Episode:39
「お前たち、俺が認めた人に手を出したんだ。どうなるか分かってるだろうな?」
ジュマさんの言葉に、グループの人たちが縮み上がる。
「その、俺らマジで知らなくて! 勘弁してください!」
「黙れ!」
その間へ、あたしは飛び出した。
腕を十字に組んで、拳を受け止める。
「どけっ!」
「イヤです!」
言い返す。
「なら、お前を先にやってからだ」
言ってることがメチャクチャだ。完全に手段と目的が反対になってる。
けどこの人は、そんなのどうでもいいらしい。
「俺に楯突いたのを、後悔するんだな!」
言いながら殴りかかってくる。教授も言ってたけど、ほんとに短気だ。というか、何も考えてないんじゃないんだろうか?
ただ、隙だらけだ。相当ケンカで鍛えたとは思うけど、まだちょっと甘い。
紙一重で避けて、この人が僅かに体制を崩したところで、むこうずねを強く蹴る。
「つっ……」
痛みで大きくできた隙を、あたしは逃さなかった。
がら空きになったわき腹へ、つま先を叩き込む。
「ぐっ……!」
さすがに蹴られたところを押さえて、動きが止まったところへ、あたしは抜いた小太刀を押し当てた。
「動けば、切ります」
「……」
ジュマさんから戦意が消えた。
「ったく、なんてお嬢ちゃんだ」
「すみません……」
思わず謝ると、ジュマさんが笑い出した。
「いや、いい。あんたの実力を見抜けなかった、俺が悪いからな」
もしかしてこのジュマさんという人、言葉じゃなくて拳で語り合うタイプなんだろうか? 今はやりあう前と違って、心が通じている気がする。
――でも、いいのかな?
あたしはたまたま実戦慣れしてたけど、そうじゃない人が相手だったら、どんなにいいことを言っても通じないままで終わりそうだ。
「まったく、ジュマ君は相変わらず短気だな」
「教授だって相当ですよ。あの時なんていきなり、仮面被りましたし」
思わず乾いた笑いが出る。なんでこの2人仲がいいのかと不思議だったけど、教授、あの仮面状態でジュマさんを蹂躙したんだろう。
そのジュマさんが、グループの人たちの方へ向き直った。
「お前たち、このお嬢ちゃんによくお礼を言うんだな。命拾いしたぞ」
「はいっ!」
なぜかみんながあたしの前に整列する。
「お嬢様、ありがとうございましたっ!」
一斉に頭を下げて、どこかのお店か何かみたいだ。