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19話 旅の支度

 寮の自室に戻ってから、私は持ち物を確認する。

 学生証はポケットに入るから良いとして、レポート用紙と筆記具を机の上に並べる。

 他に何かいるかな、と考えてみる。水筒はあった方がよさそう。試しに、ポーションを作る魔法と水属性の魔法を組み合わせて水の入った小瓶を作ってみる。

 コップ一杯分くらいの大きさに調整して……出来上がった。

 飲んでみると、冷たくてとても美味しかった。

 これはその場で作ってもいいかな。

 購買部でおやつをいくつか買っていこうか……とかいろいろ考えていると、


『持ち物、何を用意した?』

 と、シンから声がかかる。

『まだレポート用紙と筆記具……あと着替えくらい……。飲み水はその場で作ればいいかなと思っているわ……』

『ナイフくらいはあった方が良さそうだな。使うか分からないが』

 刃物かあ。たしかに何かに使えそう。

 とはいっても、私はハサミくらいしか持っていない。

『刃物私はハサミしか持っていないわ……』

『なら明日購買部に行くか。多分売っているだろう』

『そうね……おやつになるものも少し買っていこうかと思っているわ』

 会話はそこで途切れた。


 次の日。授業が午前中で終わり、私とオルカは購買部に向かった。

 魔道具やいろいろな道具に交じって、小さなナイフも置いてある。オルカはそれを手に取って確かめていた。

 私はお菓子類の棚を見て、クッキーの包みを手に取った。

 これはたしか、最初の世界の時に学院長先生がご馳走してくださったものだわ。

 少し遠い記憶になっているその時を思い返して、少し思いを巡らせた。


「キリエ、買うもの決まった?」

 ナイフ二つを手にしたオルカが私の様子を窺うように声をかけてくる。

「ええ。クッキーを買っていこうと思うわ」

「そうか。じゃあ一緒に会計してくるよ」

 私からクッキーを受け取ると、オルカは会計カウンターへと向かった。

 お小遣い足りるかな、と思いながら様子を見てたけれど、問題なくお会計を済ませて戻ってきた。

「なんか割引してもらった」

 はいこれ、とクッキーとナイフを手渡される。

「ありがとう。いくらだった?」

「ああ、いいよ。そんなに高くなかったし」

「そうなの?ありがとう」

 簡素なつくりのそのナイフは、革の鞘に納められている。

 少し引き抜いて確認してみると、刃の部分に魔力を高めるための文字が刻まれていた。


 ナイフとクッキーを鞄にしまうと、この後の予定をどうしようかと考える。明日は授業が休みだしな……と思いながら。

 結局、私達はそのまま学院内の図書館に向かうことにした。

 何を目当てにするでもなく、時間をつぶすために適当な本をぱらぱらと眺める。

 オルカも同じように何か面白そうな本がないか探していた。

 そういえば、と思い出し、私は鞄の中からモンスターからもらった赤い宝石を取り出してみる。

『これイレーネ先生にみせてみようかしら……』

 私の声に、オルカも鞄から青い宝石を取り出して眺める。

『そうだな。時間もあるし行ってみるか』

 お互い手にしていた本を棚に戻すと、図書館を後にした。


--------


「失礼します。イレーネ先生、いらっしゃいますか?」

 職員室の扉をノックして開け、声をかける。

 先生は自分の席で、野外実習の為の準備作業をしているみたいだった。

「はあい。どうしたの?」

 手を止めて、入り口まで出て来てくれた。

「ちょっと見ていただきたいものがあって……」

 そう言って、私は手にした赤い宝石を先生に見せる。

「あらあら。これはファイアルビーの原石ね」

「俺も似たようなの持ってて、これなんですけど」

 オルカも青い宝石を先生に見せる。

「アクアサファイアの原石ね。二つとも装飾用としてとても価値のある宝石よ。加工すれば魔道具にも使えるわ」

 でもこれをどうして?と尋ねられる。

「夏休みに故郷に帰ったんですけど、その帰りにモンスターから貰いました」

「モンスターから?そうなのね。きっとそのモンスターを助けてあげたのね」

 オルカの返答に対するイレーネ先生の言葉に、私達は顔を見合わせた。


「そうね、授業では話していなかったけれど、モンスターを助けるとたまにこうやってアイテムがもらえる事があるの。倒して奪い取ってもいいんだけどね」

 先生は言葉を続ける。

「大体は相手の要求していることが分からないから倒してしまうのだけど……。時々モンスターと意思の疎通ができる人が居てね、そういう人だとこうやって相手を傷つけずにアイテムを得ることが出来たりするわ」

 なるほど、とオルカは納得したようにまた手元の宝石に視線を移す。

「加工屋さんは町に行けばあるけれど、貴方達の実習先はカズ村だものね。今度お出かけするときに持って行くと良いわ。折角だから売ってしまうよりは加工して貰いましょ」

「そうですね。先生、ありがとうございました」

 私達は先生にお礼をして、職員室を後にした。

「どうする?これ……」

「何にするか悩むよな」

 またいつか、加工を頼むときにでも調べたり聞いてみよう。



 翌日の休みは、オルカと中庭で話しながら過ごした。

 とても穏やかな時間。食事の時もライは忙しいのか、ついてこなかった。

 久しぶりに二人きりで過ごせたことに、オルカも嬉しそうだった。

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