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走るのが好きなのでAGIに全振りしました  作者: 藍色黄色


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第27話

 

 待ちに待ったアップデート当日がやってきた。長いダウンロード時間をそわそわしながら待ちこがれる。


 更新データのインストールが終わった。ゲームハードを起動して電子世界に飛び立つ。


 視界内にいつもの街並みが広がる。


 早速指で宙をなぞった。開いたコンソールをタッタッと言わせてハウジングスペースの文字を探す。


 ボタンをタップして専用スペースに転移した。鮮やかな街並みから一転して草原が広がる。


 すがすがしい青空にふさわしい清涼感。髪をなでるそよ風が私を歓迎してくれているみたいだ。


 ポツンと立つ一戸建てに歩み寄る。


「これが私の新しいおうちかぁ」


 感慨深さを覚えながら玄関前の台座に腕を伸ばす。


 台座が専用コンソールになっているらしい。両手の指を置くと、面の上で光が縦横無尽に駆けめぐる。結晶で作ったキーボードという表現がしっくりくる様相だ。


 事前情報では、ログインしたばかりではハウジングスペースを遊び尽くせないとのことだった。


 配置できる物は限られている。物を配置するための人手も足りない。どこかにお助けキャラがいるらしいけど、それら足りないものは新マップに行かないと補えない。


 その一方で今できることもある。


「この辺りでいっか」


 倉庫から持ち出した鉄鉱石を消費して採取ポイントを設置した。見慣れた鉱石の亀裂がこんにちはと言いたげに露出する。


 薬草や鉄鉱石といったアイテムを一定量消費することで、ハウジングスペース内に採取ポイントを設置できる。


 設置場所によっては特殊なアイテムに変化するというのは運営のげんだ。サンプルの意味合いで高低のある場所にアイテムを散りばめてみる。


 これから数年とプレイするんだ。採取ポイントを作るなら早い方がいい。プレイヤーキラーから奪った資産もろもろをつぎ込む。


 作業が終わって元来た魔法陣の上に乗った。視界内に再びオレンジ色の屋根が映る。


 みんなもう出発したのか街はがらがらだ。

 

 私も急がなきゃ。


「おねえちゃん」


 転移の魔法陣を目指そうとした時だった。そでを軽く引かれて振り向く。


 幼い女の子が私を見上げていた。


 私は女の子を正面にすえてひざを曲げる。


「どうしたの?」

「おねえちゃん冒険者でしょ? 聞いてほしいお話があるの」

「いいよ。言ってみて」

「モグちゃんがどこかに行っちゃったから、探すの手伝ってほしいの。他の冒険者の人には断られちゃって」


 幼女がしゅんとする。


 眼前にウィンドウがポップアップした。


【モグちゃんの捜索】

ララからの依頼を受けますか?





 依頼については何も記されていない。受けたら詳細を聞く流れのようだ。


 大体想像はつく。モグちゃんがどんなペットかは知らないけど、街からそう離れていないところにいるはずだ。


 それは同時に、新マップの地面を踏むのが遅れることを意味する。


 依頼を受けて新マップを目指すことはできる。大半のプレイヤーは依頼を断ったか、依頼を達成せず新マップを目指したに違いない。


 すごく合理的な判断だと思う。


 でもウィンドさんとアナさんの一幕を目の当たりにしたせいか、相手がNPCだと割り切れない自分がいる。


 新マップへの期待と女の子の笑顔。


 私は十秒くらいうなった末に首を縦に振った。


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