Episode:14
「で、何の用かな?」
「俺たちその、店を探してて……」
アーマル君が言うのを聞いて、あたしは急いでメモを出した。
おじさんが覗き込む。
「どれどれ? あぁ、こりゃ旧住所だ。ずいぶん前に表示が変わったんだけどね、まだこっちのほうを言う人もいるんだよ」
どうりで分からないわけだ。
「今で言う、どこになったっけかな? ともかく入りなさい、調べてあげるよ」
言いながらおじさんが、ドアを開けた。
魔光灯がつけられてもまだ、薄暗い店内。でもテーブルや花瓶、グラスなんかはどれも、質がよさそうだ。
「その辺に座って。何か用意するから」
その間にも手は動いて、オレンジなんかがが絞られて、冷機庫から出された何かと混ぜられる。
「さぁどうぞ、お酒は入ってないよ」
「すみません」
口をつけてみると、見た目からは想像できないような複雑な味で、なのにとても爽やかだった。
「本当はお酒で割るんだけどね。でも代わりに、ソーダ水で割ってみたんだ。どうだい?」
「美味しいです」
おじさんが満足そうに笑う。
「良かった。いま知り合いにちょっと、この住所聞いてみるよ。もう少し待ってられるかい?」
「はい」
おじさんが手を動かしながら、通話石で話し始めた。
「ああ、忙しいのに済まない。ちょっと教えてもらいたいことがあってね」
その間にも手元では、手際よく何かが作られていく。
「……ああ、それでいいよ。なんならついでに、何か食べてってくれ。いやいや、いいから」
どうやら、こういうのに詳しい人を呼んだみたいだ。
おじさんがこっちに向き直る。
「ここへいつも来る配達屋が、あと少ししたら来てくれるそうだ。彼なら本職だから、何か分かると思うよ」
なるほど、と思う。
配達屋さんなら、住所のプロだ。だったら昔の住所も、だいたいなら分かるだろう。
「ほら出来た。熱いうちにどうぞ」
大皿に乗せられた、あつあつのホットサンドが目の前に出されて、二人で顔を見合わせた。