表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りの聖女と破戒の令嬢  作者: くまくま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/6

悪役の終わり、そして解放

辺境の修道院で、アッシュはカイの言葉と、彼が示すセレスティーナの医療記録の断片を突き合わせ、真実を確信し始めていた。


「もし、貴女が本当に聖女なら、なぜ私たちに真実を語らない!」


アッシュが声を荒げた瞬間、雪原に馬蹄の音が響いた。ルーク王太子が、公爵と共に、わずかな護衛を連れて到着したのだ。


ルークは馬から降りるなり、セレスティーナの前に跪いた。雪の上に膝をつく王太子の姿は、威厳よりも深い悲しみと後悔に満ちていた。


「セレスティーナ……すまない。私は、君を真の聖女だと知らず、君の愛の犠牲を、憎悪と誤解で踏みにじった」


ルークは、公爵から聞いた呪いの真実を、全てアッシュとカイの前で語った。そして、フローラがセレスティーナの功績を盗んでいたことも。


セレスティーナは、その告白に静かに涙を流した。


「殿下、もう、よろしいのです。私の役目は終わりました。これで、殿下は呪いから解放される」


しかし、ルークは首を振った。


「呪いから私を解放したのは君だが、私を真の過ちから解放したのは、君が残した『シスター・ティナ』の痕跡だ」


彼はセレスティーナの手を取った。その手は、冷たい北の風に晒され、貴族の令嬢の手とは程遠い、薬草の匂いが染み付いたものだった。


「セレスティーナ・エルヴェ。私は貴様との婚約を、『王家の呪いを封じる』という公的な理由で破棄したことを、王国全土に宣言する」


「そして、私はルーク・ヴァイスハイトとして、君の純粋な愛と犠牲に対し、改めて求婚したい」


驚くセレスティーナに、ルークは続けた。


「私の側にいてほしい。王太子妃としてではなく、『シスター・ティナ』としての君の真実の姿を、私が一生かけて守る。私が犯した過ちを、償わせてほしい」


横でその光景を見ていたアッシュは、自身の婚約者リリアナを陥れたのはフローラであったことを悟り、セレスティーナへの憎しみが、深い敬意に変わった。カイは、シスター・ティナがようやく呪いから解放され、真の救いを得たことに涙した。


セレスティーナは、生涯で初めて、与えられた役割ではなく、自分自身の心で選択する時が来たことを知った。


彼女は、ルークの手をそっと握り返し、サファイアの瞳を彼に向けた。その瞳は、もはや冷たい氷塊ではなく、雪解けの春の光を湛えていた。


「ルーク殿下。このセレスティーナ・エルヴェは、貴方の隣で、真の聖女としての役割を、今度こそ全うさせていただきます」


悪役令嬢としての物語は、ここで終わった。 しかし、シスター・ティナとしての、そしてルークの真の伴侶としての「新しい物語」が、雪が溶け始めた辺境の地で、静かに、そして力強く幕を開けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ