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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第1章 幼少期編
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1-09 幼児プレイ8 3歳春市

連続投稿継続中

 今日は家族で市へお出かけだ。ちょうどみんなが休みの日が重なったため、久しぶりの4人だ。冬の終わりかけに帰ってきた父は俺の木材工芸品を見てよくできていると褒めてくれた。春の市は冬の間ほとんど買い物できなかった反動か、どの人も財布のヒモが緩いときだ。商店が多く並ぶ通りでは俺たちの様に冬の間に作った物を売る露店も開かれ、ここぞとばかり客引きをしていた。今日は特にお目当ての物があるわけではないが、この活気、夏の交易祭とはまた違った雰囲気でいい。


 いくつかの店をはしごして、俺のたっての希望で木工道具を売ってる店に来ている。

あるある。金ヅチにクギ、ノコギリ、カンナ、キリ。ふむふむ、今のトレンドはこの形か、あーそういやこんな形のもあったな、それに物差しを初めて発見した。これらを一通り眺めて脳内RAMに保存する。これであまりに時代錯誤的な物を作らなくてすむだろう。


 両親とラックは近くでナタを見ている。木の伐採のためには森に入る必要があり、いろいろ便利な道具のためほとんどの家庭に常備されている刃物である。うちにも1本ある。今回ちょうど道具屋に来たため、ラック用に1本仕入れるかって話になっている。

うらやましくなんてちっともないんだからな。


 俺は今、クギを見ている。クギは消耗品のため他の物に比べてはるかに安い。あっちのクギはグレードが上なのかお高めだが、俺の見ているこのクギは凡品なのかかなり安い。俺お手製のナイフはもはや鉄すら削れると自負してる。だが試そうにも貰ったナイフは削りたくはないし、鍋なんてやったら・・ブルブル。だがこのクギなら何本かは買ってもらえるかもしれん。鉄で補強した工具も作れるかもしれんしな。


 ナタを物色している両親に、

「このクギ買ってー」

俺が指差している棚を見て、

「クギなんてをどうするんだ?」

「なんか作るー」


「そうねぇ、冬にいっぱいがんばってもらったからクギくらいなら」

「やったー」

クギ、ゲットだぜ。


そしてその店ではナタとクギを買い、そのあとも他の店で買い物をして今日は家に帰った。



 次の日。今日の午前中は出店の店番だ。昨日の売り上げを聞いてみたがボタンはあまり売れてないようだ。どうやら服に穴をあけることに戸惑いを覚えているようだ。


 今店番をしているのは、うちの家とラックと同い年のライルがいる家だ。ライルは俺の数少ない知り合いだ。ボッチだからな。

「久しぶりだなウィル。お前ホント家から出てこないからこの冬もほとんど見かけなかったぜ。ラックに聞いたが、ここに置いてある物お前が作ったんだってな」

おっと、ひきこもり宣言もいただいちゃった。

「確かに久しぶり。寒いから家から出たくないんだ」

「確かに廊下は寒いが、1階は温いの知ってるだろ、降りてこいよ。お前が来なかったから俺が年少の世話を押し付けられたんだぞ」

降りて行かなくてよかった。冬には1階が住民に開放されていてそこに集まる人も多い。一昨年はちょくちょく降りていたが、子守りを押し付けられることも多かった。まったく2歳児に何をさせてるんだか。


「それはそれは、子ども好きなライルにはさぞ天国だったんだろうなー」

「けっ、よく言うぜ、お前だって子どもだろうが」


「そう言うライルだって、うちのラックと同じ6歳だろ。まだ子どもじゃないか」


「ははーん、俺は7歳になったよ。一緒にすんな」

ラックは秋生まれだから半年違うのか。


「へー、そうだったんだ。そういえばライルの家は何を出してるの?」

「ん。うちは・・ほれあそこにあるサンダルだ。」


「ああ、あれがそうだったんだ。涼しそうで夏にぴったりだと思ってたんだ」

「そうだろ。毎年外用のを作ってたんだが、今年は部屋用にしたんで、いろいろ考えたんだよ」

「なるほどね。売れるといいね」


「ありがとよ。お前んとこもがんばれよ」

と言って、担当の方に戻っていった。ライルはけっこう気のいい奴だ。さてと、俺も店番続けますかな。


 それから俺は店番改めボタン説明係を拝命した。だってお金関係はうちの母かライルの母しかしちゃいけないから俺たち子ども組は基本客寄せか品出しか手癖の悪い奴がいないか見ているだけだからな。

「ちょっとボクここの人?」

「うん」

「じゃあこの穴の開いた物たちって何か知ってる?見たことないんだけど」

「ボタンだよ」

「ボタン?ボタンはこっちにあるじゃないか。違う違うこっちのだよ」

「それもボタンだよ。こういう風に使うんだ」

俺は母が作ったワイシャツもどきをコート掛けから外し広げて見せた。今日は実物を置いての販売だ。

 母が作ったワイシャツもどきは俺がこうしたらいいんじゃないっていろいろ口出しした結果、真っ二つのTシャツに穴の開いシャツから襟なしのワイシャツに見えなくも・・・見えないな。元から服全体がちょっとダボっとしてるからな、これが限界だった。それを広げて見せると、

「こんな風に付けるのかい。・・・・なんだか面白そうだね、それに値段も安いし、よしそれを貰おうか」

と、こんな感じで買っていってくれる人もいるのが救いだ。

 そんなこんなで昼までに200個くらい捌けた。まあ5個とか10個とかの纏め売りだから買っていった人はそんなにいない。でもこの調子なら春の市が終わる頃にはほとんど売り尽くせるだろう。


 午後からは特に用事がなかったから、件のfp(仮)に取り掛かった。冬の間にfp(仮)のミニチュアは完成している。強度は度外視で作ったから実物大にしたらいろいろ比率が変わるだろうが、基本構成はきっちり考えたから何とかなるだろう。あとは実物大を製作するだけだ。



 木がない。木材がない。丸太がない。製作できない。冬が終わったばかりで春の伐採が終わるまで使える木がない。材木店に買いに行きたいが、お金も持ってない。さて、俺は何回ないっていったかな?

そう、いろいろないのだ。もう後は作るだけだと揚々と貯木室を覗くと俺が使っていい木がもうなかったのだ・・・・・・ハァ、やる気せん、もう寝よ。



 次の日、今日からしばらく木工は休みにして(強制)、魔術の練習に集中することにした。朝、母に魔術教えてって言ったけど春の市がある期間はけっこう忙しいらしく、またお預けを食らった。なので俺は1人で練習だ。(いつもどおり)

 今日の題材はずばりクギだ。買ってもらったクギは全部で11本ある、大切に使わなければ。

 早速ヤるか、俺の最高傑作のナイフで削ってやる。クギを持って、ナイフを構え、魔術を発動。そしててやっ!





「ふふ。ふふふ。ふはははははは。やはり俺の見立ては正しかった」


今俺の目の前にあるクギは、側面は削れていた。毟れたに近いが削れたことに違いない。そしてこの大金星を挙げてくれたナイフは何も問題なし。やはり鉄如きが俺のナイフ様に勝てるわけがない。俺の仮説は証明された。







「・・・俺は何をやってるんだ」

時刻は昼、さっきまで俺は無心にクギを削っていた。何かを作る予定もなかったのに。その結果がこれだ。

俺が作業をしていた場所には切り子が飛び散り、あげく調子に乗って魔術の補助なしで木のナイフをクギに押し当て刃が割るという失態を犯してしまった。


鬱だ、○のう。


パタリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くぅくぅ。




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