Episode:21
それからあとは、子供ばっかりのどこかに居た記憶が続く。何度か場所変わって、最後にシエラの分校へ来た。で、そこの教官にはっぱかけられて試験受けて、今の本校だ。
気が付くとオヤジが、すごく辛そうな顔してた。
「いやその……悪かった。そんな事情とは思わなくて」
「別にいいですよ。俺、あんま気にしてないし」
正直小さい頃のことを辿っても、あんま覚えてなかったりする。いい思い出がないからかもしれない。
ともかくシエラ来てからの方が、ずっと良かった。ここは食い物も着る物も足りてるし、やればやっただけ認めてもらえる。
なのにオヤジ、ますます申し訳なさそうな顔になった。
「その、嫌な思いさせた償いってわけじゃないが……この指輪、エバスの南の、ニルギア大陸のものだ」
「ニルギア?」
ニルギアって言えば、俺みたいな肌の黒いヤツが、当たり前にいるところだ。
けどそれ以上のことは、よく知らなかった。たしか内戦や紛争が多くて貧しい、って習った気がするけど……。
「この指輪の模様みたいなのはたしか、ニルギアの文字のはずだよ。長男には代々伝わってる指輪を渡すって話も聞いたことあるから、間違いないだろう」
「代々……」
今まで、深く考えてもみなかった言葉だ。
なんでか知らないけど俺、昔からご先祖様に祈る癖がある。かなり小さい頃からだから、誰かが俺の周りでやってたんだろう。
だけどその「ご先祖様」が、現実に出てくるなんて思わなかった。
同時にすごく知りたくなる。俺はホントはどこから来て、どんな人の子供だったんだろう?
「あの、他になにか、知りませんか?」
「え? いや、他にって言われてもそんなには……そうだ、ちょっと待ってくれないか」
言うとオヤジ、通話石でどっかと話し始めた。
「――居てよかった。そう、ニルギア大陸の古い指輪だよ。どこのかだって? それはアンタが専門だろう。何、見たい? そう言うと思ったよ」
少しの間話してから、オヤジが通話を終えた。
にこにこ顔で、俺らのほうへ向き直る。
「この店によく来る教授が居てね、ニルギアの研究家なんだ。ぜひ指輪を見たいって言ってるんだが、どうする?」
「行きます!」
思わず俺、勢い込んでそう答えてた。
でも直後に、大失敗やらかしたことに気がつく。ここに来たのはルーフェイアのためで、俺の指輪なんて話に入ってない。
「えっと、ルーフェイア、ゴメン、俺別に……」
言いかけた言葉を、涼やかな声が遮った。