Episode:34
誰を、何の狙いで。そう考えてるうちに、向こうが動いた。二桁もの男たちが、あたしたちを取り囲む。
「何だねキミらは」
教授の問いに、1人が答えた。
「そこの白いの二人、俺たちと来てもらう。無駄口を叩いたら殺す」
簡潔な説明。でも内容はあんまり楽しくない。
「理由くらいは、聞かせてもらいたいが?」
「黙れ」
言って男たちが、一斉に銃を向ける。
(ルーフェイア、どうする?)
アーマル君が小声で聞いてきた。
(従って、成り行き見て、脱出のほうが早いと思う)
ついて来いと言うからには、連れて行かれる先はアジトかどこかだろう。そういう場所なら遠慮なく破壊出来るし、連れて行かれる間に防御策も施しておける。
問題は分断されたときだけど……あたしと教授だけなら、引き離された時点で反撃に出れば、どうにかなるはずだ。
「やれやれ。じゃぁこのお嬢ちゃんだけでも、返してやってくれないか?」
「ダメだな。2人とも来い」
ごくふつうの、子供には手を出さないとか、そういう話は通じない相手みたいだ。
とりあえず、教授の手を握りながら言う。
「あの、あたし、学校があそこなので……」
教授はあたしの顔をじっと見て、意味に気づいたみたいだった。
「そうだったな。――ミラダ君、キミはその子を連れて、先に行ってくれ」
「分かりました。ほら坊や、来て」
お姉さんがアーマル君を連れて、足早に立ち去る。
意外だけど、こういうことってけっこうあるらしい。教授もお姉さんも、対応が慣れすぎだ。
2人が角を曲がるのを見届けて、教授が口を開いた。
「で、どこへ連れて行く気だね?」
「いいから来い!」
周りを取り囲まれたまま、乱暴に後ろから小突かれて、仕方なく歩き出す。
「少しは思い知れ! 俺らのオヤジやジイさんは、お前らにこうして連れてこられたんだ!」
1人がそう言ったけど、正直何かが間違ってると思った。
お父さんやお爺さんが捕虜として連れてこられたのは、その通りだ。でも、この人たち自身じゃない。
たしかにいろいろ、不満も不遇もあるだろうけど……それをこういう形で向けられると、納得はいかなかった。
ただこの人たちに、それを言っても無駄だろう。
そう思って、教授と並んで、黙って歩く。