~最終回~
一応最終回です
ということで人物表ヾ(>ω<)ノシ
来夢
人間 魔法使い あらゆるものを凍結することが出来る能力あり
エウナ
吸血鬼 屋敷の主 吸血鬼だけれど退魔の能力アリ魔法とか壊せます 他の吸血鬼から疎まれてます
メリーさん
幽霊 屋敷の管理人 エウナとは旧知の仲
氷華
死人 来夢の幼馴染
空
お姉さん 来夢に色々教えた人
~来夢ちゃん~
部屋に入るとベットの上で金髪の女性が血まみれで横たわっていた。ベットに張り付けるかのように剣が突き刺さっている光景はまるで昆虫採集の標本のようで、その体はびくりとも動かない。きっと確認しなくても息はないんでしょうね…
そしてそのベットの方を、3人の男が静かに見下ろしていた。一人は長身で、一人は丸々と太っており、もう一人は小柄な男たち、おそらくはどれもがどれも吸血鬼なのであろう。
そして、その光景が闇に沈んだかと思うと目が覚める。まったく、最近はいつもこの夢ですね…でも、やっと顔がわかりました。
ゆっくりと体を起こして外を見るとまだ夕方になったばかりなのか、夕焼けの赤い光がカーテンを照らしています。あかい…ひかりが
『いいね?○○、私はこれから君に色々なことを教えるけれど、まず最初に君に掛かっている封印を解く呪文を教えておこう』
そういってお姉さんはボクの顔を両手で挟み込むようにすると
『正直言って私は、君の封印はそのまま解くべきではないと思う。でも、その力は君のものだ、勝手に封印してそのままというのはあまりにも無責任すぎるだろう?』
お姉さんはそのまま真剣な顔で続けます。
『けれど忘れないで、今でも君の目は成長を続けている。だからもし封印を解いたらそのとき君は…もう人とは呼べない存在になる』
ボクはそうなると何かいけないことでもあるの?と聞きました。
そうするとお姉さんは悲しそうにボクのほうを見ると
人でなくなり、他の何にもなれなかったものは…簡単に死ぬことすらもできなくなる
"失われし我が名の下に命ずる"
バンッ
そこまで流れた辺りで強引に頭を殴って過去の回想を振り切る。まったく、これからが大変だというのに…難儀なものですね。
どれだけの時間ソレを見ていたのか、窓の外ではすでに外は暗くなっていた。そのままゆっくりと立ち上がると今日は何を着ていこうかと考えをめぐらす。
このままでもいいんですが…やっぱり正装がいいですか。
そこまで考えると、ワンピースからフリルのついた赤いドレスに着替え。その上に赤のコートを羽織った。
「それでは、いってきますね」
部屋を出る直前に、まだ眠っている彼女へと向けてそう囁くと扉を閉めた。
そしてコツコツと月明かりに照らされている廊下を歩きながら玄関を目指す。身の回りのものはほとんど片付けてありますし…たぶん忘れ物もないでしょう。今さらあったとしても無駄ですが。
そんなことを考えているといつしかホールまでたどり着いており、急に後ろから声をかけられた。
「お出かけですかー?」
ふぅ…誰にも知られずに出るつもりでしたが、やっぱり無理でしたか。
「はい、綺麗な月なので少し外に出ようかと」
「あららー、そうなんですかー。いい月ですものねー」
そう答えると玄関に手をかける。嘘は付いてません、ただ出て何をするかを言っていないだけ。
「そのまま…帰ってこないつもりですか?」
「どうでしょうね、できれば帰りたいと思ってますが…不慮の事故というのは何時起こるかわからないですから…」
振り返ることはせずにメリーさんの対応をします。あ、一つ忘れ物をしてました
「そうだ、一応お願いを聞いてもらえます?」
「嫌です、それくらい自分でしてください」
「エウナさんを外に出さないでください」
「私の言ったこと聞こえてましたか?」
「あとは…もし出来なかったらボクの変わりに記憶の凍結をお願いしますね。仕込みはすでに済んでありますから」
「…それを聞いて私がすると「してくれますよね?」」
メリーさんの言葉を遮ってそういうと、返事は聞かずに玄関から外へと出てゆっくりと歩き出す。悪いこと押し付けちゃいましたね。まぁ、仕方ないですか。さてさて場所は…上のほうですか、ちょうど皆で初日の出を見たあたりがちょうどいいですか。
それにしても、今日は月が綺麗です。
変なものがいつかの時よりも少し増えているような気がしますが…お姉さんの言うとおりなら気のせいではないんでしょう。
空を見上げると赤い満月が笑うように辺りを照らしていた。
本当に、死にまみれた世界ですね。
目的としていた場所に着くと、木の裏で息を潜める。ふむ、まだ来てないみたいですね。空は…ふむ、こっちもまだですか。
どれくらいそこでそうしていたのだろうか、しばらくすると広場の方に3人の男が居るのが見えた。男たちは1本の剣を持っており。一人は長身、一人は丸々太っており、もう一人は小柄であった。この中で一番怖いのは…たぶん長身の人でしょうね。
そこまで思考を済ませると、ペンダントを短刀へと変えた。
さぁ、殺し合いを始めましょうか。
軽い深呼吸をすると隠れていた木から飛び出し、太っている一人のお腹へと短刀を切り付ける。そして、切り裂いている刀身から結界を発動させて上半身を吹き飛ばすと、残っている下半身に札を仕込み、横へと跳んで小柄の男の攻撃を避ける。まずは一人ですか。
「っ!?」
避けられたことに驚いている男の顔を無視しながら、飄々と立っている長身の男へと切りつけるが避けられ、そのまま殴り飛ばされる。やっぱり、あなたが一番の問題ですね。
飛ばされていく体を結界を使って強引に止めると、追撃してきた小柄の男の攻撃を時間を止めて男の攻撃を避ける。そのまま後ろから無防備となった背中に短刀を突き刺すと、小柄な男の体はすぐに凍り始めた。これで、残りは一人。
凍りついた小柄な男を砕くと同時に、嫌な予感がしたので時間を止め、いつの間にか後ろに居た長身の男の攻撃を回り込むようにして避ける。けれどもボクは、気がつくとそのまま後ろの木へと殴り飛ばされた。…予想はしてましたが、やっぱり一度見られたら対応されますか。
「このガキ!ぶっ殺して…」
木へと叩きつけられた後、ごほっごほっと生理的な咳を出しつつもゆっくりと立ち上がると、そのまま札に仕込んでおいた術を発動させて再生の終わったふくよかな男を灰へと変え、ちらりと空を見てから残った長身の男を睨みつけます。あと、少し。
「人間、何ゆえ我らの行く手を阻む?」
「エウナさんは…殺させません!」
吸血鬼の問いに来夢はそう答えると、再び突っ込んでいった。
現状出せる全ての手札を見られた今。彼女にはもう、目の前に対する化け物を殺す手は無いというのに。
~エウナさん~
それでは、逝ってきますね。
「来夢?」
どこかで来夢の声がした気がするが、周りを見てもいつもの少女の姿はない。私の隣にあるのは空のベット、床には彼女が昨日まで着ていた白いワンピースが無造作に脱ぎ捨てられており、壁を見てもそこには何も掛かっていない。どうやら彼女は先に起きたらしい。
今のは気のせい?でも、確かに声がしたような…
「お目覚めですか?」
「メリー…」
確かに聞こえた声について思いを馳せていると、扉から銀色の髪をサイドに括った、浴衣姿の少女が入ってきた。
「ねぇメリー、来夢は何処に居るの?」
私は何とも言えない不安に駆られて親友へとそう問う。
「来夢さんは…ご飯が出来ましたから食堂で話しますよ」
「食事?それなら来夢も一緒でいいんじゃないの?」
「先に食べてていいとのことなので」
メリーはそう言うと私を促した。先に食べていいって…私たちは取る必要がないはずなのだけれど…。
そんな疑問を抱きながらも私はメリーに促されるままに食堂へと足を運ぶ。
「さぁさぁエウナさん、いっぱい食べてくださいね」
食堂の席へと着くとメリーが大量の肉料理を運んできた。この子、私を食べるつもりじゃないわよね?
「食べるわけ無いじゃないですかー。ほら、お肉は熱い間が一番美味しいですよ」
ん?今のやり取りにいつもの彼女らしくない違和感を少し感じる。
「ねぇメリー、来夢は何処に行ったの?」
「来夢さんは月が綺麗だからお散歩に行くって言ってましたよー」
今度はちゃんと答えてくれる。へぇ…月が綺麗だから散歩に、ね。
「知ってる?最近、私を殺そうって話が挙がってるらしいわよ」
「…へぇー、そうなんですかー」
「ええ、私のことを疎ましく思う連中が居るらしくてね。本当に困った連中だわ」
「ええ、本当にそうですね。エウナさんを殺せるわけ無いのに」
「そうでもないわよ。何でも話に聞くには連中、吸血鬼も殺せるような剣を手に入れたらしいわ。それに最強とか呼ばれてる奴も来るらしいし…もし来たら私なんて抵抗も無く殺されるでしょうね」
「そんな縁起でもないこといわないでくださいよー」
世間話のようにメリーへと語りかけて見るが、さきほどの様な違和感を出さずに彼女はいつもどおりに対応する。
「ところでメリー」
「何ですか?エウナさん」
「来夢は、何時から月を見ることが出来るようになったのかしら?」
「…どういうことですか?」
「確かあの子、鳥目で暗いと周りがほとんど見えないのよね?なのにあなたは、アノ子は月が綺麗だから散歩に行ったと言った。それはどうしてだと思う?」
「…目が急に見えるようになったからじゃないですか?」
「私たちの知ってるあの子は、目が見えるようになったからと言って何も言わずに散歩に行くような子だったかしら?いつかの日の出の様に皆で行くとか騒ぎ出しそうなものだと思うのだけれど?」
そこまで一気に語ると席を立つと食堂の扉へと手をかける。
「少し出かけるわよ」
「ダメです。まだ食事中ですよ?」
「帰ってから皆で取るわ」
そこまで言ってから食堂の扉を開けると、その中もまた、食堂だった。
「メリー、早く空間を戻しなさい」
「嫌です、行かせません」
「…どうしてそこまでして私を行かせたくないの?」
「…」
「そう、なら力付くでも通らせてもらうわ」
黙りこんだ彼女のことを肯定と取り、扉に向かって拳を握り締める。おそらく使われてるのは空間魔法でしょう。なら、ぶち壊せるわね。
「ダメです!」
メリーはそう叫ぶと構えている私に向かって槍を構えた。
「どうしても行くというなら…ここで動けなくします!」
…そこまで行かせたくないのね。
「やりなさい」
「え?」
「そうまでして行かせたくないなら私を貫けばいいでしょう。もしもあなたがそうまでして私を行かせたくないのなら、私はここでおとなしくしてるわ」
でも、そうしないなら、私はなんとしても行くわよ。そう言うと握っている拳を解くと、静かに立つ。
カランカラン
後ろでメリーの持っている槍の落ちる音がする。そう、それがあなたの答えね。
「ありがと、メリー」
私は再び拳を作ると扉を吹き飛ばし、食堂から出ると屋敷の外へと歩き出した。
「ごめん…なさい…」
後ろから誰かにあやまっているメリーの泣き声を聞きながら。
「さて、あの子は何処に居るのかしらね」
屋敷の外へと出ると一人ぼやく。勢いよく出たはいいけれど場所がわからないのじゃどうしようもないわね…
周りを見ても目印となるようなものは何も無く、さらに庭には濃厚な血の匂いが漂っており鼻も使えない。せっかく出れても…コレじゃ何の意味も無いわね。ただ気持ちだけが焦っていく。
と、屋敷の上の方、以前日の出を見に行った場所へと空から光の柱が降り注いでいるのを見つけた。
「あそこね」
エウナはそう呟くと飛び上がり、光の落ちる場所へと向かい始めた。
~メリーさん~
「ごめん…なさい…」
エウナが立ち去った後の食堂では、一人となったメリーがたたずんで泣いていた。
「あなたの…最期の…お願いだったのに…私…叶えてあげられなかった…」
そう呟くとメリーは誰も居なくなった食堂で静かに一人、泣き続けていた。
「ごめんね…ごめんね…来夢さん…」
その呟きは誰にも届くことはなく闇へと消えていく。
~来夢ちゃん~
屋敷の上の方の広場では、未だに来夢と長身の男との戦いが続いていた。
長身の男の出す攻撃を時間を止めて避けると、後ろに回りこんで切り付ける。けれども、あと少しというところで避けられ、カウンターを貰い吹き飛ばされる。
なんてことはない、いくら時間を止めれるとしても、止めてる間に攻撃をすること出来ないのである。つまり時間が流れて攻撃する時間がコンマであろうが何であろうが、それの対応できるだけの性能があるなら、時間を止めれる事など何のメリットもなさない。
すでに体の感覚は能力の使いすぎでなく、短刀をちゃんと手に持っているのかどうかも怪しい。さらには体も少しづつ動かなくなってきてきました。
それでも、通用しないとわかっていながらも短刀を振るっては殴り飛ばされる。氷華ちゃんなら…もっと上手く戦うかも知れないですね。
回っていく視界の中、ふとそんな考えが浮かんだが、すぐにその思考を振り払う。いつも守ってくれた彼女のことを消したのは間違いなくボクなのだから…。
でも…それも…コレでおしまいです。
そう心の中で呟くと立ち上がり、短刀を杖へと持ち変えると一文字に構える。体は…まだ動きますね。
「…ロック」
「む!?」
そう唱えると長身の男の手足にキューブ上の結界が現れ、男の動きを止めた。
「失われし、我が名の下に命ずる」
そこまで唱え終わると、ボクは構えていた杖を振り下ろす。男の方は何とかして拘束から逃げ出そうとしてもがくが、もう…遅いです。
杖を振り下ろし終わると、空から巨大な光の柱が降り注ぎ、長身の吸血鬼の姿を塵へと変えた。
「あと…一仕事…」
そう呟くと、吸血鬼の近くにあった剣に手をかけると一気に凍結させると砕く。これで…安心。
もう限界…ですね。その光景を最期まで見終わると、ボクの体は意思に反してゆっくりと倒れていった。
「来夢!」
倒れ行く視界の中、エウナさんが叫びながらこちらに向かってくるのが見える。メリーさんったら…仕方ないですね…もうちょっとだけ…がんばらないと…
~エウナさん~
「来夢!」
光の柱の降り注ぐ場所へと行くと、来夢がゆっくりと倒れているのが見えたので駆け寄り倒れていく体を抱きとめる。
「エウナ…さん?」
「しっかりしなさい!」
来夢の体は氷の様に冷たく、このままではあまり長くはないことがわかってしまった。
「エウナさん…聞いて…」
「少し黙ってなさい!」
コートを脱がすと体は血だらけで、ああもう!こんなことが分かってたら色々と道具を準備してたわよ!とりあえず冷えている体を温めようと思い、彼女の氷のような体を抱きしめる。
「エウナさん…あのね…ボクが死んでも…笑っていられるように…」
「縁起でもないこと言わないで!」
抱きしめていると彼女の体からはどんどん体温が無くなっていくのがわかり、その様子がもう何をやっても無駄だと言っている様で腹立だしく、そして何より、悲しかった。
「笑っていられるように…記憶を…凍結しますね」
「あなた…何言ってるの…?」
「ボクが…死んだら…ボクの事で…誰も…悲しむことがない様に…」
「バカいわないで!何そんな勝手なことを!」
「えへへ…ごめんなさい…」
目の前の少女の言っていることが信じられなかった。記憶の凍結?つまり…彼女のことを忘れるって言うこと?
「嘘…でしょう?」
「エウナ…さん?」
「嘘だって…言いなさいよ!」
「エウナさん…泣いてるの?」
「嘘なんでしょう!」
「泣かないで…くださいよ」
涙が勝手に溢れてくる。何よそれ…そんな結末なら…
「会わない方がよかっただなんて…言わないでくださいよ…」
来夢は幸せそうに私の顔を見ている。何で…何でそんな幸せそうなのよ!
「ボクは…エウナさんやメリーさんに会えて…幸せでしたよ」
「幸せなら…なんで…こんなこと…」
ごめんなさい、そう言って彼女はゆっくりと笑った。もう…そんな顔で笑われたら…どうしようもないじゃない…
「月が…綺麗ですね…」
「ええ…ホントに…ね」
「エウナさん…」
「何…よ」
「夜桜…見に…いけなくて…ごめんなさい…」
「バカなこと言わないで…コレから見るんでしょう…」
「そう…ですね…」
そう言うと来夢は静かに目を閉じると
「エウナさん…ギュって…して…くれますか?」
私は冷たい彼女の体を強く抱きしめると泣いた。
「あった…かい…」
そして、彼女はゆっくりと動かなくなった。
□ □ □ □
ふと気がつくと私は日の出を見た広場で座り込んでいた。よくはわからないが顔が濡れている。私、泣いていたの?
…?私の胸元を見るとそこには幸せそうな顔で眠るように死んでいる赤い服の少女の姿。
この子…誰…?
目の前に居る少女のことについて考えようとすると鈍い痛みが頭を襲った。
とりあえず少女をこのままにするのもなんなので屋敷へと戻ってスコップを持ってくると、一番大きな桜の下に少女の亡骸を埋めた。
何だかわからないが、そうしないといけない気がしたのだ。
「桜の下には死体が眠る…か」
まさか私がその話を実践することになろうとはね。
彼女の亡骸を完全に埋めると、なんとなく月を仰ぐ。
「今日は、月が綺麗ね」
その彼女の呟きに応えるものは、何も居なかった。
生き物の死んでない場所なんてないですよね
トュルーエンドとなりました
テンプレ大切!話の流れの読みやすいSSですとも、ええ
次は後日談が少々
もうちっとだけ続くんじゃ・・・




