表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/61

18話 二学期の始まり

 学院に着いて数日後に夏休みは終わり、始業式を経て再び授業が始まった。

 二学期の授業は魔法学以外にも、モンスターの生態学や薬草学等、知識の幅を増やすような授業が増えていく。

 生態学の授業では、モンスターにも属性があって、それぞれの弱点を突いて攻撃魔法を使い分けましょうと教わる。

 勿論、危険なモンスターに遭遇した際は転移の魔法で逃げる事も一緒に教わった。

 イレーネ先生の丁寧な説明を、私はノートに丁寧にまとめていく。オルカの方をちら、と見ると、彼は適当に教科書を眺めて話を聞き流しているだけだった。

 相変わらずの彼の様子に安心半分、もっと真面目に授業を受けたら良いのに、とも思う。


 薬草学の授業も、薬草の見分け方と簡単な調合の仕方を教わる。

 魔力の小瓶を使う魔法で、手にした薬草に魔力を集中して呪文を唱えるとポーションに変わる、というものだった。

 皆それぞれに、先生から配られた薬草でポーションを作っていく。私の作ったものは他の子達よりも小瓶のサイズが小さく、より濃縮されてどろりとしている様子だった。

 味見もしてみたけれど、液体は濃厚なものの味自体はすっきりとした甘さで飲みやすかった。体が元気になる感じも心地良い。

 この魔法で作った容器は、中身がなくなると自然に消滅する。飲み終えた小瓶を口元から離すと、すうっと消えていった。

 もしかしたら、飲むよりも傷口に塗った方が良いかもしれないな、とも思った。


 

 そうして数日間色々な事を教わり、来週から野外実習をしますね、という言葉に皆が沸き立った。

 二人組で十日間、学院の外に出て周辺の探索や素材採集等、課題をこなしてレポートを提出する、というものだった。

 帰りは学院までの転移魔法が込められた呪文書が配られて、それを使って帰ってくることになるみたい。

 魔導師の卵としての初めての冒険に、皆そわそわと落ち着かない様子。

 隣の席のライも、他の仲の良い子と一緒に組んでいくようで、当然のように私はオルカと組む事になった。


「キリエ、どの辺りまで行こうか」

 二人で地図を眺めて行き先の相談をする。

「どこかの町を拠点にすればそこまで大変なことにはならなそうよね」

 地図に記されている宿のある村と町を確認していく。

「ここはどうだろう」

 とオルカが指し示したのは、遺跡が近くにあるカズ村という村だった。位置は学院を挟んでエゼル村と反対側の、少し遠いくらいにある。周辺に森や湖もあって、探索のし甲斐はありそう。

 と、地図越しにその村周辺の地域が少し揺らいでいるのが見えた。

『何かあるんだろうと思ってな』

 オルカの中身であるシンがテレパシーで続ける。

「そう、ね。ここにしてみましょうか」


 よく見ると、地図のどころどころの地点でそういった揺らぎが発生しているのが分かった。

 その中でカズ村は一番近いというほどではないけれど、比較的近くにある揺らぎだった。

 ついでにエゼル村と王都も確認してみるけれど、そこには揺らぎは生じていなかった。


 カズ村への経路を確認し、私達は実習の申請用紙に必要事項を書き込んでいく。

 行き先、行きの道の移動手段、宿泊先はあるか等、項目を埋めていき、イレーネ先生に提出をする。

「キリエさんとオルカさんはカズ村ね。近くのカズノ遺跡は最近ちょっと物騒だって聞くから、出来るだけ近寄らないようにね」

 出来るだけ。私達の実力をある程度知っているイレーネ先生だからこそ出る言葉だった。

 周辺地域の情報も、学院はきちんと把握しているみたい。

「はい。気を付けます」

 オルカの言葉に、先生は少しだけ困ったような顔をしたけれど、すぐにまた笑顔になる。

「わかりました。では、三日後から始めるので準備を怠らないようにね」


 その日の夕方、私達は食堂で食事を摂っていた。私とオルカが対面に座って、私の横にはライがいる。初めて食堂に来た時と同じ構図。

 オルカは相変わらず毎日玉子料理で、私はお肉料理。ライも今日はお肉料理だった。

「野外実習、キリエ達はどこ行くの?」

 食べながら、横のライが質問してくる。

「カズ村よ。西の方の」

「なるほどなるほど。私はエゼル村に行くよー」

 オルカの食べる手が止まる。顔を上げて、私の方を見た。

 自分達の故郷だという事は言うな、ということだろう。

 私達が言わなかったとしても、学院の制服を着ていくのだから村の人達から私達の話を聞かされるだろうけれど。

「そうなのね」

 私はそれだけ言うと、食事に戻った。オルカも何事もなかったかのように食事を再開する。

 ライはにこにことしながら食事を続けていた。

 オルカは今もまだライを嫌っているようで、時々こういう、彼女に対して少しだけ不自然に見える行動をしてしまう。

 けれど、ライはもうそんな事を気にすることもなく、ただ私の前ではにこにことしていた。

 よく一緒に食事が出来るな、と思う。私がいるからなのだろうけれど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ