Episode:22
「アーマル君、行こう」
この子らしい控えめな、でもはっきりした口調。
「けどほら、予定とか」
「大丈夫。それにその、今日、助けてもらったから……」
ご先祖様、俺感激で、前見えなくなりそうです。
ルーフェイアが優しいのは良く知ってるけど、俺の思いつきにまで気遣ってくれるとか、いい娘すぎる。
「行けるのかい? なら場所教えるよ。っても大学だから、間違いようないが」
オヤジが書き付けた紙を、渡してくれた。「ケンディク大学 ニルギア文化研究室教授、ペドジフ=ロドア」って書いてある。
「ふだんは忙しい人なんだけどね、ほら、まだ冬休みだろう? もしやと思って連絡したら、大当たりさ」
たしかに世間はもう平常だけど、俺たち学生はまだ休みだ。だからこの教授とやらも、のんびりしてたんだろう。
「ここへ来るとき使った軌道バスで3つ戻れば、大学の南門だよ。教授にはこれから行くって、連絡しておくから」
「ありがとうございます」
3枚目のメモを手に、お礼を言って店を出る。
なんだか、なんかの昔話みたいだ。こうやって次々何か出てきて、最後は宝箱でも出るんだろか?
でもその手の話の宝箱、たいていお宝は入ってないから、その意味じゃ鬱だ。
来た道戻って、また軌道バスに乗る。ルーフェイアは軌道バス気に入ったらしくて、楽しそうだった。
冬には珍しくぽかぽか陽気の中、今度は大学の門に着く。
「建物、どれだろう……」
「シエラよりデカいな」
大学なんて、俺たち全く縁ないワケで。
それでもルーフェイアの手前、カッコ悪いとこは見せたくなくて、精一杯虚勢張ってみる。
「どっかで聞いてみよう」
とは言うもののアテはないまま歩いてると、ここの学生らしい女の人がいた。すっごいグラマーだ。
思わず胸の辺りに見とれてから、慌てて首を振る。ルーフェイアの前で、何やってんだ俺。
「あの、すみません」
さっきの古道具屋もそうだったけど、気後れするのこらえて、話しかける。
「ここへ行きたいんですけど……」
女の人が、俺のメモを覗き込んだ。