Episode:25
「あの……?」
「あぁ、天は私を見放したのか! このように美しい少女が、我が謎に助言をもたらしたと思いきや――男とは!」
ゴチンと盛大な音が響いて、教授が頭を抱えてしゃがみこんだ。
「痛いじゃないか、ミラダ君」
「そのまま永遠に寝ててもいいですよ?」
唖然とする俺たちに、お姉さんが向き直る。
「ごめんね、この人研究ばっかりで、ちょっとおかしいの。でもほら、危害は加えないから」
危害を加えないとか、まるでどっかの魔獣扱いだ。ってかこんなのが生息してるなんて、頑張って大学行ってみようかとも思ってたけど、考え直したほうがいいかもしんない。
「で、指輪持ってきたってホント? 見せてもらっていいかな?」
「あ、はい!」
間近にお姉さんの顔と胸が迫って、ドキドキしながら指輪を差し出す。
「へぇ……たしかに古そう。銀かな? 文字はこれ、ニルギア西部のティティ文字みたいだね」
さすがお姉さん、すらすらと口にした。
「どれ、見せたまえ」
興味ひかれたらしくて、教授が――緑の格好やっぱヘンです――手を出す。
「壊さないでくださいよ」
「こんな貴重なものに、そんなマネをするわけがなかろう」
言いながら教授が手にとって、声を上げた。
「なんとっ! これは噂に聞いた、部族の証ではないかっ!」
なんだか興奮してる。
「実物をこの手に出来るとは、なんという幸運! キミっ! これはどこで手に入れたのかね?」
「え? あ……あの俺、小さい頃から持ってて、よく分かんなくて……」
「こんな大事なことを、聞かされていないとは!」
教授がまた叫んだ。なんか何でも極端な人だ。
「では、キミのご両親はどちらかね? ぜひ話を聞きたいのだが」
「あー、死んじゃったんでムリです」
それまで大げさに騒いでた教授が、ぴたりと動きを止める。
「では、キミは……?」
「シエラの本校生です。親居ないんで、どうにかそこで」
部屋の中が静まり返った。俺とかルーフェイアはなんとも思ってないのに、この人たちにはショックだったみたいだ。
「そうか、キミも犠牲者だったのか……」
「はぁ?」
教授は訳知り顔だけど、俺からしてみりゃ意味不明だ。てか、勝手に犠牲にして欲しくないし。