Episode:40
「あの、別に、いいですから……」
グループの人に言った瞬間、殺気を感じてとっさに動く。
後ろから迫る気配に、確認しながら体制を落として、肘撃ち。さらに悲鳴を上げながらたららを踏んだ、相手の下半身――これ誰?――を掬い上げた。
あたしに投げ飛ばされた誰かが、グループの列に突っ込む。
「じゅ、ジュマさん!」
名前を呼びながらみんな駆け寄ったとこをみると、ジュマさんの不意打ちだったみたいだ。グループの人たちがあっさり言うことを聞いて頭を下げたのも、今までによくこうして、相手を叩きのめしてたからなんだろう。
――ある意味、正しいけど。
戦闘もそうだけど、こういうのは試合じゃないから、要は勝てばいい。だから不意打ちは有効だ。あたしじゃなかったら、成功してただろう。
ジュマさんとやらは、唸ったまま動かない。とっさのことで余り手加減しなかったから、効いてるんだろう。
「やれやれ、ホントにキミたちは大人気ないな。こんな小さい子にまで、こんなことして」
「うるさいっ! 白い連中の子供なんて、信用できっか!」
グループの1人が、掃き捨てるように言った。
けどあたしとしては、この方が納得が行く。人の考えが、そんなに簡単に変わるほうがおかしい。
ただ問題は、このままだと延々、この人たちに尾け回されて襲われることだろう。撃退自体はそんなに難しくないけど、さすがにずっとは嫌だ。
仕方なく呪文を唱えようとして……男の人の悲鳴と、女の人の怒鳴り声が聞こえた。
「ばっかじゃないの、あなたたちっ!」
「い、痛てぇ……」
お姉さんが、教授をも撃沈する拳で、グループの人を殴りつけてる。
「メンツなんてつまんないものにこだわって、こんな小さい子襲って、怪我でもさせたらどうすんのっ! というかね、自分たちの仲間の子がやられたら大騒ぎするのに、この子ならいいってどういうことっ!」
久しぶりに、ふつうの意見(?)を聞いた気がした。
「けど、だってこいつ、白いじゃな……ってぇっ!」
グループの人がまた殴られる。
「そうだからダメなのよっ! ここはケンディクで、エバスなんかじゃないでしょっ! だいいち街見てみなさい、白も黒も黄色も褐色も、みんなごちゃまぜじゃないのっ!」
お姉さん、凄い剣幕だ。
「色のせいにして、この馬鹿っ! あんたたちのせいで、あたしがどんなに苦労したか分かってんの? あんたたちが騒ぎ起こすたび、大学で言われなきゃなんないんだから! 努力が水の泡よ!」
今まで、よほど腹に据えかねてたらしい。お姉さんちょっと涙声だ。




