Episode:56
◇Rufeir
硬い色の海に、陽の光が踊る。
ケンディクへ出かけてから2日。あたしは船着場に来てた。
湾の中に入ってきた連絡船が、しっかりと繋がれる。
「お、来てたのか」
「イマド!」
何日ぶりだろう?
「休みの間、お前どっか行ったのか?」
「あ、うん、いちおう……」
玄関へ続く坂を、2人でのんびり登る。
やっぱりこのほうがいいな、と思った。他のみんなが悪いわけじゃないけど、イマドといるのがいちばん落ち着く。
「そういえば、ケンディク……行ったの」
「独りでか? 珍しいなー」
勘違いしたイマドに、慌てて説明した。
「じゃなくて、アーマル君と。その、シュマーから流出した品、取りに行こうとして……」
説明が支離滅裂だ。
「なんかよく分かんねぇけど、アーマルのヤツと出かけたのは分かった」
イマドがいつもどおり、いい加減に納得する。
「良かったな。面白かったみたいじゃねぇか」
「うん」
いわゆる「面白い」とは少し違うかもしれないけど、すごく良かったのはたしかだ。
「アーマル君、親戚……見つかったの」
「マジか? ムチャクチャ運いいじゃねぇか、あいつ」
シエラじゃ親はもちろん、親戚も居ないのが当たり前だ。だから後から見つかるなんて、本当に稀なケースになる。
「何よりだな。やっぱ誰か1人でも居ると、違うかんなー」
自分も似たような立場のイマドが、ひとりで何度も頷いた。
「その人、ケンディクに居たのか?」
「うん。――あ」
いろいろ言ってしまってから気づく。こんなこと、あたしが喋っちゃって良かったんだろうか?
心配になって訊くと、イマドが大笑いした。
「アイツ、ンなこと言うヤツじゃねーよ。つかアーマルが、お前に言うわけねー」
「そなんだ」
断言されてちょっとだけホッとする。さすがにずっとアーマル君と一緒に居るだけあって、イマド、よく分かってるらしい。
「あとで、お祝いでもすっか」
「いいかも」
そんな話をしながら、校舎まで差し掛かった。
「寮?」
「いや、先にメシ。腹減った」
ちょうど昼時だから、イマド、お腹がすいてるんだろう。




