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走るのが好きなのでAGIに全振りしました  作者: 藍色黄色


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第44話


 精霊界を出て下山した。


 しゃべれなくなったエーファさんとおもむいたのは湿原だ。


 モンシロと共闘した、キノコの足場が印象的なエリア。


 すでに討伐対象が待ち受けているかと思ったけど、あっちこっちを見渡しても改造生物ミュータントの姿はなかった。


 改造生物ミュータントでも生物。他の生き物を捕食して生きているらしい。


 獲物を減らせば出てくるんじゃないか。そう思って視界内に入ったエネミーを適当に狩る。


 十分ほど湿原を駆け回ったものの、特に何も起こらない。


 何か特殊な条件でもあるんだろうか。


「エーファさん。改造生物ミュータントを出すのに特殊な条件とかあるの?」


 白いフクロウが小首をかしげる。

 

 かわいい。


 でも言葉は返ってこない。精霊界を出るとしゃべれなくなるのは本当のようだ。


 首をかしげたってことは、エーファさんにも分からないとみて間違いない。


 困ったな。


「ヒナタさーん!」


 振り向くと一人の少女。前髪で目元が隠れている。


 私のフレンドだ。


「こんにちはミザリ。ここには素材集めに来たの?」

「はい。せっかくの日曜日なので、新エリアにあるアイテムを根こそぎ取り尽くそうかと思いまして」

 

 ミザリが大きなふくらみの前で両手の指を丸める。


 今日も気合十分といった様子だ。


「あ、フクロウさんだ。かわいい」


 ミザリが私の肩にとまっているエーファさんをのぞき込む。

 

 白いフクロウがホーと鳴く。


 ただのフクロウのようだ。


「お店の調子はどう? 素材屋と交渉するって話だったよね」

「うまくいきました。将来性をかわれてお安くしてくれるみたいです」

「よかったね。ミザリの経営方針が評価されたんだ」

「そんなことないですよ。でも、これでさらに商品をお安くできますね」

「価格を下げたらお店のもうけが減っちゃうよ。お客さんは今の価格でも満足してるんでしょう? 利益が出ないとお店は維持できないんだし、急いで決めることじゃないと思うな」


 この前スリングショットが注目されたと聞いた。専用の弾を売るプレイヤーも現在進行形で増えてるはずだ。


 いずれ価格競争が始まる。相場は勝手に下がる。しばらくはお店側に厳しい状況が続くだろう。


 ミザリには長くお店を続けてほしい。儲けを得るチャンスは大事にしてほしい。


「ホーホー」


 エーファさんがぱたぱたと翼を伸び縮みさせる。


 どうしたんだろう。


「霧が深くなってきましたね」


 ミザリに指摘されて周囲を見渡す。


 視界が悪くなっている。遠くまで見渡せた景観が白い濁りによってかすんでいる。

 

 バヂッと音が鳴り響いた。霧の中にヌッとシルエットが浮かび上がる。


 現れたのは四つの足をたずさえた銀色の獣。


 知性を感じさせた精霊界の長老とは違う。大きな牙をむき出しにしたそれには猛獣のごとき荒々しさしかない。


 逆立った体毛の周りで青白い電気がほとばしる。


 見るからに普通の獣じゃない。この世ならざる者を前にしたような忌避感で鳥肌が立つ。


「何ですかこのエネミー。すごく嫌な感じがします」

改造生物ミュータントだと思う」

改造生物ミュータント?」


 疑問形。ミザリはまだ知らないのかな。


 改造生物ミュータントはクエストを受注しないと出てこないのかもしれない。

 

「ミザリ、あれはたぶん私が受注したクエストの討伐対象だと思う。巻き込む形になっちゃうけど、よかったら一緒に戦ってくれないかな?」

愚問ぐもんですね」


 やっぱり駄目か。すごく怖いもんなぁあのエネミー。


 それにこれは私のクエストだ。協力するメリットがないし、仕方ないか。


「何水くさいこと言ってるんですか。ヒナタさんの頼みならバリバリ戦っちゃいますよ私!」


 ミザリが弓を取り出して構えた。


 あ、そっちか。


 ほっとして胸の奥がじんわりとした。


「ありがとうミザリ」


 私も武器を構える。


 銀色のトラが腰を落とした。頭上に『ME01 Lightning』の文字を冠して荒々しく咆哮ほうこうする。

 

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