Episode:51
「あんたは黙ってろ。関係ない」
「だからです」
いつもの大人しいルーフェイアからは、想像も付かない。けどそんだけ、メチャクチャ怒ってんだろう。
――でも、何にだ?
それがどうしても分からない。
ルーフェイアが続ける。
「あたしが関係なくて、アーマル君が関係あるなんて、なんで分かるんですか? そんなの、ジュマさんが決めただけなのに」
「なんだと……!」
激昂したこの人に、でもルーフェイアは怯まなかった。ってもこの子が暴力沙汰で怯むなんて、絶対無いわけだけど。
「白いくせに何が分かる! お前が何か、この手のことでヒドい目にでも遭ったのか?!」
「遭ってません。でも、彼は友達です」
話が噛み合ってない気がするけど、どっちの言うこともなんとなく分かった。
黒か白か、そういう文字通りの色分けでひどい目に遭った、ジュマさん。
そういったことは関係なしに、実力だけでいろんなものを計るルーフェイア。
どっちの言い分も間違いじゃないから、どうやっても歩み寄らないって寸法だ。
ただ俺的にはそれがどうこうより、ルーフェイアが俺を友達認定して、擁護してくれるのが嬉しかったり。
この子のこと狙ってる連中に見られたら、絞め上げられそうだ。
ルーフェイアが続ける。
「だいいち……アーマル君がティティの末裔じゃなったら、誘いましたか?」
ジュマさんの表情が変わった。図星だったみたいだ。
――だとしたら。
さっき俺のこと解放戦線に誘ってくれたけど、下心ありありだった、ってことになる。で、その下心ってのが……俺を利用するってことだろう。
きっと探せば、俺みたいにティティの血が入ってるのは、他にもいっぱい居るんだと思う。ただ今それがはっきり分かってるのは、ここじゃ俺だけだ。だからそれを使って、運動を有利に進めようってことなんだろう。
でも、冗談じゃない、と思った。解放戦線とやらに興味がないわけじゃないし、ひどい目に遭ってる人は助けたいけど、こんなふうに利用されながらなんてイヤだ。
さっきから感じてた違和感は、きっとこれだ。
ルーフェイアを論破するのはムリと思ったのか、ジュマさんが俺のほうを向く。
「お前は、俺の言うことが分かるだろう?」
「分かりません」
即座に言い返した。
「……裏切るのか」
「俺は誰も裏切ってません。てか今さっき会ったのに、どうやって裏切るんだよ!」
思わずホンネが出る。
キレイ事に隠した野心に、吐き気がする。