Episode:57
「寮?」
「いや、先にメシ。腹減った」
ちょうど昼時だから、イマド、お腹がすいてるんだろう。
「メニュー、何だか知ってっか?」
「ごめん……」
言いながら入った食堂は、ごった返してた。いちばん混んでるところに、ぶつかってしまったらしい。
「あー、これじゃ座れねぇな」
「……出直す?」
お腹が空いてるからこれはないだろうと思いつつ、訊いてみる。
「それナシ。腹減って死ぬ」
「だよね……」
どこか空いていないかと見回すあたしに、声が飛んできた。
「ルーちゃん、こっちこっち!」
ヴィオレイ君だ。
――でもなんで、呼ぶのあたしなんだろう?
イマドが隣に居るのに、そっちは無視なのが不思議だ。
ただ当のイマドのほうは、ぜんぜん気にしてない。そのまま声のほうへ歩いて行って、話しかける。
「ったくてめー、席まだ空いてんのに、なんでルーフェイアだけ呼ぶんだ」
「そりゃだって、ルーちゃん可愛いし」
いつもの、よく分からないやり取りが始まる。
「ほら、ルーちゃん座って座って。何か要る? もうメニュー決めた? 俺取ってこようか?」
「えっと……」
矢継ぎ早に言われて、言葉に詰まる。ヴィオレイ君すごく気が付くし、いろいろやってくれるけど、この勢いは苦手だ。
「あ、ごめんね、まだ決まってなかった? じゃぁ適当に持ってこようか? あっさりセットにする?」
「ヴィオレイ、いい加減にしろ。ルーフェイアが困ってる」
遮ったのは、アーマル君だった。
――ちょっと、変わったかも?
ほんの数日前まで彼、こんなふうに割り込んだりしなかった。だからすごく無口で、周りに関心がないと思ってたくらいだ。
やっぱりこの間ルーツが分かったのが、影響してるんだろうか。
「アーマル、お前なんか変わったな」
あたしと同じこと思ったらしくて、イマドがそんなことを言う。
「ルーフェイアの前じゃダンマリだったのに、どうしたよ」
「どうしたって……うーん、なんでだ?」
本人も別に、意識してるわけじゃないみたいだ。
「アーマルったら、昨日辺りからマジうるさいよ。せっかくルーちゃんに話しかけようとしても、止めたりするしさ」
「だってお前、押しが強すぎだし」
前にはなかった自信を、アーマル君から感じる。