Episode:38
「ルーフェイア!」
突然名前を呼ばれて、声の主を探す。
「あー、いたいた。大丈夫?」
さっき分かれたお姉さんとアーマル君が、他にも人を連れて来ていた。
「うわ、教授ったらこれ出しちゃったの?」
例の仮面を見ただけでお姉さん、何が起こったか分かったらしい。
「ねぇあなた、大丈夫だった? 何にもされなかった?」
教授が倒れてることは、気にならないみたいだ。
「何もって言うか、なんか、何とか女神の化身とか……それで、なんか飛び掛られて、思わず魔法を……」
「あらこれ、動力切れじゃなかったんだ」
教授、ひどい言われようだ。
「あたし……全力で、眠りの魔法、かけちゃって……」
「へー、今度あたしも教えてもらおうかな? 大人しくていいし」
お姉さん教授をよく殴ってたから、普段困らされてるんだろう。
「さて、今のうちに仮面を外してと」
言いながらお姉さん、仮面を外して、さらに教授をごちんと殴った。
「痛いじゃないか、ミラダ君」
「何言ってんですか、女の子襲おうとしたくせに」
それで起きる教授も教授だけど、お姉さんの言ってることも相当だ。
「何のことだ? 私は覚えていないぞ。仮面を被ったのは覚えてるが」
「だから、いつも言ってるじゃないですか。この仮面被っちゃダメだって」
「何を言う、これは偉大なるロワメナ神を象った、神聖なものだぞ!」
やり取りを聞いてるうちに、頭が痛くなってくる。
あたしたちを連れてきたグループのほうも、しばらく唖然と見ていたけど、こそこそと帰り始めた。
けど。
「お前ら、ちゃっかり逃げるんじゃない」
アーマル君とお姉さんが連れてきた、見知らぬおじさんが鋭く言う。
「じゅ、ジュマさん……?」
どうやらこの人が、さっき話しに出たジュマさんらしい。
あたしはなんとなく、もっと若い人を想像してたから、ちょっと驚きだ。
「何度か言っただろう。特にこの人には、むやみに手を出すなと」
「え、そうなんすか?」
ジュマさんという人、この一帯では相当力を持ってるらしい。もしかすると、何かの団体を率いているのかもしれない。
「まったく。知らないようじゃ困る。少なくともこの人は、俺たちの敵じゃないんだぞ」
「すんません……」
あんなに威勢が良かったのにグループの人たち、今はまるで、大人にいたずらを見つかった小さい子みたいだ。




