第52話
サムライさんと街に戻った。
道中聞いた話によると、武器には技の性能を変える物があるらしい。風爪雷牙のアビリティでサイクロンエッジの挙動が変化したに違いない。
ラティカのカフェに立ち寄ってサムライさんと同じテーブルをはさんだ。
「それにしてもあのエネミー強かったデスねー。改造生物は何度か相手しまシタけど、あの個体はまるで別物でシタ」
「そうだね。私もやられるんじゃないかってハラハラしたよ」
私は多くのエネミーと採取アイテムを抱え込んでいた。リスポーンして全部ロストしていたら泣くに泣けない。
「ところであのエネミーは02でシタね。どこかに01がいるんでショウか」
「01なら私が討伐したよ」
「どこで遭遇したんデスか?」
「大きなカエルのボスエネミーが出るところ。といっても普通に探しただけじゃ遭遇できないかもしれないけど」
「それはどうしてデスか?」
「私の場合はクエストを受注してから遭遇したからね」
「クエストデスか。それって……おっと、聞くのはマナー違反デシた」
「教えてあげよっか?」
サムライさんがかぶりを振る。
「いいデスいいデス。サムライたる者、そういうマナー違反はしないのデス」
でも表情は正直だ。すごく聞きたそうに見える。
「無理しなくてもいいよ?」
「無理、してないデス。侍たるもの、常にクール!」
NPCが二つのグラスでテーブルの上を飾った。サムライさんがグラスを握って深緑色の液体を飲み下す。
苦かったのか、日本人離れした顔立ちがうへぇと舌を出した。
「舌が緑色になってるね」
「ほんと? 私侍っぽいデス?」
「侍は抹茶飲んでうへぇってならないと思う」
というか舌が緑色でサムライってどういうことだろう。
サムライさんがビンから砂糖を取り出した。グラス内に三個ほど落として深緑色の液面をぽとぽと鳴らす。
もはやそれは抹茶ジュースだ。苦いまま飲むから意味があるのになぁ。
そう思いながらジュースを口に含んだ。柑橘系のさわやかな香りが鼻腔内に広がる。
「抹茶おいしいデスね」
「風味だけでもおいしいよね」
本当は和菓子と一緒に楽しんでほしかった。リアルで会う機会があったら飲み方の作法を教えてあげようかな。
サムライさんのリアルと会うことなんて多分ない。
でもミザリのケースもある。あり得る未来を想像するくらいはしてもいいよね。




