第5話
「先ほども陛下が信頼している人であれば何の疑いもなく信じると仰いました。そしてあの悲劇の時、ラーシャという存在を憎んだのですよね?それは陛下に特別な想いがあるからでは?」
リンは微かに笑うとマリアの言葉に肯定の意を示した。
「・・・そうです。これもお二人にはお話するつもりでしたが、私は陛下を愛しています。陛下だけが私が生きる意味でした・・・。ですが決して告げるつもりもない想いです。この想いはこの先消えることはないでしょう。ですが叶う想いでもないのです。お二人も心の内だけに収めておいてください。決して私が陛下を愛していると誰かに悟られるような事はしないでください。」
「・・そんな・・ではラーシャ様はこれから陛下がご成婚をなされても黙って祝福するという事ですか?ラーシャ様の地位であれば陛下とご成婚される事は可能です!」
痛ましそうにラーシャにつめよるダノ。
「私は・・自分の使命を果たしたらこの城を出て行きます。いつまでも陛下のおそばにいれば陛下はきっとずっと苦しい想いをなされるでしょうから・・・」
はっと息をのむダノ。マリアは眉をしかめリンに問いかけた。
「使命とは何なのかお聞きしても?」
「表向きは、この国を平和にすることです。」
「表向き・・・では本当の使命ではないということでしょうか?」
ダノとマリアは戸惑う仕草をみせた。
「いえ・・結果的にはそういう事になるのです。ですからそれも嘘ではありません。詳しく言うと私がルシアから告げられた使命は陛下の命をお守りする事で、この国を平和にすることではないのですが、陛下がご無事であればこの国も安泰です。ですから表向きの使命も嘘ではないのです。」
マリアとダノが困惑と緊張を露にし、リンを見た。
「・・・はっきり言えばこの先3回ほど陛下は命の危険にさらされる事になります。ちなみにこの事も陛下への想い同様誰にも告げるつもりはありません。」
「なんとっ・・・、では陛下のためにこの国に?」
「いいえ、私がそう願ったからです。黙って陛下が危ない目に合うのを見ていることなんて出来ませんから・・・。愛する人が危険な目に合うと知っていたら、何としてでもそれを回避しようとするのは恋する乙女なら当たり前のことでしょう?」
笑いながら首をかしげるリン。マリアとダノはリンの想いの深さと覚悟を感じ、息をのむ思いだった。
「・・・わかりました。秘密をお守り致します。決してラーシャ様の本当のお気持ちが悟られることがないよう、そして使命の詳しい内容が露見する事が無いようこの事は私達の胸の奥底にしまい込んでおきます。」
マリアとダノは本当の意味でラーシャの力になろうと、この時決意するのであった。




