Episode:33
あとちょっと気になったのが、あたしや教授みたいな肌と髪の色の人が、少ないことだった。
全く居ないわけじゃないけど、かなり少数派だ。だからここじゃ、アーマル君やお姉さんのほうが、溶け込んでて自然に見える。
面白いな、と思った。ちょっと色の組み合わせと、そこに居る人数が違うだけなのに、こんなにも雰囲気が変わる。
「なんて人なんですか?」
アーマル君、気になるんだろう。さっきから教授に、質問ばっかりだ。
「もう80歳過ぎた方でね、イファさんと言うんだ」
すごいな、と思う。
シュマーの一族は、基本的に短命だ。血が薄ければ人並みだけど、ある程度以上に濃いと、30~40代でだいたい亡くなる。
まぁその分、成長も早いのだけど……。
あたしなんてどういうわけか人より育つのが遅いから、幾つも年下の子のほうが、よっぽど大きい有様だ。
どちらにしても、あたしたちの倍も生きるんだから、普通の人はいろいろ有利だと思う。
「なんでもイファさんは子供の頃に捕虜になって、エバスの隣国、ネーレアムに連れてこられたんだそうだ」
教授やアーマル君の顔が曇る。
捕虜になって連れてこられたってことは、つまり売られたってことだ。そのイファさんがどんなところへ売られたか分からないけど……けっして楽じゃなかっただろう。
「でも、どうしてケンディクに?」
「エバスとネーレアムが小競り合いになったときに、ドサクサにまぎれて逃げ出したらしい」
そのあと仕事を探しながら東へ流れていって、最後にこのケンディクに居ついたのだという。
「ここはほら、観光地だし保養地だから、世界中から人が集まるだろう? だから暮らしやすくていいそうだ」
「ですよね!」
アーマル君が勢い良く言う。
あたしはまだここへ来てから日が浅いから、彼ほどこの町に思い入れは無い。
でもたしかに、いい町だと思う。食べ物は豊富だし、冬は暖かい。夏はそれなりに暑いけど、目の前が海だし風もあるから、けっこう何とかなる。
これから会いに行くイファさんも、そんなとこが気に入ったんだろう。
と、気配を感じた。
他の人は気づいてないけど、明らかに複数が、それも前後からこっちを伺っている。
――どうしよう。
その気になれば、あたしひとりで何とかなると思う。ただそれは、周りを考えないで全力で行った場合だ。
もし実際にやったら、間違いなくアーマル君たちを巻き込む。