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Episode:41

 けど、ジュマさんが言い返した。

「だから何だ? 大学? それがどうした。努力だ苦労だって、お前がそうやったからって、誰かが仕事につけるのか? 赤ん坊が医者に行けるのか?」

 言われてみればそうだけど、でも何かが違う気もする。


「俺たちに必要なのは、俺たちが自由に生きられる世界だ。だがお前は所詮、自分のために勉強してるだけだろう」

「それは……」

 言葉に詰まったお姉さんの代わりに言い返したのは、アーマル君だった。


「いい加減にしろよ、いい年して!」

 じろりとジュマさんに睨まれてもアーマル君、負けじと睨み返して続ける


「自由をってのと、この人の大学は別だろ! ってか、その自由とやらの先陣切ってる人を、なんで責めんだよ」

「裏切り者だからだ」

 なんか、考えもつかない言葉が飛び出す。


「裏切ってないだろ!」

「いや、裏切り者だ。まだたくさんの仲間が困ってるのに、自分だけが抜け出すんだからな」


 それはおかしいんじゃないかと、さすがに思う。こんなふうに足を引っ張ってたら、抜け出せるものも抜け出せないんじゃないだろうか。

 アーマル君も、同じことを思ったみたいだった。


「ばっかじゃね? この人みたいに抜け出る人が増えるから、他も続けるって思わないのかよ? てーか、先陣の突破を妨害する仲間とか、戦場なら銃殺モンじゃん。部隊全部死んじまうだろ」

 こういう言われ方は、したことなかったんだろう。ジュマさんが黙る。

 アーマル君が畳み掛けた。


「つかそういうことなら、俺も裏切り者? 俺、親死んじまってシエラの本校だけど、俺が悪いんだ? それとも、辞めて野垂れ死ねって言うのかよ!」


 答えはなかった。当たり前だ。

 アーマル君のご両親が亡くなったのが、アーマル君のせいなわけがない。むしろ彼は被害者だ。そしてシエラの本校でやっていられるのは、それだけの力量があるからだ。

 それを裏切り者だなんて、間違っても言えないだろう。


「……俺は、許せない」

 沈黙を破って、ジュマさんが口を開いた。

「俺は努力した。西の大陸で学校もちゃんと行った。大学もだ。なのに――」

 悲痛な声。


「なのに、俺が黒いってだけで教授の連中、点を下げやがった。学費稼ごうとしたときも、俺が黒いってだけで門前払いだ。分かるか? いつもいつも、何もかもだ!」

 激昂。いったいどれほどのことが、昔あったんだろう?





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