山小屋にて
家に入ると、二人はすぐに大きな布を渡された
それで濡れた髪や体を拭った
暖炉に火が灯り、部屋が暖かくなる
この家は山小屋とはいえ、それなりの広さはありそうだった
二人は暖かい飲み物を出され、テーブルの席に座った
「で、こんな山奥で何をしてたの?」
その女性は車椅子をチラッと見たあと、ニィファに目を向ける
「あまり無理をしてまで来るような場所じゃないわよ」
その女性はそう付け加えた
「俺達は、実は・・・・」
エーリックは一瞬躊躇したが
「永遠に生きる魔女ヴェ=リェを探しているんです」
笑われるだろうか・・・・
そう思ったが、それを聞くとその女性はやはり爆笑した
一通り笑い倒したあと
「ちょっと、それ本気で言ってるの?あれはただのおとぎ話でしょ」
「まあ、そうですよね」
エーリックは話したことを少し後悔し始めていた
しかしニィファは
「私は本当にいるんじゃないかと思っています」
極めて真面目に返答した
続けて
「だって、光り輝く洞窟も本当にあったんだもの」
そう付け加えた
それを聞くと、その女性は
「光り輝く洞窟?それを見つけたの?」
「はい」
その女性は視線を宙に浮かべた
「なるほどね。だったらヴェ=リェについても探したくなっても不思議じゃないわね」
と呟いた
そして、立ち上がると窓から外を眺める
「しばらく天候は良くならなそうね」
そして二人を見て
「せっかくだから一緒に食事でもどう?さっき笑ったから急にお腹が空いてきて」
それを聞くと
「手伝いますよ」
エーリックは申し出たが、その女性は
「大丈夫よ。二人は休んでいて」
そう言って、料理の準備を始めた
料理が出てくるまでにそれなりに時間がかかった
その間に部屋を見渡すが本の数が半端ではない
読書が趣味なのだろうか
そしてしばらくして出てきたのはシチューだった
具沢山で量も多い
ニィファが一口食べると驚きの表情を浮かべる
「こんなに美味しい料理は宮廷でも食べたことがない・・・」
続けてエーリックも食べてみたが同感だった
「料理が得意なんですか?」
エーリックがそう尋ねると
「かなり自信はあるわよ」
そう返ってきた
そこでエーリックはハッとした表情になり
「そう言えば、まだ自己紹介をしてなかったですね。俺はエーリック。この女性はニィファと言います」
それを聞いた女性は少し半笑いしながら
「私の名前は・・・・・ヴェ=リェって言うの」
「え?」
二人が驚く
「ウソに決まってるでしょ」
そう言ってその女性はまた大声で笑い出した
そのあと
「私の名前はフィレオラ」
そう名乗った
そして三人でシチューを食べ終わると、フィレオラは「今日は泊っていったほうがいい」と言った
確かに、外からは雨と雷の音が半端なかった
そして二人にはその小屋の一室があてがわれた
そして、簡易的なものではあるがベッドのようなものを二つ急ごしらえで作ってもらった
エーリックはニィファをそこに寝かせると、自分も床に就いた
翌朝、目を覚ましたエーリックは、いつもより頭がすっきりしていることに驚いた
こんなにぐっすりと寝られたのは久しぶりかもしれない
あまり気の休まる日が無かったのかもしれないな
そんなことを思いながら、隣で寝ているニィファを確認すると、ベッドにはニィファの姿は無かった
慌てて周囲を確認すると、窓を開けて快晴の空と外の景色を眺めている人物が目に入った
「ニィファ?」
エーリックがそう声をかけると、彼女は振り返った
彼女は自分の足で立っていた
「おはよう!」
ニィファはそう答えた
その姿がにわかに信じられず呆然となるエーリック
「なんか、私の病気、治っちゃったみたい」
「・・・・・」
エーリックは相変わらず何も反応ができずにいた
するとニィファは
「信じられない?じゃ、これ見てみて」
そう言って踊りだす
エーリックからすれば別人なのではないかと思ってしまうほどだった
しかし、それは確かにニィファだった
エーリックはハッとすると、ベッドから飛び起きて部屋を出て行った
彼女は・・・あの女性は・・・まさか・・・・
しかし、小屋の中を全て探すが、昨夜の女性の姿は無かった
エーリックは確信していた
あの女性こそがヴェ=リェだったのだと
それからしばらく二人はヴェ=リェの帰宅を待って小屋に滞在したが、彼女が帰ってくることは無かった
その間、エーリックは小屋にあった本をいくつか手にとってみた
しかしそこに書かれていた文章は明らかに現在使われている言葉ではなかった
しかし、丸っきり別の言語というわけではない
書かれている内容をある程度は推測できるくらいの違いだった
そして、エーリックはかなり曖昧であるものの、その本に書かれている内容が魔法に関するものであるというのがなんとなくわかった
結局、何日経ってもヴェ=リェは帰ってこなかった
おそらく彼女はニィファを助けた後、姿を消したのだろう
何か理由があるのかもしれない
しかし、やはりエーリックとニィファの考えは間違いではなかった
おとぎ話のいくつかは本当にあった話だったんだ
そうエーリックは確信した
そして、もう一つの確信
それは魔法は実在するということだ
でなければニィファの一晩での回復に説明がつかない
エーリックはこの時、魔法の存在を知ってしまった
その事がこの世界の運命を大きく変えていく




