表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/59

Episode:09

 あたしたち学院生が「ケンディクへ行く」と言うときは、実際には港の周辺を指す。

 南北に長めの大陸国家――といっても大陸としては最小――の南西隅に、ケンディクはあった。

 はるか西、海を挟んだ向こうはアヴァン大陸。だからこの町は、古くから海の向こうとこの大陸とを結び、貿易の中心地として栄えてきた。


 町のいちばん南部は、港だ。他に港から運ばれたものを売り買いする市場、小さな店なんかがいっぱいあって、賑わっている。あと景観のよさで、観光スポットとしても人気があった。学院生が出歩くのもこの辺りだ。


 港の西から北西の海沿いは、商業区と呼ばれている。貿易関係の会社なんかがたくさんあって、そこに勤める人向けの商店や飲食店が多い。ただここは大人向けで全般的に高いから、あたしたちはあんまり行かなかった。


 港の東側で目立つのは、シエラの分校だ。なにしろ規模だけは本校を上回るから、その敷地もとても広い。聞いた話じゃ、昔の大貴族の持っていた敷地を、丸ごと使ったんだって言う。

 あともうひとつ目に付くのは、「裏町」とでも言うものだ。ロデスティオのスラムほどじゃないけど、そういう場所になっていて、あまり普通の人たちは近寄らなかった。


 港の北、町の中心部に当たる辺りは行政区だ。そういう行政機関がいっぱいある。

 あとここは元々、ここを支配していた領主や貴族たちの住むところだった。だから宮殿や石造りの古い町並み、劇場、大図書館なんかが集中していて、観光の目玉になっている。


 周辺、特に北側は高級住宅街が広がるし、その人たちが買いにくる高級な店がたくさんあって、独特の雰囲気だっていう。

 そして軌道バスがたくさん走っているのは、行政区と商業区だった。だから探している店は、このどこかなんだろう。


「やっぱり、行政区かな……?」

「かな。商業区、そゆ店あんま、なさそうだ」

 意見が一致する。


「えっと、じゃぁ何番路線……」

「1番だ。行政区だから」

 アーマル君、シエラに在籍が長いからケンディクも良く知ってるみたいだ。迷いもなく歩いていく後を、ついていく。


 ――ひとりで来なくてよかった。

 あたしだけじゃ街の勝手が分からなくて、きっと迷っていたはずだ。

 でもあの時は迷ったからこそ、イマドと会えたわけで……。


「ルーフェイア?」

「え? あ、ごめん……」

 考え事をしてたら、距離が離れてしまった。


「ごめん、早すぎた」

「ううん、あたしこそ……」


 さっきもそうだったけど、本当に優しいな、と思う。こうやって合わせてくれるのは、あとはイマドと、シルファ先輩くらいだろう。

 駅の脇――長距離列車の終着駅で、昔は貨物専用だった――を抜けて、すぐ先の停留所へ着くと、軌道バスがちょうど来たところだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ