Episode:05
「いいぞ。俺、時間あるし」
てか、こんなチャンス逃すわけが。イマドもシーモアもロア先輩もいなくて俺に回ってくるなんて、きっと二度とない。
「ありがと。あたしこういうの、苦手で……あ、えっと、今食べるね」
やっぱこの子いい。やたら気が強くて、その辺の男子より男っぽいシエラの他の女子とは、まったく違う。
せめてこの十万分の一でもいいから、あいつらも見習えばいいのに。
「急がなくていいぞ? 時間、あるから」
焦って食べてて喉に詰まらせそうで、そんなこをと言ってみる。
ルーフェイアが笑った。大輪の花みたいだ。
「ありがと」
俺、これで一生分の運使い果たしたかも。
安心したのか、ルーフェイアはいつものペースで食べてく。ちょっとゆっくりだけど丁寧で、美味しそうだ。
俺はさっさと食べ終わっちまったから、配られた書類でも見てることにした。そうでもしないとこの子、きっとまた気遣って、慌てて食べ始める。
「それ……なに?」
書類に興味持ってくれたらしい。
「進路調査だよ」
「進路調査?」
ちょっと首をかしげて――可愛すぎる――この子が聞いてくる。
「ほら、来年度からカリキュラム、少し分かれるだろ?」
「そうなの?」
初めて聞いた、そんな表情だ。
――ダメだろ、あいつら。
イマドもシーモアもついてて、こんな大事なこと教えてないとか、何やってんだよ。
「えーとさ、俺ら来年になると、傭兵隊の試験受けられるだろ?」
「うん」
さすがにこれは、シエラじゃ常識中の常識だから、知ってるらしい。
「でさ、その先少し分かれるんだよ。だいたいは上級目指しながら仕官候補コースだけど、他に医務官とか、工兵とか選べる」
「そうなんだ……」
本気でこの子、何も知らないみたいだ。てか誰かマジで教えろっての。
「あ、だから、カリキュラムが?」
「うん」
学年主席のルーフェイア、さすがにこの辺の察しはいい。
「普通のカリキュラムとって、傭兵隊に受かってからでもいいんだけどさ。でも事前に申請しとけば、それようの授業受けて、そっち専門で傭兵隊受けられる」
実言えば、悩んでるのはここのとこだ。
専門決めて受けるやつは少なくて、だから合格率が高い。けどその代わり、先の進路が狭まる。
ふつうに受けてそれからコース選ぶか、今のうちから決めるか。俺には大問題だ。
イマドみたいなヤツはいい。オールマイティで学科も実技も強いから、受かってからで十分間に合う。その点じゃ、ルーフェイアも同じだ。
ただ俺は、Aクラスの中じゃ本気でビリだった。自分でも、よく降格しないと思う。