが俺の近頃のライフサイクルだ。
また時が経ち秋も中頃、朝食をとりに1階に降りると辺りはにわかに喧騒に包まれていた。聞き耳を立てていると、伐採、市、成功などと聞こえてくる会話が多い。
いったい何の話だろう?
今日も今日とてアーレイさんに挨拶して、母との会話を聞いていると、
「もしかして今回は成功したんですか?」
母が聞いている。だからあれってなんだよ
「ああ、さっき第1報が入ってね、今回は大成功だとさ」
「まぁ、じゃあ今年は市が立つのかしら?」
「そういう事さ、うちらも準備しなきゃいけないよ」
と言いつつも食事を持ってきてくれる。
食事が始まると、さっきのことを母に質問してみる。
「さっきの成功ってなんのこと?」
「あら、ウィルは初めてだったかしら?成功って言ったのは木の伐採のことよ。春と秋の終わり頃に行われるのよ」
「はぁ」
木は樵が年中切ってるんじゃないのか?と気のない返事をする。
会話を横で聞いていたラックが、
「はー・・ウィルもまだまだだな。この町にいてこの話題に興味がないなんて、おっくれってるー」
ラックがなんかほざいた。
「そんなこと言うのはこの口?この口がわるいの?」
母がラックの頬を引っ張った。いい気味だ。
「ラックもお兄ちゃんなんだからいろいろ教えてあげてね」
そーだーそーだー。
朝食を終えて部屋に戻ってきて、早速ラックに聞いてみた。
「分かったよー。ウィルようく聞けよ、この伐採は年に2回しかない町の外へ行ける貴重な機会なんだ」
「ラックーー」
母からなんか訂正が入った。
「・・・町の外には魔物ってのがメッチャいるらしい。だから集団で行って魔物を討伐しつつ木を切るんだ。この成果次第で次の年使える薪の数が決まるから、かなり危ないらしいが参加する人は多いんだ」
魔物きたー!、異世界定番のやつだな。
「普段から討伐してないの?それと魔物討伐を専門としている人とかいないの?」
魔物がいるなら名称は違うかもしれないが冒険者がいるのも定番だ。
「どうなんだろ、母ちゃんわかる?」
ラックは知らないらしい。さて母さんはどうかな?
「普段から討伐している人たちもいるわよ。ちくかいの人たちね。」
??、ちくかい?なにそれ。
「ママ、ちくかいって何?」
「えーと確か畜さ・ん・・・・そう、畜産振興委員会って組織よ。私たちが普段食べてる卵やお肉はここが取り仕切ってるのよ」
・・なんか思ってたのと違う。
畜産?狩猟とかじゃないの?
「その人たちが魔物を討伐してるんだ」
「まあそれだけじゃなくて動物や魔物を家畜にする研究もここで行われているわ。私の祖父母、2人にとっては曾祖父母ね。その世代までは卵やお肉はめったに食べられない高級品だったそうよ」
うーん、地球じゃ畜産って西暦が始まるころにはとっくに始まってたよな、ここは紀元前レベルの文明度なのか?
「じゃあ動物と魔物の違いってなんなの?」
「うーん、魔物は体内に魔石を持っていて動物は持っていないってママは教わったけど、そんな単純な話じゃないってパパは言ってたわ。パパがいろいろ詳しいから難しい話は全部パパに聞いてね」
父か。父は今単身赴任で北の方にいるらしい。冬が始まるころに帰ってくるらしいけど、それまでお預けか・・・
「そういえばパパだけど、今年は丸太市が立つだろうから市の間に1度帰ってくるわ。ラックにはお手伝いを頼もうと思ってるからね、そのつもりでいてね」
母はそう言い残し家事を始めた。
「やったぜー、ようやく丸太市に行けるぜ」
ラックはなんだか喜んでるよ、そんなに手伝いたかったのか?
「どうして嬉しそうなの?」
「丸太市ってのはめったにないお祭りだぞ、俺がお前と同じくらいのときにもあったって聞いた、その場所にはどっちゃり丸太が置かれていてな、そりゃすげー光景だってさ。見てない俺はおっくれってるーってライルにバカにされたんだぞ、許すまじライル」
なるほど、そういうわけか。ちなみにライルってのはラックと同い年の少年でよく一緒に遊んでる仲だ。
「ボクはお留守番かぁ」
「そうだな、俺が頼んでも連れってってくれなかったからな、お前にも無理だろうな」(にやにや)
なんかラックがほざいた。
「(ラックのくせになま○きだー)」
くっ、ここで表情にでたらラックになめられる。自制心よ仕事しろ!表情筋よ仕事するな!
ふうーーーぅ、表情筋は死亡した、・・俺の勝ちだ。ざまぁ!
ラックは面白くなさそうな顔で、
「まだちっちゃいお前にはこのことが分かんないだろうな」
と捨て台詞を吐いて去って行った。