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走るのが好きなのでAGIに全振りしました  作者: 藍色黄色


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第21話


 何度かエネミーと戦闘を繰り広げてダンジョン内を進む。


 たどり着いた先には扉がそびえ立っていた。


 いっそ門と形容できるかもしれない。交戦してきたエネミーと同じ材料でできているのか、扉は半透明でゴツゴツしている。


 誰かに作られたのは間違いないけど、人の手によって生み出されたにしては不格好だ。


 エネミーの手によって作られたのか、


 地震などの自然現象が積み重なった結果、奇跡的にでき上がったのか。


 全ては運営のみぞ知る。


「重そうだけど、私たちの力だけで開くかな?」

「手の平で押すだけで開きマスよ。この前他のプレイヤーがそうやって入ってまシタ」

「なるほど」


 ゲーム世界ならではの簡易化ってやつか。


 それはよかった。


 いざボス戦って雰囲気なのに、扉が重くて入れませんでしたなんてあり得ないし。


「二人でボスに挑んでみる?」

「いいデスよ。当たって砕きまショウ」


 当たって砕くって初めて聞いたなぁ。サムライさんの武器は刀なのに。


 私は深呼吸して大きな扉を見すえる。


 妙に息苦しい。


 陸上の大会で自分の番が来た時を想起させる、首をわしづかみされたかのような圧迫感。


 緊張している。その事実が純粋に嬉しい。


 全力で取り組みたいと思っている。そんな自分を取り戻せた。


 締めつけられるようなこの感覚は昔から嫌いじゃない。


「行こう」

「ハイ」


 サムライさんと肩を並べて扉を軽く押す。


 扉が自動的に開き始めた。ギィ……とすれる音に遅れて、ボス部屋の内装があらわになる。


「きれい……」


 感動が言葉になって口をついた。


 銀世界。そんな言葉が脳裏に浮かぶ。


 天井や壁、地面に至るまで半透明な鉱石でこしらえられている。きらきらした光が宙を飾るさまはダイヤモンドダストもかくやといった光景だ。


 幻想的かつ美麗な光景はさぞSNS映えすることだろう。


 だから黒い影がひときわ目立つ。

 

 闇がうごめいているかに見えたそれはエネミーだ。大きな鉤爪が結晶を粉砕して、肉食恐竜を思わせる頭部が大牙をのぞかせる。


「あれ、鉱石を食べてるの?」


 あごが上下するたびに破砕音が鳴り響く。


 栄養になるのか分からないけど、やっぱりエネミーは鉱石を噛み砕いている。


 魔界より来たる侵略者が銀世界を侵している。止めなきゃ。そんなシチュエーションに胸が高鳴る。


 四足歩行の巨体が私たちに気づいた。がらんとした空間に咆哮ほうこうが響き渡る。


 黒い怪獣の上に『オブシディアンレックス』と表記された。


「ニンジャさん来マス」

「うん。フォーメーションはさっきと同じでいい?」

「おっけーデス!」


 散開。


 黒い巨体がすれ違った。


 ドシドシドシ! とした足音がすさまじい重量を感じさせる。


 物理的攻撃力において質量は正義だ。ラグビーや相撲すもうの選手も勝つためにたくさん食べて体重を増やす。


 広間に伝わる地響きはエネミーの圧倒的な攻撃力の裏返し。それだけの重さを維持する体はさぞがんじょうに違いない。


 本当に私たちだけで勝てるのかな。

 

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