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走るのが好きなのでAGIに全振りしました  作者: 藍色黄色


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第46話

 

 私はミザリと別れて精霊界に戻った。


 あのトラにはライガという名前があった。エーファさんは彼とお友達だったらしい。同胞を捕縛して改造する研究者をこらしめるために精霊界を出て、そのまま行方不明になった。


 次に顔を合わせた時には、ライガは改造生物と化していた。


 何度呼びかけても正気に戻ることはなかったそうだ。エーファさんからは、友人を狂気から解放してくれてありがとうとお礼を告げられた。


 私はしんみりした心もちでラティカに戻った。商業施設が立ち並ぶエリアをふらついて、何となく店内に踏み入った。


 そこは武器屋だった。見知った顔が微笑を浮かべる。


「いらっしゃいヒナタちゃん。どうしたの? 元気ないみたいだけど」

「いえ、何でもありません」

「そう? てっきり改造生物ミュータントにやられたのかと思っちゃった」

「え」


 私は目をぱちくりさせる。


「バーバラさんは改造生物を知ってるんですか?」

「ええ。と言ってもついさっき聞いたんだけどね。何でもすごく強いエネミーがあっちこっちでわいて、やられちゃったプレイヤーが続出してるとか」

「そうでしたか」


 AGI特化の私でもギリギリ回避できるくらいだ。パーティを組んで動くならともかく、生半可なプレイヤーは反応もできなかったに違いない。


「不思議よね。アプデ当日じゃなくて今日になってから発見されるなんて。何か出現のトリガーでもあったのかな」


 思い至る節はあるけど不確かな情報だ。確定するまでは伏せておこう。


「ごめんなさい話がそれたわね。今日はどうしたの?」

「いくつか素材を入手したので、武器更新できないかなと思いまして」

「アップデートした週の日曜日だものね。どれ、見せてごらん」


 私はダガーとスリングショットを手渡す。


 アップデートがあるまで武器の強化先には【?】が表示されていた。


 装備を強化するには、使用者か鍛冶屋が強化のトリガーとなるアイテムを入手する必要がある。


 私が得た素材の中にトリガーアイテムが含まれてるといいな。


「お、両方揃ってるじゃん」

「両方?」

「ダガーとスリングショットの両方ってことだよ」

「本当ですか?」

「本当よ。ほら」


 バーバラさんの前に長方形のホログラムが現出した。細い人差し指が宙をかいてウィンドウが反転する。


【?】だったアイコンが新しい武器の画像に変わっている。強化可能になった証明だ。


「何がトリガーになったんでしょう」

「こういうのって大抵鉱石や植物以外の目新しいアイテムがトリガーになるの。たぶんこれとこれじゃないかな」


 バーバラさんが人差し指を伸ばす。


 指が指し示した先には『頑強なほお袋』。そして『改造生物の雷牙』の文字があった。


「これが改造生物の素材なのね。取りあつかうのは初めてだからわくわくするわ。ここで強化していくのよね?」

「はい。お願いします」


 恒例の鍛冶見学。奥の部屋に足を運んで得物の形状変化を見守る。


 金床の上で紅色の光が色あせた。バーバラさんが武器を持ち上げて歩み寄る。


「今回の武器はかなり強いわね。見慣れない素材を使ってるからかしら。どうぞ」


 目の前にウィンドウが浮かび上がる。


『マシンガンスリンガー*』

AGI +23


『風爪雷牙*』

攻撃力 +63

AGI +43

アビリティ【嵐刃】





 バシュ・ネ・モフィラのおしゃれな様相から一転、マシンガンスリンガーには弾倉じみた物が搭載されている。見た目は悪いけどコンパクトなサイズだし、籠手で隠せば見栄えは変わらなそうだ。


 そしてダガーの方。ウィンドさんからもらった宝石は左の刃に、右の得物には稲妻を思わせる青白い紋様が広がっている。亡きライガさんに無念を晴らしてくれと言われているみたいで感慨深い。


「待っててね。必ずかたきは取るから」


 自然とそんな言葉が口を突いていた。


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