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走るのが好きなのでAGIに全振りしました  作者: 藍色黄色


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第38話


 水の上を移動した先には砂浜が広がっていた。


 白い砂浜はあの入り江を想起させる。あちこちで桟橋がかけられていて開発された痕跡がうかがえる。


 一見するとちょっとしたアトラクションみたいだ。


「ここ採取ポイントたくさんあるね」

「そうなんだよ。最新の装備を作るのに必要だから、しばらくはここに通うことになると思う」

「じゃあ最短ルート開拓しなきゃだね。せっかくだから競争しようよ」


 モンシロが目をぱちくりさせる。


「私が言うのもなんだけど勝てるの? 私のキャラと相当レベル差あるよ」

「ふふーん、私足の速さには自信あるんだよね」

「AGI全振りビルドだもんね。いいよ、じゃあ前方に見える山の頂上に立った方が勝ちでどう?」

「それもいいけど、せっかく採取ポイントがあるんだし採集しながら競争したいな」

「じゃあポイント制にしたら? 十分の間に、入手した採取アイテムとエネミーの素材の数を競うの。二ポイント取得した方が勝ちってことで」

「面白いね。それ採用」


 タイマーをセットする。


 ピーッと電子音が鳴り響いて地面を蹴った。


「はっや!」


 驚きの声を後方に残して足を動かす。


 進む先は二つに枝分かれしている。私は右の道を選んで突き進む。

 

 先に山の頂上を踏めば一ポイントは入る。


 でも競争の勝利条件は二ポイントを取ることだ。モンシロがアイテム採取とエネミーの討伐に励んだら負ける。


 かといって採集に熱中するのも問題だ。


 制限時間は十分。両方数をそろえつつ頂上まで足を運ぶのは難易度が高い。


 私の長所は足の速さ。勝つなら片方に注力した方がいい。


 問題はどちらに絞るかだけど。


 後方で爆音が鳴り響く。


 振り向くとエネミーに雷が降り注いでいた。モンシロがロッドをかかげている辺り魔法と見て間違いない。


 攻撃は広範囲。エネミーの討伐数では勝ち目がなさそうだ。


 決めた。


 アイテムを採取しつつ山の頂上を目指す。これで行こう。


 エネミーを無視して桟橋の上を駆ける。


 前方で桟橋が途切れている。


 外れルートを引いたかと思ったものの、よく見ると桟橋の下に大きな葉っぱが浮いている。


 乗る? 乗ってみる?


 乗っちゃえ!


「えいっ!」


 思い切って地面を蹴った。


 飛び乗った葉っぱが沈んだのは一瞬。慣性のままに葉っぱが水面の上を滑る。


「あはっ、すごーい!」


 スノーボードとはまた違った爽快感だ。向かってくる風が気持ちいい。


 あっ、前方に採取ポイント発見。


 ポーチからピッケルを取り出して振りかぶる。


 なつかしい。最後にバットを振ったのは小学生のクラブ以来かな。


 体はまだ覚えてる。左足を軽く上げて腰をひねる。


「ふっ!」


 カァァァン! と小気味いい音が鳴り響いた。


 コーストメタル、シャール鉱石。目にしたこともない名前のアイテムが連なる。


 何に使うんだろう。期待に胸を高鳴らせるのは採取の醍醐味だいごみだよね。

 

 新たな桟橋に飛び移った。その勢いに身を任せて次のポイントを探す。


 さっきのは少し面白かった。再現できるかは分からないけど、いつかハウジングスペースに似たものを設けてみようかな。


 引き続き採取と移動に努める。


 モンシロも私がAGI特化なのを知っている。私の勝ち筋を理解しているはずだ。


 移動に使える魔法があると先を越される可能性もある。そろそろ山を目指すべきか。

 

 山に靴先を向けた。散在するエネミーの間をかいくぐって山の頂上を目指す。


 清々しい景観を後方へ流す途中で、うごめく影が視界の隅をかすめる。


 離れた島の上で怪鳥がフクロウを追い回していた。黒い巨鳥が神秘的な白い小鳥を追い回すさまは、闇が光を侵食しようとしているかのように映る。


 あのエネミーと戦っていたら制限時間がすぎる。


 でも放っておいたらフクロウが食べられてしまうかもしれない。


 迷った末にきびすを返した。

 

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