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Episode:45

「教授、いい加減にしたらどうです? フォローになってませんよ」

「む、そうか? それは悪かった」

 ため息ついて、俺はそれ以上考えないことにした。この教授、やっぱりどっか天然で変人だ。

 代わりにお姉さん――俺的にはこのほうが嬉しい――が説明を始める。


「あのね、そんなに心配しなくて大丈夫。まぁたしかにニルギアは、年長者に対しての礼儀はうるさいけど、ここは遠いユリアスだしね。ここで育って会いに来た子に、イファさんそんなこと言う人じゃないから」

 どうやら会いに行く人、そんなに気難しくはないっぽい。


「もうずっとその人、ここにいるんですか?」

「ううん。最初は捕虜としてエバスかその周辺国かに、連れてこられたみたい」


 捕虜としてってことは今はもう少数派の、直接ニルギアから連れてこられた人ってことだ。だったら不謹慎な言い方だけど、ニルギアの話が聞けるかもしれない。

 俺は知らないから、すごく聞きたかった。ほんの少し残ってる記憶から考えると、生まれはたぶんニルギアだと思うけど、景色さえあやふやだし。


「最初ってことは、そのあとは?」

 いけないかな、と思いながら、好奇心に駆られて聞いてみる。


「んー、全部知ってるわけじゃないけど。最初のところは、何かのどさくさで逃げ出したみたい。で、そのあとは仕事しながら転々として、最後にケンディクに落ち着いたみたいよ。――ですよね、教授」

「うん、私もそう聞いてる」

 教授も同意する。


 言葉では簡単だけど、きっと実際にはすごい経験をいっぱいしてきたんだろうな、って思った。

 でもそんな人に俺、ちゃっかり会って話したりして、いいんだろか?


「あら、心配?」

「あ、はい……」

 答えると、お姉さんが笑った。


「大丈夫大丈夫、あなた見た目からして、ニルギアの血だって分かるもの。イファさん喜ぶよ」

「そうですか?」

 こんなふうに言われるとほっとする。

 けど前を行く教授の背を見て、複雑な気分になった。


 ずっとシエラの中に居たから、俺ほんとに世の中のこと知らない。

 俺が肌が黒いだけで絡まれたり、逆にルーフェイアが白い肌ってだけで襲われたり。なんでそうなるか俺には分かんないけど、けど言ってる人たちはみんな、それが正しいと思ってる。


 しかも本当に、肌が黒いってだけでひどい目に遭ってたりするから、余計にややこしかった。

 だとすると見た目と血とがぜんぜん合わなくて、周りに好き勝手なことを言われてお兄さんまで殺された教授は、どんな気持ちだったんだろう?





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