Episode:31
「じゃぁ、もう俺以外誰も……?」
せっかくいろいろ分かったのに、他に居ないってのはちょっと悲しい。
そんな俺に、教授が言った。
「いや、そんなことはない。血は繋がってないかもしれないが、ゴルンデノ平原南部出身の人なら、このケンディクにも居るよ」
「ほんとですか!」
なんせシエラに居るくらいだから、身寄りがないのは当たり前として……俺の場合他の生徒と違って、出身が遠すぎて同郷にも会ったことない。
なのに、こんなに近くに居たなんて。
「あの、どこの誰ですか? どこに住んでますか?」
会ってみたかった。
イマドとかヴィオレイは友達だけど、同郷ってのはまた違う。血とか土地の繋がりって、そういうもんだ。
けど教授は、思案顔だ。
「あの、教授?」
「いや、居ることはいるんだが……その、住んでる場所がアレでね。東地区なんだよ」
「東地区……」
このケンディクでも、治安がよくないので有名なとこだ。
でも、会ってみたい。
「場所、教えてください。俺、行ってきます」
「いやその、教えてあげたいのは山々だが、子供が行くようなところじゃないだろう」
教授は及び腰だ。でも俺は、どうあっても行くつもりだった。
ケンディクの東地区は、たしかに治安は他所に比べたら悪い。でもすぐ近くにある、シエラの分校の生徒が、依頼されて見回りに出てる。
逆に言うなら、せいぜいそれで済むくらいの荒れ方だ。本校のAクラスなら、気をつければ何とかなる。
「あの、あたしからも、お願いします」
今まで黙ってたルーフェイアが、教授の前へ出た。
「教授は、あんまりご存知ないかもしれないですけど……学院生のほとんどは、こういうこと、とても気になるんです」
ルーフェイア、やっぱいいヤツ過ぎる。一緒に居られる俺、どう考えてもメチャクチャ運がいい。
「えーとキミ、そんな瞳で見上げないでくれ! 私は美少女に弱いんだ!」
瞬間また盛大な音が響いて、教授が頭を抱えてしゃがみこんだ。
「まったく、いつもそう変態発言ばっかりして!」
お姉さん、激怒してる。
「この子たち、シエラの本校生なんでしょう? じゃぁ大丈夫ですよ。それに教授、もしかしたら何か新しい発見、あるかもしれませんし」
「それもそうか」
教授があっさり言いくるめられた。でも、いいのか?
「よし、じゃぁ先方に連絡とってみて、居たら私も一緒に行こう。それでいいかね?」
「はい!」
何か分かるかもしれない、そんな期待で、俺は返事した。