Episode:59
「ニルギアってさ、今けっこう、すごいことになってるじゃん?」
イマドやヴィオレイ君が、頷く。
「俺、ちょっと調べたんだ。そしたら内戦とかすごくて、メチャクチャ貧しくて、どうにもなんないらしくて」
「僕もそう聞いてるなー」
あたしの知ってる範囲でも、やっぱりそんな内容だった。
教授なんかも同じこと言ってたけど、ニルギアはまず内戦がすごい。血で血を洗う戦いが続いていて、落ち着く暇がない。しかもこれが、互いの憎悪をさらに煽るから、まさに泥沼だ。
さらにその余波で、相当数の難民が発生してる。
当然だけど難民はまともな仕事がなくて、子供は学校に行くこともできない。だから大人になっても読み書きさえ出来ず、仕事がないの悪循環だ。
事の発端はともかく、この辺をどうにかしないかぎり、人がまともに生きていくことさえ難しいだろう。
ただなにしろ規模が大きいし、何世代にも渡った根深い話だから、誰もどうにも出来ないのが現状だった。
「思ったんだけどさ、俺ってニルギア生まれの割に、相当ラッキーかなって。上手くシエラに入れて、けっこう好きにやれてるし」
アーマル君が淡々と言う。
あたしとしては、彼がシエラの本校に居るのは実力だと思う。
でもシエラそのものに来られたのは、たしかに運が良かったって言える。何しろほとんどのニルギアの孤児は、シエラにたどり着くことさえないのだから。
「だからさ……上手く言えないけど、工兵のほうで技術覚えてさ。出来たら大学とかも行って、なんかこう、学校とか作れるようになりたいなって」
言ってから、恥ずかしそうにアーマル君が頭を掻いた。
「その、なんてかな。馬鹿みたいかなって思うんだけどさ。けどもしかしたら、何か出来るんじゃないかなって」
「いいんじゃね?」
肯定したのはイマドだった。
「やってみなきゃ、分かんねぇんだしさ。じゃなくても、そういうの覚えといて損ねーだろ」
「たしかにねー。上級上級って言うけどさ、上級になっても、そういうのは出来そうにないし」
ヴィオレイ君も同意する。
アーマル君がちょっと恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑った。
その3人を見ながら思う。
黒い肌に黒い髪、典型的なニルギア風のアーマル君。逆に、白い肌にダーティーブロンドのイマド。出身がどこか良く知らないけど、その中間風のヴィオレイ君。
見事なくらいに見かけが違うけど、みんな仲良しだ。
「今度買出し行こうぜ。せっかくだから何か作るわ」
「賛成! ルーちゃんも行こう」
「……だからそれやめろよ。ルーフェイアがヒクから」
「あ、やべっ! ルーちゃんごめん!」
笑い声が、食堂に響いた。
◇お知らせ◇
「メジロと女の子」の、受賞が決まりました。と言っても佳作なんですが(苦笑)
とりあえず受賞は受賞なので、掲載を取りやめます。ご了承ください
◇あとがき◇
ここまで読んでくださって、ありがとうございました♪この話は、ここで完結です。
行き当たりばったりで始めて、よく破綻しなかったかも……(汗)
明日からはまた新作に入ります。【夜8時過ぎ】の更新です。たぶんというか、かなり大雑把にしか決めてません。頑張らないと……
感想・評価歓迎です。一言でもお気軽にどうぞ♪