Episode:23
浅黒い肌に黒い髪。香水らしい、いい匂いがする。
――って、ダメだろ俺。
いちいち気取られてて、ルーフェイアがいるのにみっともなさ過ぎる。
「あぁ、あの教授のとこ? 案内してあげるわー」
学生のお姉さんが気さくにそう言って、俺たちの前に立って歩き出した。
「ありがとうございます」
「いーのいーの。ヒマで大学来てみただけだし」
思わずルーフェイアと顔を見合わせる。大学ってのはシエラ以上に勉強するんだと思ってたけど、違うんだろか?
ともかく遅れないように、お姉さんの後ろを2人でついていく。
広い庭を歩いて、図書館だのらしいところを過ぎて、やっと俺たち建物へ入った。
「ハイ、ミラダ、後ろは新しい彼氏?」
友達らしい人から、なんか凄いことを言われる。
「そんなわけないでしょー。だいいちそれじゃ、こっちの美少女どーなんのよ」
お姉さんは慣れっこらしい。平然と返して続けた。
「知り合いの子なんだけど、大学見てみたいっていうから、連れてきたのよ」
上手いこと作り話して、俺たちの頭をお姉さんが撫でた。
「へぇ、偉い子たちねー」
「でしょでしょ」
学院でもそうだけど、こうなるとルーフェイア、完全にぬいぐるみか人形状態だ。あっさり捕まって抱っこされてる。
「やぁん、この子かっわいいー! 持って帰っちゃダメ?」
「ダメ! あたしが連れて帰るんだから」
それは誘拐じゃないかと思いつつ、抱きしめられてるルーフェイアが羨ましかったり。
ってか、俺が代わりたい……。
そこまで考えてから、俺また頭を振った。何考えてるんだ。
「あの、部屋は……」
盛り上がってるお姉さんたちに勇気出して言うと、はっとした感じで顔を上げた。忘れてたっぽい。
「ごめんごめん、可愛いからつい。行こうか~」
可愛いとなんでそうなるのかは謎だけど、それ以上は訊かなかった。っていうか女子のこういうの、訊いてもたいてい、余計謎が深まるだけだ。
昇降台に乗って、3階で降りる。
「これ、太鼓……?」
ルーフェイアの言うとおり、廊下の奥からそんな音が聞こえてた。
「あー、まーた教授やってる」
なんか叫び声まで聞こえてるのに、お姉さんはそう言って、へっちゃらな顔で歩いてく。
でもなんでだろう、なんかこう、この音聞いてるとステップ踏みたくなる。