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走るのが好きなのでAGIに全振りしました  作者: 藍色黄色


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第35話


 広い場所に出てしまえばこっちのものだ。


 着地するなりきびすを返した。からめとろうとしてくる触手を避けてタコに迫る。


 触手がうねった。飛びのいた箇所に触手が突き刺さる。


 近づけない。


 触手の数は八本。一斉に向かってこられたら距離を詰めるどころじゃない。


 スリングショットと風の刃で牽制していると、視界の隅にモグラたちが映った。

 

「加勢するぞ人間」

「宝は俺たちのもんだああああっ!」


 モグラたちが駆け寄ってタコの意識が分散する。


 ここぞとばかりに接近してダガーの刃を叩きつけた。赤いヒットエフェクトが手ごたえを感じさせる。


 眼前にウィンドウが浮かび上がる。


『武器の熟練度が2に到達したため【サイクロンエッジ】を習得しました』


【サイクロンエッジ】

MPを消費して体を回転させながら攻撃する。

MP消費8

 



 スリングショットで【パワーショット】を覚えた時と同じだ。


 このタイミングで武器の熟練度が上がるとは思ってなかった。オブシダ洞窟での試し斬りや大きなモグラとの戦闘があったからか。


 何にしても使ってみるっきゃない。


 今は戦闘中。ショートカットアクションを設定している時間はない。


 疾走しながら体をひねる。


「サイクロンエッジ!」


 体が浮遊感に包まれた。天地が逆転して視界の隅に黒い刃が映る。


 サイクロンエッジは直進しながら攻撃するスキル。スキル慣性が乗って疾風の黒旋刃の追加効果が発動したのだろう。


 赤い巨体とすれ違って地面にブーツの裏をつける。


 振り向いた先でエネミーが砂浜の上に倒れ込んだ。


「あのタコ体勢くずしたぞ」

「今や袋だたきにしてまえーっ!」


 私もモグラに混ざってタコに総攻撃をかける。麻痺クナイを連射して麻痺の状態異常もかける。


 モグラたちの攻撃力がそれなりにあったのか、交戦から数分とせず巨体がポリゴンと化して砕け散った。引っかかる先を失った装飾品が地面の上に落ちる。


「やったあああああ!」

「ざまぁみろタコ!」


 モグラがわいわいする中、私は小首をかしげる。


 リザルト画面が表示されない。


 疑問に思っていると光が収束した。それが人型を形作る。


「ありがとう人間の少女。あなたのおかげでようやく解放されました」


 光がしゃべった。


 驚いたのは一瞬のこと。モグラもしゃべる世界だし光がしゃべったところで不思議はない、のかな。


 まあいいや。


「えっと、あなたは?」

「名乗るのが遅れました。私は海の精ディーネ。かつてこの入り江を守っていた者です」


 ディーネを名乗った光がいきさつを語る。


 彼女は長い間この入り江を守ってきた精霊らしい。


 じきに商人たちがこの入り江で交易を初めた。当初は害がないから見守っていたものの、ある日商人たちが危ない物の取引に手を出した。その一つに浸食されてタコの化け物に代わってしまったようだ。


「その代物はどうなったの?」

「ここに」


 差し出された手の平の上に玉が現出する。


「きれい」


 海の一部を切り取ったみたいだ。

 

 でもこれがディーネさんをタコの化け物に変えたんだよね。


「これ触っても大丈夫なの?」

「はい。この宝玉を穢していた邪気は弱まりましたから。ですがまた穢れをためこまないとも限りません。そこで提案なのですが、あなたが持っていてくれませんか?」

「私が?」

「はい。あなたからは清いオーラを感じます。澄んだ心の持ち主であれば、その宝玉が穢れをためこむことはないはずです」


 正直ちょっと怖いけど、超常的存在がそう言うなら大丈夫か。


「分かった。その宝玉は私が預かるね」

「ありがとうございます」


 光る手から玉を受け取ってポーチに入れる。


【『変化の妖玉』を入手しました!】


『変化の妖玉』

かつて商人の欲望により穢された宝玉。穢れは弱まったものの、いまだその真価を発揮することはできない。





 視線に気づいて横目を振るとモグラたちがこっちを見ている。


 後で取り合いになったら嫌だなぁ。


「では私は本来の使命に戻ります。心優しき少女よ、あなたの旅に旅神のご加護がありますように」


 光が霧散して空気に溶ける。

 

 私はモグラたちに向き直る。


「みんな、さっきもらった玉のことなんだけど」

「いいぜ、人間の好きにしても」

「え」


 戸惑いが言葉となって口をついた。


 ごねられると思っていたから意表をつかれた。

 

「本当にいいの?」

「ああ。精霊様がお前に渡したってんなら、俺らが口をはさむことじゃないしな」

「それに宝は他にもあるし」

「分かった。ありがたくもらっておくね」

「じゃ地面の上の宝を山分けすっか。人間、最初に好きなの選んでいいぞ」

「いいの? そっちのお宝ももらっちゃって」

「色々手伝ってもらったからな。いいだろプッツ」

「う、うむ」


 プッツの方は何か物言いたそうだ。


 でも自分の気持ちを抑えて順番を譲ってくれたわけだし、ここは甘えちゃおう。


「ありがとう。じゃあ私から選ばせてもらうね」


 一足先に宝石の類を吟味する。


 良いと思った物を拾ってモグラたちに順番を渡した。


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― 新着の感想 ―
妖玉がどんな使われ方するか気になるな〜
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