第4話
街に戻って、所持品が増えていることに気づいた。
思い当たる節はあの三人。外部サイトで調べてみると、増えた分のアイテムはあの三人が所持していた物だった。
PKがプレイヤーキルを意味する言葉だってことも知った。
プレイヤーがプレイヤーを襲って所持品を奪う。所持品を横取りできるから愛好家がいるみたいだ。
おかげで罪悪感を感じずにすむ。
むしろざまあみろとすら思う。私が走り回ってかき集めたアイテムを強奪しようとしたんだ。奪われる悲しみを知って反省してほしい。
次に自分のステータスを確認した。
ヒナタ
Lv1
HP 20/20
MP 10/10
STR 11
VIT 13
AGI 115
DEX 12
INT 11
MDF 11
装備
武器 【ボーンナイフ】
頭 【なし】
胴 【なし】
腰 【なし】
足 【なし】
装身具 【なし】
スキル
慣性Lv1
ボーナスポイントを振っただけあってAGIの値が一番高い。
プレイヤーキラーの言動を見るにSTRの値が足りていない。他のステータスも初期値のままじゃ駄目なのかも。
考えても仕方ない。
気を取り直してランニングにしゃれ込んだ。見かけた採取ポイントでアイテムがリポップしていることに気づいた。
採取アイテムは一定時間が経過するとリポップするらしい。これ幸いと採集に努めた。
またプレイヤーキラーと遭遇した。例の三人組じゃないけど、武器を手に襲いかかってきた。
こんなこともあろうかと、あらかじめ投擲用の石を用意しておいた。初期装備の武器もあるけど、まだ斬りつける勇気がない。
何よりSTRがないから大したダメージが期待できない。そんな私にとって投石は貴重なダメージソースだ。
それにしても気になる。
プレイヤーキラーは複数人で行動するほど報酬が少なくなる。そのデメリットを踏まえても、複数人で一人を相手した方が効率的なのは分かる。
でも全く同じ場所でプレイヤーキラーと遭遇したのは不自然だ。
私は一人を残してキルした後で問い詰めた。
最後の一人いわく、彼らはアイテム採取に来たプレイヤーを待ち構えていたらしい。
採取ポイントはまばらで全部回ると時間がかかる。そこで先人たちは効率よく回れるルートを開拓した。
プレイヤーキラーは最後の採集ポイントで待ち構えて、アイテムを集め終えたプレイヤーから巻き上げる。そういうプランを立てていた。
自分の足で集めるのが面倒だから。その考えが気にくわなかったから、最後の一人も容赦なくキルしてあげた。
プレイヤーキラーとの交戦を繰り返して【慣性】についても分かってきた。
私の身体能力には直接関わらない。ジャンプ力が上がるわけでもない。
その一方で慣性が絡む数値に補正が掛かる。投石によるダメージの上昇がそのいい例だ。
本来はSTRでしか上下しないはずのダメージが上がった。試しに助走の勢いをつけてひざ蹴りしたらプレイヤーキラーが吹っ飛んだ。
何がスキル修得のトリガーになったかは分からないけど、慣性のスキルはAGI重視のアバターと相性がいい。間違ってポイントを振ったプレイヤーへの救済措置かもしれない。
一通りの採集を終えて街に戻った。
プレイヤーキラーのおかげでアイテムや装備が集まったけど、ずっとやっていると恨まれそうで怖い。
何か都合のいい物はないかと思ってショップに立ち寄った。店舗の内装を飾る防具や帽子を眺めて、ちょうど良さそうな仮面を見つけた。
早速購入して外を走った。これで素顔を見られる心配はない。
たっぷりと戦利品を得てこの日はログアウトした。
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