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剣は真剣になると一直線だ。真っ直ぐだ。まさに『真剣』という字そのもの。曲がりもしなければ折れもしない。それも、剣を全国レベルの剣士へと成長させた理由の一つではあるだろう。卵が先か鶏が先かの話のように、剣道が剣を真っ直ぐな性格にしたのか、それとも真っ直ぐな性格が剣を全国レベルの剣士にしたのかはわからないところではあるが。
まるで漫画の主人公のような男。――真っ直ぐで素直で愚直で、馬鹿。
「話さなきゃいけないことって何よ。いい加減話して」
「ちょっと待てよ、まとまらねぇんだよ……」
「だったら砂の城作る前に頭動かしなさいよ……!」
学校から徒歩十分、自宅まで残り五分の距離。そこには『鳴神公園』がある。小さい頃は私も剣もここでよく遊んでいた。高校生にもなるとさすがに訪れることはほとんどなくなったが、剣は未だこの公園で竹刀を振る姿が目撃されているらしい。
その鳴神公園の砂場。既に砂の城は私の身長を越えていた。
話さなければならないことがあると本気の顔で言われて、のこのことついてきた私が間違いだった。この剣道馬鹿に大事な話をすらすらと話せる程の言語能力があるわけがない。
「あー、まとまった」
そう剣が言った頃には砂の城は剣の身長を越え、砂の城を隔てているためにお互いの顔は全く見えなくなった。
というか、そんな馬鹿でかい砂の城を作ってどうするんだ。砂場の砂がほとんど無いじゃないか。とんだ大作だ。
「やっと話せる……」
「それはこっちの台詞よ。やっと聞ける……あ、門限忘れないでよね」
「大丈夫、そう長い話じゃないから」
……今まで何故こんなに待たされたんだ。その大作を壊してやろうか。
更新遅れ申し訳ありません。