Episode:19
「あの……?」
人影がなくて不安なんだろう、ルーフェイアがもっかい、大きくはない声で呼ぶ。
「あー、すまんすまん、はいいらっしゃい」
声がして、奥から人が出てきた。配達屋ほどじゃないけどしっかり太った、禿げオヤジだ。
その視線が、ルーフェイアで止まる。
「驚いた、どこの迷子だい?」
「いえ、あの、あたし、そうじゃなくて……」
おどおどしながら、やっとここまでルーフェイアが言ったけど、あとが出てこない。人見知りで大人しいから、気後れしてんのかもしれない。
一瞬考えてから、勇気出して話に割り込んでみた。
「あの、彼女なんか、欲しいものあるらしいんですけど」
「欲しいもの?」
オヤジの目が細められる。どう見ても俺らのこと、品定めしてる感じだ。
と、ルーフェイアが顔上げて一歩出た。
――見たことない、毅然とした横顔。
どっかのお嬢さまみたいで、なんか見てるだけでドキドキする。
「短剣、入りましたよね?」
「え? あ、あれですか」
一瞬呆けてたオヤジ、気圧されたらしい。言葉遣いまで変わってる。
「見せて……もらえますか? 探していたものなら、この場で買い取ります」
言ってルーフェイアが、札束をカウンターに置いた。
「はいはい、今すぐ」
とたんにオヤジの表情が変わって、禿げ頭がカウンターの下へ沈む。揉み手でもしそうだ。
「これは偶然手に入れたんですが、どこから知ったんだか問い合わせが多くて」
言って出したのは、大きな宝石が着いた短剣だった。
もしこの石が本物なら――っていうか、どう見ても本物っぽいけど――きっとものすごい値段だ。
「あの、刃も見たいんですけど……」
「ええ、どうぞどうぞ」
オヤジが鞘から引き抜いて、ルーフェイアに手渡す。
「あ、やっぱり……」
彼女が独り言みたいにつぶやいて、何か小さく唱えた。
「これは……」
「すげぇ……」
何にどう反応したのか、刃がぼうっと光りだす。
やっと見つけた、そんな顔でルーフェイアがオヤジに向き直った。
「売っていただけますか?」
「か、構いませんが、これいわく付きで」
オヤジが口をもごもごさせながら、話し出した。