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走るのが好きなのでAGIに全振りしました  作者: 藍色黄色


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第66話


 バレーボールに興じた後はバーでトロピカルジュースを注文した。


 リクライニングチェアに腰かけてストローに口をつけた。


 マンゴーやパイナップルの風味を堪能してまたプールに入った。泳ぎを交えた水中鬼ごっこで一番を勝ち取り、温かいジャグジープールの気泡にひたってからプールデッキを後にした。

 

 たくさん運動した後はスパ・ウェルネス施設に立ち寄った。専門スタッフから施術を受けて、羽毛のように軽くなった体でマンションを出た。


「楽しかったですね」


 宮嵜さんのあどけない笑みが視界内を華やがせる。


 宮嵜さんの目元は度の入っていない眼鏡で飾られている。


 揚羽のプレゼントらしい。美容院で前髪を切る際に恥ずかしがったから買ってあげたのだとか。


「宮嵜さん、前髪のない世界はどう?」

「世界って大げさじゃない?」

「そんなことないですよ。まるで世界が変わったみたいです。空は明るいし人の表情がよく見えます。私、コミュニケーションを必要以上に恐れていたんだと分かりました。反省ですね」


 眼鏡に飾られた顔に苦笑いが浮かぶ。


 カフェで顔を合わせた時に見られた陰気は欠片もない。私がアイセを始めて変われたように、宮嵜さんも今日新しい一歩を踏み出せたんだ。


 そのことが自分のことのようにうれしい。


「もう日が沈むね」

「そうですね。終わっちゃいます」

「そこの二人しんみりしない。夏休みはまだ長いんだよ? 過ぎ去るのも早いけど」

「最後のいる?」

「いるでしょ。すぐ終わっちゃうからこそ一日一日を大事にしないと」

「それもそっか。明日から何しようかな」

「勉強会なんてどうですか? またみんなで集まって分からないところを教え合うんです」

「えーせっかくみんなで集まるのに勉強するのー?」


 揚羽が嫌そうに目を細める。


 宮嵜さんがバッと頭を下げた。


「ごめんなさい! 私勘違いして変なこと言っちゃいました!」


 流れるような謝罪にぽかんとする。


 横目を振ると揚羽が目をぱちくりさせている。


 プール遊びで距離が縮まったとはいえ、さすがにまだ距離があるみたいだ。


 私は意地悪く口の端を上げる。


「あー揚羽が謝らせたー」

「私のせいっ!?」


 今度は普段通りを心がけて笑う。


 笑っていい場面だと悟ったらしい。宮嵜さんもひかえめに笑った。

 

「ほらー日向のせいで宮嵜さんに笑われちゃったじゃん」

「揚羽が面白いのが悪いんだよ。ねー?」

「はい」

「二人とも何でそんなに仲良くなってるの。私美容院連れて行ったり水着選んであげたのにこれだよ?」

「アイセの方で交流があるからかな」

「へえ、二人ともゼルニーオと戦う前から知り合いだったんだ」

「うん。宮嵜さんのお店でスリングショットの弾を買ってるの。安全に状態異常を付与できて便利なんだ」

「状態異常って言えば、もうすぐ実装されるレイドボスには効くんでしょうか」

「レイドボス?」

「大人数のプレイヤーで挑むことを前提に作られたボスのことだよ」

「ってことはゼルニーオより強いの?」

「たぶんね」


 初挑戦で流星群を受けた時のことを思い返す。


 あれより強いってどんなエネミーなんだろう。何だかわくわくしてくる。

 

「状態異常の効き目が薄いなら威力重視の弾を買い集めた方がいいかな?」

「それは何とも言えないね。他のゲームだと一部状態異常が効くレイドボスもいるから。むしろ状態異常をかけないと弱点が露出しないなんてケースもあるからなぁ」

「奥が深いんだね」


 何にせよ現状は想像しかできない。二人とまたねを交わして一人靴裏を浮かせる。


 自宅への道のりをたどりつつ、やるべきことを頭の中に思い描く。


 

 

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