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闇夜の月  作者: a-m
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第3話

 護衛官を残しルシー・ラーシャの間へと入ったリンと神官3人。


「それでは暫くの間お待ち下さい。すぐに有能な侍女を何人か選びこちらへよこします。」


 これから自分が暮らす部屋を興味深く見ていたリンに神官の一人が声をかけた。ルシー・ラーシャの間は白を基本色に薄い若草色のソファーなどが配置され、とても清潔感の漂うインテリアである。リンはあまり華美な装飾がなされていないことに安堵を覚えていたが、神官から声をかけられた事で意識を神官らに戻し口を開いた。

「いえ、その必要はないと思います。すでに陛下がこちらに侍女の方を手配してくださっているはずですから。」

 にこりと微笑みながら言うリンに神官たちは疑問を浮かべた。

「陛下からそのようなお話はお聞きしていなかったと思いますが・・」

 戸惑うような表情を見せながら言う一人の神官。他の神官らもあの最悪の初対面を思い出しながらリンを不安気に窺っていた。そんな神官らにリンは笑みを深くしながら、さも当然のように言葉を連ねた。

「確かに陛下はそんな事は仰っていませんでしたが、あの方はどんなに自分自身を犠牲にしても王としての義務を全うされる方だと思います。強引でしたが一応は私がこちらに滞在する事を許して下さったようですし。」

 神官達はアルキシン陛下を信頼しているような事を言うリンに驚きが隠せなかった。神官達の中で一番地位の高いファエルも驚いてはいたが、彼は先ほどリンが言った言葉を思い出しリンに問いかける。

「先ほどラーシャ様はこちらの世界の事を学ばれたとおっしゃいましたが、アルキシン陛下のことも何かお学びに?」

「・・・そうですね。ルシアの意識を通しこちらの世界を見ていましたので、その際に陛下のことも拝見することがありました。あの方がどういった政治をされているのか知る必要があると思いましたので・・。」

 嘘はついていないが、決して全てを語らない。そんなリンの言葉にファエルや他の神官も納得したように笑みを浮かべ頷いている。




 そんな会話を続けていた時、閉じられた扉の外から護衛官の声がノックと共に響いた。

「侍女が参りました。」

 リンが言った通り、すでに侍女が手配されていたことに神官らは少々驚きながらも、自分たちの国の王を認めているリンに心から喜びを感じていた。

 ————陛下はラーシャ様に対し何か思うことがあるようだが、ラーシャ様には何もないようだ。これならば時がきっと解決してくれるだろう。

 ファエルはアルキシンとリンの初対面の様子にこれからの未来に不安を覚えていたが、リンの言葉の節々からアルキシンに対しての信頼がうかがうことができ内心安堵していた。

「では、ラーシャ様。私達はこれで失礼致します。」

 丁寧に頭を下げ部屋を後にする神官たちにリンは感謝の言葉を述べながらアルキシンが手配した侍女2名を笑顔で迎え入れる。




 アルキシンが手配した侍女は城に侍従している侍女の中でもベテランであり、以前は宰相であるゴルノアの侍女をしていた経験も持つとても有能な侍女であった。静かに頭を下げ部屋に入って来た2人の侍女はどちらも40代半ばぐらいであり、とても丁寧な物腰でリンに挨拶を述べた。

「この度、ラーシャ様にお仕えする事になりました、マリアと申します。」

 言い終わると共にゆっくりと頭を上げたマリアは部屋に入ってきて初めてリンを正面から見た。


 この国の礼儀として身分が下のものは自分の名を名乗り挨拶をするまで、身分が上の者の首辺りまでしか視線をあげてはいけないのである。もう一人の侍女も同様にダノと名を名乗り初めて視線をリンの顔へと向けた。そしてマリアとダノは、リンを見た瞬間同じ感想を胸の中に抱いていた。


 真直ぐにのびた美しい長い髪と長いまつげに囲まれた黒い瞳が、膝丈までの白いワンピースによくはえ、儚さが漂うリンをより美しく見せていた。幼少期には可愛いという形容詞が似合っていたリンは成長するにつれ美しいという形容詞のほうが合う容貌になっていた。


 その容貌はこの世界においても美しいと称される容貌であり、マリアとダノはこれから仕える主人が性格はどうでも外見が美しい人である事を喜んでいた。



「私はリン・カンザキです。リンって呼んで下さい。これからよろしくお願いします。あっ、そうだ。私が何かこちらの国の礼儀に反するような事をしたら遠慮なく注意してくださいね?先ほども礼儀に反する事をしてしまって・・神官の方を困らせてしまいましたの。」

 明るくにこやかに笑い、マリアとダノにフランクに声をかけるリン。


 マリアとダノはアルキシンの態度から、ようやく降臨したラーシャはとても性格が悪いのかも知れないと思っていた自分たちの意識をすぐに改めたのであった。


「そんな・・こちらこそよろしくお願いします。」

 そんなマリアの言葉にダノも同意するように頷く。

 この部屋に入って初めて笑みを見せてくれた二人にリンは安心しつつ、自分に対しいかなる時も忠義を誓ってくれそうか思案していた。


ちょっと整理。


リン(神崎 鈴):18歳の美人さん。陛下が大好きでラーシャなひと。

アルキシン・ホスタ:24歳の美形王様。ラーシャが大嫌いなひと。

ゴルノア・コハン:66歳な白ひげ宰相。

マリア&ダノ:40代コンビの母性愛あふれるラーシャの侍女。

ファエル:35歳。幹部的な地位の神官。

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