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走るのが好きなのでAGIに全振りしました  作者: 藍色黄色


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第43話


 厄災って?


 その問いかけから事情説明が始まった。


 かつてラティカには魔法の研究者がいたらしい。


 天才とうたわれた彼は、ある日を境に動物を対象にした実験を繰り返すようになった。やがては危ない研究にも手を出して学会から追放されたという。


 しかしその研究者はあきらめなかった。秘密裏に研究施設を立ち上げて人知れず実験を続けた。


 実験体となった動物の大半は命を落とした。


 生き残った個体は狂暴化して生態系をくずした。大型の化け物にも施術が施されて、ラティカ周辺の地域は不安定になっている。


 エーファさんたち精霊は、その化け物を改造生物ミュータントと呼んでいるようだ。


「つまり、私にその研究者を捕まえてほしいってこと?」

「いえ、それは他の人間が行方を捜索しています。あなたに頼みたいのは改造生物ミュータントの対処です」

「そっちの方は手をつけてないの?」

「はい。並行して対処を進めてはいるようですが、残念ながら処理は追いついていません」

「そこで私の出番ってことね」

「そういうことです。私たちはラティカを守りたい。危ない生物を相手してもらうことになりますが、我々に力を貸してもらえないでしょうか」

「いいよ。一緒にラティカを守ろう」

「ありがとう心優しき少女。研究生物の位置は把握しています。準備ができたら声をかけてください」

「あなたも戦うの?」

「はい。人間だけに戦わせるわけにはいきませんから」


 フクロウことエーファさんもお助けNPCのようだ。


 オヤビンは強かった。エーファさんの実力はいかほどだろう。


「分かった。出発の準備はできてるけど、せっかくだしこの辺りを少し歩いていい?」

「構いませんよ。ここでしか得られない物もあります。万全の準備を整えるといいでしょう」


 そんなこと言われたら期待しちゃうじゃない。


 決めた。絶対何か採取する。


「よかったら案内してくれないかな?」

「もちろんです」


 エーファさんが羽ばたいて私の右方にとまる。

 

 私は橋を渡り切って奥へと足を進める。


 自然豊かな印象に違わず、進んだ先にも木々や川が流れている。


 お店の類は見られない。エーファさんいわく、獣や精霊は必要な時に必要な分だけ木の実を取って生きているらしい。


 私も許可を得て木の実や植物を採取させてもらった。


 得られたアイテムは外で採取する物よりも良質な物ばかりだ。中にはステータス上昇系もある。ハウジングスペースに埋めたら効率よく入手できるかな。


「ところで、先程からあなたのポーチに弱い邪気を感じます。何を入れているのですか?」

「邪気?」


 小首をかしげて、思い至る節が脳裏に浮かぶ。


「もしかしてこれかな?」


 エーファさんに玉を差し出す。


 実体化させたのは変化の妖玉。水晶のようなそれの中に小さな黒いもやがうごめいている。

 

「それです。見たところ邪気に侵されているようですね」

「そうなの。エーファさんは邪気を祓う方法知らない?」

「確実性はありませんが、長老なら何かを知っているかもしれません」

「私でも会える?」

「それはさすがにおうかがいを立てないと」

「その必要はない」


 しわがれた、されど威厳のある声色が上がった。


 エーファさんがバッと振り向く。


 四足歩行の生物が立っていた。


 枝別れして伸びた角はシカを思わせるものの、深い知性を宿した瞳が獣特有の雰囲気を薄れさせる。


「長老、どうしてここに」

「人間さんの気配を感じたのでな。あいさつしておこうと思ったのだ」


 落ち着きのある視線が私を見た。


「人間さん、話は聞かせてもらった。その宝玉の穢れを祓いたいのじゃな」

「はい」

「ならばその玉を私に預けてみぬか? 精霊界の空気は澄んでおる。その程度の邪気なら時に委ねれば抜けるであろう」

 

 フィックの法則みたいだ。邪気って濃度の高い液体みたいな性質があるんだなぁ。


「それじゃお願いします」


 変化の妖玉を差し出す。


 玉が宙に浮き上がった。手の平を離れて長老のとなりに移動する。


「確かにあずかった。人間さん、エーファのことは頼みましたぞ」

「はい。任せてください」

 

 長老が背を向けて歩き去る。


 私は元来た道を戻って精霊界の外を目指す。

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― 新着の感想 ―
同じ内容を2回繰り返してませんか? あといつも楽しく読ませていただいてます。 こんなに面白い作品を作ってくださりありがとうございます。
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