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走るのが好きなのでAGIに全振りしました  作者: 藍色黄色


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第62話


「あーあ、失敗しちゃった」

 

 ため息混じりのつぶやきが外気に溶ける。


「知らない間に持ってたなら仕方ないって」

「そうですよ。ヒナタさんのせいじゃありませんって」

「デスねー。ヒナタのおかげですっごい刀もらえマシたし、みんなハッピー!」


 最後だけ何か違う気がするけど、私をなぐさめようとしてくれたのはうれしい。


「ゼルニーオはどこ行ったんだろうね」

「それは分からないけど、慌てなくてもいつか出てくるでしょ。それよりもヒナタ、あの角って今どうなってるの?」

「角ってゼルニーオの?」

「そ」


 私は宙を引っかいてコンソールを出した。アイテムの名前を人差し指でタップする。


 実体化した角はずしりと重い。心なしか王座の間で落とす前よりも色合いが悪い。


「邪気は抜けていますね」


 エーファさんが寄ってきた。


「もう無害ってこと?」

「はい。今はただの角ですね」


 じゃあ持ってても問題はないか。


 ただの記念品じゃ味気ない。何か用途があるといいんだけど。


「でも不気味ですよね。あんなの見ちゃうと」

「そうだね。塩とか撒いた方がいいかな」

「でしたらいい物がありますよ。ちょっと待っててください」


 エーファさんがどこへともなく飛び立った。


「ところでみんなはこれからどうするデス?」

「私はもう少し遊ぶつもり」

「そうですね。精霊王からもらった装備の性能を確かめたいですし」

「私は寝る。明日仕事だし」

「そうじゃなくて、みんなの夏休みの予定を聞きたかったデスよ」

「あーそっちか。そういえばもう少しで夏季休暇だもんね」

「そうデス。もしよかったらみんなでプールに行きませンカ?」

「いいね。どこのプール?」

「私のマンションにプールがあるんデス。そこ貸し切りにしてパーッと遊びまショウ」

 

 貸し切りか。いい響きだなぁ。


 そう思ったのは私だけじゃなかったようで、満場一致でプールで遊ぶ予定が決まった。

 

「お待たせしました」


 白いフクロウがパタパタと戻ってきた。かぎ爪には霊験あらたかそうな縄が握られている。


「それは何?」

「魔除けの縄です。本来霊を近づけさせないための代物ですが、対象が物に宿っている状態なら外に出れないように封印できます」

「また何か宿ったらそのまま封印するってことだね。ありがとう、大切に使わせてもらうよ」


 縄を受け取ってポーチに収める。


 また巨鳥に乗るのかと思ったけど、広場にある門を使えば人間界に戻れるらしい。


 私たちは広場の門を介して外に出た。


 これまでとは違う場所から出たのにアスチック山の頂上にいた。精霊界から出る時は毎回同じ場所に出るようだ。


 ログアウトするモンシロを見送って早速宝物に目を通す。




『宝刃シルヴェール』

グランブルク城の宝物庫で眠っていた精霊武器。特定の精霊と契約することで真価を発揮する。




 スカーフと同じレア度specialだ。


 精霊と契約って何だろう。どこかにそんなイベントがあるのかな。


 それに武器の名前が赤い。何だろうこれ。


「武器の名前が赤いんだけど理由知ってる?」

「装備制限に引っかかってるんですよ」

「装備制限?」

「装備によっては、一定以上のステータスか特殊な条件を満たしてないと身に着けられないんです」

「私がもらった刀も真っ赤デスね。アップデートまでお預けになりそうデス」


 私は武器の説明に目を通して装備制限を確認する。


 レベル制限だけじゃない。説明文いわく精霊との契約が必要らしい。しばらくは今の武器に頼ることになりそうだ。


 少しほっとした。


 今の武器は作ってまだ間もない。早々お役御免になったらどうしようかと思った。


「試し斬りできないのはつまらないデスねー。今日はログアウトしマス」

「私もそうします。昨日遅くまで勉強したから眠くて」

「そっか。じゃあ私も少ししたらログアウトしようかな」


 二人と「また明日」を交わしてコンソールを展開する。

 

 ハウジングスペースに飛んだ。見慣れない景観を前に目を見張る。


 走路トラックができている。中途半端だけど、日光を吸ったような優しいオレンジ色の地面は見間違いようがない。


「お、久しぶりだねヒナタ」


 二足歩行の大きなモグラが歩み寄る。


「久しぶりモグちゃん。どうしたのあの走路」

「この前どんな物を作りたいか指示してたじゃん。スコやプッツと協力して試しに作ってみたんだ」

「そうなんだ。すごいよあれ、本当に走路みたい!」

「だから走路のつもりで作ったんだってば。言われた通り勝手に資材とか道具作ったけどよかったの?」

「もちろん。これからもじゃんじゃんやっちゃっていいよ」

「じゃあここに新しい助っ人呼んでいい? スコとプッツの尊敬するモグラがたくさん技術持ってるらしくてさ。色々教えてもらいたいんだ」

「それってオヤビン?」


 くりっとした目がまぶたで見え隠れする。


「ヒナタ知ってるんだ」

「知り合いだからね。分かった、オヤビンには私から招待コードを送っておくよ」

「ありがとう。じゃぼくらは作業に戻るよ」

「うん。がんばって」


 私はエールを送ってコンソールを開いた。ラティカの潟に転移して湿気のある空気を吸う。


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