Episode:58
「ルーフェイア、大人しいんだぞ? お前がそんなに喋りまくったら、ヒクって」
「え……それヤバイやばいヤバイ」
ヴィオレイ君が焦り始めた。
「えーと、マジ今までひいてた? ゴメンね」
「あ、うん、だいじょぶ……」
口ではそう言いながらも、これで少し勢いが収まってくれればいいな、なんて思う。
「アーマル、お前、親戚見つかったってな」
「え? あぁ、うん。見つかった」
一瞬きょとんとしてから、アーマル君が答えた。
「良かったじゃねぇか。ケンディクに居たってマジか?」
「マジだよ。俺も驚いてる。俺のひい爺さんのとこへ嫁に行った人の、弟だってさ」
「ややこしいな」
楽しそうな会話。
アーマル君がこんなに話すの、初めて聞いた気がする。あの日大学まで回って、本当に良かった。
あの教授は、ちょっと困るけど……。
「もうその人、80歳だとかでさ。俺、ちょこちょこ行こうかと思う」
「いいんじゃね? 喜ぶだろうし」
なんだかイマドまで嬉しそうだ。
「でさ、俺、今度の夏休みにその人と、ニルギア行ってくる」
「マジかよ。ホントの里帰りじゃねーか」
べしっとイマド、アーマル君の頭を叩く。この辺男子ってほんとに乱暴だ。
「土産持って来いよ」
「金ないって。それよりイマド、オマエ、ルーフェイアに教えてないじゃん」
「ん? 何がだ?」
言われたイマドが、ぞんざいに答える。
アーマル君が苦笑しながら言った。
「進路のこと」
「あー、コイツの進路とか、別に悩む話じゃねーから忘れてたわ」
なんかあたし、忘れられてたらしい。
「どうせコイツ、ストレートに上級じゃん」
「そりゃそうだけど、教えるくらいしろよ……」
ため息をつくアーマル君に、イマドが訊いた。
「そーいや、お前は決めたのか、進路。俺がアヴァン行く前、悩んでたろ?」
「ああ、うん、決めた」
誇らしげな表情を、アーマル君が見せる。
「工兵の方にする」
「へー、いいんじゃね? お前、そーゆーの向いてそうだし」
うなずいてるとこを見ると、イマド、ずっとそう思ってたんだろう。