第36話
クエストを終えてラティカに戻った。
早速色んなショップに立ち寄った。武器屋、防具屋、他にもNPCショップを回って変化の妖玉の使い道を探した。
該当する使い道は見つからなかった。攻略サイトを眺めても妖玉の使い道に関しての記述はない。アップデートが行われたばかりだし、次のアップデートで追加されるのもしれない。
ひとまず妖玉の使い道は保留にした。ミザリのお店でNPC店員からクナイを購入し、久しぶりにハウジングスペースに顔を出す。
そこには雇ったモグちゃんの他に二つの人影があった。
「よっ、また会ったな人間」
「えっと、どうしてここにいるの?」
スコとプッツ。一緒にラティカの秘宝を探した二人組が、何故か私のハウジングスペースにいる。
「入り江で拾った宝の中に指輪があってな。使ってみたらここに飛ばされたんだ」
「そんな偶然あるんだね」
「ほんとだよなー。これも何かの縁だ、俺たちの話を聞いてくれ」
スコが自分たちの現状について語り出した。
スコたちは大きなモグラに宝を自慢しに行ったらしい。その過程で口を滑らせて、街の人に許可を得ず穴掘りしたことを叱られた。
坑道を埋めようにも資材がない。スコたちは実質借金を背負わされて、資材の購入に必要なお金をせっせと稼いでいるらしい。せっかくお宝を見つけたのに世知辛い話だ。
「そこで相談なんだが、俺たちを雇う気はないか?」
「雇うって?」
「先任から聞いたんだ。何でもここで事業を起こしてるみたいじゃないか。俺たちもそれにかませてほしい」
「事業じゃないけどね。モグちゃんには食料と引き換えに資材の管理を任せてるだけだし」
「頼むよぉ。ここ以外に、人の通貨を稼げる場所に心当たりがないんだ。一日五百マニーでもいいから」
五百マニー自体はデイリーミッションをこなせば簡単に稼げる。
断る理由はないけど、後でブラック企業なんて言われても困るなぁ。
「本当に五百マニーでいいの?」
「ああ。十分だ」
「分かったよ、一日五百マニーで雇ってあげる」
「恩に着るぞ人間」
「人間じゃない。これから雇い雇われになるんだし、私のことはヒナタって呼んでよ」
「分かったヒナタ。これからよろしくな」
「スコ、ここはよろしくお願いしますの方がいいのでは?」
「お、そうだな。よろしくお願いしますヒナタさん」
「ヒナタでいいよ。さんづけされるとむずがゆいし」
「そうはいかないっすよ。親分から上下関係は絶対って教わりましたから」
「うーん、なら仕方ないか」
尊敬されてるんだなぁ、あの大きなモグラ。
いきなり襲われたから私の中じゃ印象悪いけど。
「それで、俺たちは何をすりゃいいんですか?」
「今のところは走路を作ろうと思ってるけど、まだ資材が足りてないんだよね。ひとまずは採取ポイントからアイテムを集めてくれないかな。詳しいことはモグちゃんから聞いて」
「了解しやした」
スコとプッツが散開する。
大まかにしか決めてなかったけど、こうなると具体的なトラックの図を考えなきゃいけない。
レーンを設けるだけなら簡単だ。いくつかレーンを並べてトラックを描けばいい。
でも将来的にはお友達を招くつもりでいる。いくつレーンを並べればいいんだろう。あふれて走れない人がいたらかわいそうだ。
考えても分からない。実物を参考にして八レーンでいいか。間隔も現実準拠でいいとして、トラックを作るために必要な鉱石はどれくらいだろう。
考えることが山積みだ。この日はトラック作成に必要な素材を調べてログアウトした。




