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7/10

初日の出ってたいてい寝てますよね

正月ねたを正月過ぎてからあげる暴挙


久しぶりに人物表 ヾ(>ω<)ノシ


来夢(ライム)

人間 鳥目 ぺたぺた


エウナ

吸血鬼 割と怪力 ぼんきゅっぼん


メリーさん

幽霊 意外と多芸 ないわけでは…ない


 いつものテラスにて、なんとなく人里のほうを眺めながら一人紅茶を飲む。


「月が綺麗ですねー」

「ええ、ホントにね」


 突然の問いに星空へと視線を向けながら、いつもの様にそう答える。ふむ、今日は新月なのね…通りで暗いわけだ。

 実際のところ、新月の日に月が綺麗も何もないのだけれど、この子鳥目だかで暗い場所だとほとんど目が見えないらしいから気づきようがないんでしょう。

 その事実を知った時、目が見えないのに何で生活できてるの?と聞いたことがある。何でも、モノから発せられる気配と魔力、そして音なんかを頼りに生活してるらしい。訓練すれば誰でも出来るようになるとも言っていたけれど…できればご遠慮願いたいわね。暗闇になると目が見えなくなる吸血鬼なんて本末転倒である。風の噂ではそんなのもどこかに居るらしいけれど…


 そこまで星空を見上げて思いを馳せてから、少女へと視線を向ける。少女は145程度の小さな体にフリルの付いた赤いドレス、さらにその上からはサイズが合わないのだろうか、裾が膝丈まであるこれまた赤いコートを着ている。幼さしか感じられない白く小さな顔に、見ていると深く沈み込むような黒さの髪と瞳。何度見ても綺麗な顔つきね。


「今日は新月だから月は見えないわよ」


 特に意味も無いけれど、一応知らせておく。


「ありゃりゃ、そうでしたか」

「ええ、そうなの。紅茶飲む?」

「頂きます」


 来夢が席に座ったのを見てからティーカップへと紅茶を注ぐ。実際、ただの儀式みたいなものなのだから、この子は目が見えていたとしてもやり取りは変わらないのでしょうね。

 私たちにとって、新月だろうが曇っていようが関係はないのである。でも曇ってるのはダメね、月見も星見も出来ないじゃない。


「エウナさんエウナさん」

「何?」

「今日は星が綺麗ですか?」

「ええ、満天の星空ね」


 そうですか、とティーカップを両手で包み込むようにして持ちながら星空を見上げると来夢は呟く。そのときの彼女の顔はどこか虚ろで、まるで意識だけがどこか別のところへと旅をしている様子。

 今、彼女の漆黒の瞳には何が写っているのかしらね。案外、見えないなら見えないなりに見える世界があるのかもしれない。…自分で考えてて混乱してきたわ


「そういえば年末ですよ年末!」


 あ、現実に帰ってきた。…年末ってアレよね?オショウガツとかオオミソカとかオオソウジとかで騒ぐ人間のお祭りみたいなもの。

 ちなみに、毎年私たちは年末とか関係なしに寝て過ごしている。…元々、年とか月とかという感覚は私たちにはないのだ。ああいうのは寿命の短い連中だからこそ意味があるのだろう。

 感じるのは季節だけ、それは今までも、そしてこれからも変わらないでしょうね。ちなみに、今年も例外はなく、すでに新年は始まっているはず。


「年末って…もう年は明けてるん…ってちょっと!何するのよ!」


 そこまで言った辺りで突然彼女は赤い顔をしながら手に持っていたカップをこちらへ向かって投げつけてきた。危ないわね、幸い中身は空だかったから服は汚れなかったけれど…さすがに真冬に濡れた服で居るのは辛い。


「エウナさんのバカー!気づいてたなら先に言ってて下さいよ!」


 馬鹿はお前だこの幼児体系め、3日くらいは外を歩けなくしてやろうか…。大体、あなたも気づかないで一緒に寝てたんでしょうが。

 ふぅ…私に非はないので怒ってもいいのだけれど、害も無かったので少しヒビの入ったカップをテーブルへと戻す。…害あるじゃない!どうするのよこのカップ!替えはあるのだからいいけれども。

 集まっている面子の種族や性格がアレなのである。カップなど人数分以上に用意していなければ、数分持つかも怪しい。


 割れたカップを戻して次のカップを選んだ辺りが、なにやら騒がしい。

 まて寝るな!今寝たら死ぬぞ!誰か!誰か来てくれ!メディィィィィィク!

 絶対に帰ってくる!だから、もし帰ったら…俺と結婚してくれ!


「そ、そういえば、年明けですよ年明け!」


 何も無かったことにして進めるみたいね。


「年明けだからどうしたのよ?」


 新しく選んだカップへとティーポットを傾けながら聞いてみる。それにしても拘るわね…あ、紅茶が切れた。新しくお湯を取りに行くのも面倒だし、どうしようか。


「初日の出を見に行きま「ダメよ」」


 最後までは言わせない。


「えーなんでですかー?」

「あなたも私の種族は知ってるでしょう?初日の出なんて見に行くの、私は嫌よ」

「エウナさんの種族って…ちゅーけつき?」


 ピシリ


 手に持ってるカップにヒビが入る。ああ…コレもダメね。それにしてもこの娘…一度体に教え込む必要があるのかしら…。


「エウナさんったら♪体にだなんて…そんな卑猥なこと…」


 突然後ろからした声に、手の中の割れたカップを投げつける。カップは避けれても中身はそうもいかないでしょう。


 投げられる直前に、ヒビの入ったカップが残されたカップへとそう伝えた。

 故郷のあの子に伝えてくれ…約束、守れなくてごめんって…

 まてっ!逝くな!逝くんじゃない!結婚するんじゃなかったのかよ!おい逝くな!


「あっ熱い!熱い!エウナさんの愛が熱い!」


 熱い紅茶を頭から被って悶えてるのは浴衣姿の少女。透けるような碧の瞳、闇に浮かぶ銀色の髪は頭の上でサイドに括っており、彼女が動くたびに藍色の浴衣に描かれた雪模様が夜闇の中を踊っている様で綺麗ね。それはともかくこの幽霊…さっさと成仏してくれないかしら。


「まだ成仏する気はないですよー?はい、新しいお湯」

「ありがと、あと勝手に人の心を読まないでちょうだい」

「愛し合う二人は以心伝心ってことですね♪熱い!エウナさんの愛が熱い!」

「むー!エウナさんと愛し合うのはボクだもん!メリーさんに渡さないもん!」

「ふっ…それでは今日から私たちはライバルということですね!」


 来夢、いちいち反応するな。そしてメリーもいちいち挑発するな。


「「それでどっちを愛してくれますか?」」

「あなたたち、少しは静かに出来ないの?」


 そう言うと、二人とも沈み込んだまま動かなくなった。動けば動くで五月蝿いし、静かなら静かで鬱陶しいのねこの子たち。


「ところでエウナさん、初日の出くらい見に行ってあげてもいいじゃないですかー。死ぬものでもないのだし」

「いいんですか!?」


 先に復活したメリーが私にそう聞く。それを聞くや否やもう一人も復活した。きっと誰かがアレイズでも順番に唱えたのだろう。


「嫌よ、死ななくてもアレは生理的に嫌なの」


 そう、別に吸血鬼だからっといっても日の光に当たったから死ぬわけではない。実際、日傘を差して昼間に活動する吸血鬼もどこかに居るらしい…が、死なないからわざわざ昼間出歩くというと、それとこれとは別問題。ましてや朝日なんてもってのほかである。日傘がほとんど意味なさないじゃない。


「大体、メリーなら言わなくてもわかってるでしょう」

「日の光が嫌なんですか?それなら!ボクの開発した日傘ロボットジェントルマン2号がばばんと解決します!」


 そういって手を指し示すので、その先を反射的に見る。すると、地面から煙が立ち始め、煙が晴れるとそこにはまるでドラム缶に手足をつけたようなロボットが現れた。ロボットは動きにあわせてピコピコと目が光輝いており、手には日傘が持たされている。このバカ、また変なもの作ったのね…


「おお~♪かっこいい♪」

「お、このよさがわかるとは…やりますね!」

「ところで、2号ってことは1号も居るのよね?」


 ふと気になったので盛り上がっているバカ二人を無視して聞いてみる。するとメリーはどこか遠い目をしながら


「1号は…旅に出ました」

「…ピーピーガガ」


 2号がどこか悲しむように鳴り響く。聞けば1号にはステルス機能をつけた直後にケンカをし、そのままステルス機能を発動、後は音信不通となり作った本人にも居場所がわからなくなってそのままらしい。つまり自分の作ったロボットとケンカをしたところ、これまた自分のつけた機能によって見つからなくなり、しょうがないから放置したらしいということだ。バカだ、ここにバカが居る。


「でも私は信じてます!いつか1号が私の傍に帰ってくるということを!」

「ガガガ、ピー!」

「感動です!ボクは!ボクは感動しました!」

「ガピー!ピーガ!」


 それにしても五月蝿いわね…このロボット。


「それで?そのロボットが何だって?」

「ジェントルマン2号です」

「ガガ!」

「何だか日傘ロボットとか言ってたけれど?」

「ジェントルマン2号です」

「ガガ!」

「ホントに解決するの?」

「ジェントルマン2号です」

「ガガ!」

「…そのジェントルマン2号が何をしてくれるのかしら?」


 …どうやら名前を言わない限り質問に答えてくれないらしい。コレでしょうもない能力だったら…ふふ、どうしてくれようかしらね。ちなみに来夢はひとしきり騒いだら眠くなってきたらしく、カップ片手に頭がこっくりこっくりと舟をこいでいる。


「もちろん!この日傘ロボットジェントルマン2号は日の当たる位置を自動的に感知しその手の傘でシャットダウンッ!対象者に届く日の光を一切カットします!」

「…その日傘、完全にカットするには明らかに小さいと思うのだけれど?」


 そう聞いてみるとメリーは数秒日傘を見つめ、てへっ☆と笑った。


「ピガー!」

「ジェントルマン2号ー!」


 殴った、立ち上がると助走を付け、全身全霊を掛けて殴り飛ばした。そして庭へと吹っ飛んでいくポンコツ。


「ふっ…甘いですねエウナさん、このジェントルマン2号は1号とは違い衝撃吸収機能も搭載済み!その程度の衝撃ではダメージは与えられません!」

「何だか庭でバカみたいに腕を伸ばして回っているけれど?」

「ジェントルマン2号ー!」


 それにしてもメリーの言ったとおりホントに頑丈ねあのポンコツ。もう2度と立ち上がれない様にするつもりで殴ったのだけれど…スクラップにするためには後1つ止めが必要か。


「来夢、ちょっと」

「うにゅ…はい?何ですかエウナさん?」

「ペンダント貸してくれない?その、首に掛けてある…」

「いいですよー、はい、どうぞ」

「ありがと、ちなみにコレ、どれくらいの硬さ?」

「んー…すっごく!」

「具体的に言うと?」

「エウナさんが本気で壊そうとしても無理なくらいですかねー?」


 ふむ、それだけの強度があるなら平気でしょう。念のため力を込めてみるが話は本当らしく壊れる気配はない。

 早速よよよよよよー、と嘘なきをしているメリーの隣に立つとペンダントを振りかぶる。


「ジャンクになりなさい!このポンコツ!」

「ボクのペンダントー!」


 ペンダントは私の狙い通りにポンコツの頭を貫いていった。ポンコツはペンダントが貫通すると、ばちばちと電気を出しながら倒れ、やがて盛大に爆発した。…大丈夫よね?あのペンダント


「ジェントルマン2号…何処へ行っても元気に生きるんですよ…」

「ボクのペンダントが…」


 私は沈んでいる後に憤るであろう来夢をどうあやそうか考えながら、ポンコツの爆発した後を静かに眺めていた。



 □ □ □ □



「エウナさん酷いです…」

「悪かったわよ」


 あの後ポンコツの破片の中からペンダントを無事救出し、来夢へと返したのだが、やはり機嫌はすこぶる悪く、ずっとこちらのほうを向いてくれない。


「大切なペンダントだったのに…」

「本当に悪かったわ」

「大切なジェントルマンだったのに…」

「それはアレがポンコツだったのが悪いんでしょう」


 ひ、酷い!と言って嘘泣きをするメリーを無視しながら未だこちらを向いてくれない来夢の頭を撫でる。まいったわね


「もう…エウナさんなんて知らないです!」

「そう、それじゃしょうがないわね」

「ほぇ?」


 知らないのならもう私にはどうしようもない、無駄なことにはあまり時間を省きたくないのである。夜は意外とあっさり終わるのだから。


「メリー、今晩の食事は何にするの?」

「あ、あの?エウナさん…?」

「そうですねー…お魚はばっかりでしたしお肉か…ケーキという選択肢も?」

「食事なのにケーキ?甘ったるいわね」

「そのぅ…エウナさん?」

「甘さは控えめにしてありますから、大丈夫だと思いますよ?」

「そう、食後にケーキという選択肢は?」

「エウナさんー…」

「それは…ないですね。お腹いっぱいになっちゃう気がします。それにデザートとしては少し量が多めですから」

「ふむ、ケーキか肉か…ね」

「エ…エウナさん!」

「何?」


 突然来夢が声を張り上げた、そんなに大きな声出さなくても聞こえるわよ。


「へ?あの、そのぅ…!」


 そして反応すると、途端にもじもじとし始める来夢。だから何が言いたいのよ。


「あ、あの!ギュってしてください!」

「はいはい」


 ギュッとしろとのご志望なので来夢のことを抱きしめる。


「はふぅ…」

「満足した?」

「はいぃ…」


 とけたような声で来夢が返事をしたので体を離す。


「エ…エウナさん!」

「五月蝿いわよ」

「そんな殺生なー…」


 突然声を張り上げたメリーに返事をしてから、未だにとけたような表情をしている来夢に話しかける。


「初日の出、見に行くわよ」

「ほぇ?いいんですか?」

「ペンダント、大切だったのでしょう?それくらい付き合うわよ」

「え、えへへー♪エウナさん大好き♪」

「そうと決まったら少し眠りなさい、出発するときに起こすから」

「ひざまくら?」

「はいはい、どうぞ」


 初日の出までの道中で寝られてはたまらないので来夢を寝かす。それにしても初日の出ね…うん、たぶん大丈夫でしょう。


「メリー、聞いてたわね?食事は向こうで食べるわよ」

「あいあいさー、場所はどうしますか?」


 そういえば場所ね…特に思いつかないわね。ここじゃダメなのかしら?


「あなたいい場所知らない?」

「少し上ったところに桜の密集してるところがあるので、そこがいいんじゃないかとー」

「そう、それじゃそこにしましょう。悪いけど私が準備してる間、この子のことお願いできる?」

「喜んでー」


 それでは私は先に準備しておきますねーと言ってメリーは透けるように消えた。

 ところで日傘…何処に閉まったのかしらね。

 私は膝の上で眠る来夢の頭を撫でながら記憶を巡らせながらメリーが帰ってくるのを待っていた。



 □ □ □ □



「エウナさんメリーさん、早く早くー」

「はいはい、わかってるからそんなに走らないの」


 山道の上のほうで振り向いて私の方を見る来夢へとそう答えると、日傘を片手にゆっくりと追いかける。


「そうですよ…来夢さん…道は…長いんですから…ゆっくり…行かないと…」

「…少し休憩する?」

「へ…平気…です」

「そう…」


 隣ではぜぇぜぇ言いながら大量の荷物を抱えたメリーが登っている。途中で倒れたりしないわよね?そうなると面倒だからやめてほしいのだけれど…


「ところでその荷物何よ?明らかに食料以外もあるわよね?」

「お…酒…」


 もう、何も言うまい…


「エ、エウナさん…まっ…」


 酒の亡者の言葉を無視して先に進む。あら、けなげにも上で来夢が待ってるじゃない、これは早く行ってあげないといけないわね。


「荷物…少し…持って…くれたら…珍しい…お酒を…」

「あら?メリー辛そうね?貸しなさい、少し持ってあげるから」


 その言葉を聞くや否やメリーの荷物を持ってあげる。珍しいお酒ね、楽しみだわ。


「はーやーくー!」

「わかってるからそう急かさないの」


 何度も私たちを急かす来夢に返事をしながらも山道を登っていくと、いつしか開けた広場へと着いた。


「ここ?」

「はい…そうですね」


 見ると来夢はものめずらしそうに広場の中を駆け回っている。あの子…日の出までちゃんと持つわよね?


「それじゃ少し休んだら食事にしましょうか」


 ちなみにメリーの用意した食事メニューはケーキに漬物という意味のわからない組み合わせ…この幽霊、一体何を考えてこのメニューにしたのかしら…というより何にでも漬物を出すのはやめなさい。

 来夢は気にせず食べていた。そういえばこの子って好き嫌いとかあるのかしらね?


「あなた嫌いなものとかあるの?」

「うに?んー…ムシムシは少し苦手ですね」


 虫なんてほとんどの人は苦手どころか食べれないわよ…。しかも苦手であって食べれないというわけではないらしい。あなた、私たちのとこに来るまでの旅はどんな食生活してたのよ…


「来夢さん…いっぱい食べてくださいね」


 見るとメリーも少し涙ぐんでカブの漬物を差し出している。この子…だからこんなに小さいのね。


 食事も終わり、後はいつもの如く酒盛りとなる。


「そういえばメリー、珍しいお酒はどこ?」

「んー?そんなこと言いまし…やめて!そのお酒に罪は無いの!割らないで!」


 酒瓶に力を込めようとすると、メリーは荷物の中からごそごそと1つのビンを出してきた。最初からそうしてればいいのよ。

 早速開けるとポンっと子気味いい音がして中身が少し溢れてきた。ふむ、これは…やはりグラスに注ぐとシュワシュワとした液体が出てくる。


「おおー、しゅわしゅわしてるー」

「へぇ…シャンパンじゃない。よく手に入ったわね」

「でしょー?人里まで遊びに行ったら知らない人がくれたんですよー」


 これも日ごろの行いがいいからですねー、とか笑いながらシャンパンを口にする。…それはないとしても、意外と人気あるのよね、この子。


「そういえば!この辺は春になると綺麗な桜でいっぱいになるんですよー」

「ほぇー、エウナさんエウナさん!」

「はいはい、裾を引っ張らなくても聞いてるわよ」

「夜桜見に行きましょう、夜桜ー」

「夜桜ですかー、いいですねー」

「…考えとくわ」


 そうは言ったものの…夜桜ね、断る理由もないしたまにはいいか。

 しばらくそういったやり取りをしていると案の定、来夢は眠くなったようで私の膝を枕に眠りへとついた。まったく、はしゃぎすぎよ。

 その様子をメリーがうらやましそうに見ていた気がするけれども、気のせいということにしておきましょう。



「あ、そろそろ初日の出ですね」

「ほら来夢、起きなさい」

「うにゅ…おはようのちゅー?」

「…ほら起きなさい」

「えへへー♪起きるー」

「エウナさんー、私に対してのおはようのキスはー?」

「地面がお好み?」

「うう…不公平だ」


 起きるや否や寝ぼけて甘えてくる来夢をあやしてつつ、寝転がって目を閉じてるメリーの対応をする。いい加減目を開けなさい、蹴り飛ばすわよ?


「エウナさんエウナさん」

「何よ」

「メリーさんのこと、嫌い?」

「どうかしらね」

「嫌いだからエウナさんはちゅーしないの?」


 来夢は目に涙を溜めながら私にそう聞いてくる。あーもう!わかったわよ。


「っん!?」

「お目覚めかしら?」

「え…?あの?今…何を?」

「ほら起きなさい。もうすぐ日の出よ」

「あ…はい…」


 寝転がってるメリーにキスをして起こすと、ようやく顔を出した日の出を眺める。何だか隣のほうで小さく初めてだったのに…とか聞こえてきたけれど気のせいよね?気のせいのはずだわ、気のせいということにしよう。

 それにしても…わかってはいたけれど最悪の気分ね。日の光が正面からくるから日傘なんて大した効果も出してはいないし。それでもまぁ


「初日の出だー」

「初日の出ですねー」


 隣で騒ぐバカ二人を見てると一年に一度くらいはいいかなと思えた。


「ところでエウナさん、ボクたちの他に何か居るんですか?」

「へぇ?それは具体的にどの辺り?」


 そう聞いてくる来夢の言葉にピンと来た私は彼女の指し示す空間を思いっきり殴り飛ばした。私を闇討ちしようだなんていい度胸ねポンコツ、お礼として2号と同じ場所に送ってあげるわ。


「ジェントルマン1号ー!」


 初日の出の明かりの中、メリーの悲鳴がこだました。

ほのぼの目指したら甘いといわれました

( ・з・)ぷっぷくぷー


少しでも楽しんでいただけたら幸いです

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