笑ってる
村と村の間の大きな木
人だかりが見上げる太い枝
一本の縄が垂れ下がる
夕暮れ時、後ろに見えるは烏森
誰も何も喋らない、動かない
足の先に伝いくる糞尿と、地面に落ちた赤い靴
焚き火の匂いと夕餉の気配
真っ赤な陽の黒い影
揺れている、揺れている
女の子の首吊りが揺れている
笑ってる、笑ってる
目玉のない人だかり
みんな同じ首の痣
笑ってる、笑ってる、こっちに来いと笑ってる
枯れた皺が手を伸ばす
皺の分だけ縄がしなる
皆が次に次にと子の名前を呼ぶ
そう焦るなと笑ってやる
村と村の間の大きな木
髭面が垂れ下がる
こっちに来いと赤い靴が笑ってる