Episode:13
「なんて子だ……」
「この色つきに、騙されてんだな」
男たちから、殺気――たぶん本人たちはそのつもり――が立ちのぼった。
尻餅をついていた逞しいのも立ち上がる。
「この色つき、懲らしめて――」
アーマル君に向けて拳を振り上げた逞しいのへ、あたしは一気に詰め寄った。そしてそのままの勢いで、股間に蹴りを叩き込む。
なんだかすごい悲鳴が上がって、逞しいのが動かなくなった。
視線を向けると、残る2人があとずさる。もう戦う気はなさそうだ。
「アーマル君、行こう」
「あ、ああ」
なんだか妙な声に振り返ると、アーマル君まで股間を押さえてる。
「大丈夫……?」
何か当たったんだろうか?
「だ、だいじょぶだいじょぶ。うん。行こう」
言って彼、背筋を伸ばした。これなら心配なさそうだ。
「えっと、どっちだっけ……」
「こっちかな」
思わず握り締めたみたいで、くしゃくしゃになった地図を見ながら、彼が指差す。
「地下じゃ、ないんだ……」
ロデスティオのスラムの、レニーサさんのところは地下だったから、みんなそうだと思ってた。
書いてあるとおりに少し行くと、たしかに古そうなビルの1階に、看板が出ている。
「……裏口どこだよ」
「どこだろ……?」
建物のどこかにあるんだろうけど、ちょっと見当がつかない。
「いいやもう」
面倒くさくなったみたいで、アーマル君がドアを叩いた。
「すみませーん」
「なんだ、うちに用だったのか」
なぜか後ろから声が聞こえて、二人で振り返る。
「いやぁ、買出しに出かけた帰りに、すごいもの見たよ」
細身で白髪、口ひげのおじさんが笑っていた。
「災難だったね、あんなのに絡まれて。あ、災難だったのは向こうかな?」
言いながらあたしの頭を撫でる。
「こんなこと言っちゃいけないかもしれないが、ちょっとすっとしたよ。あいつら、私にもいろいろ嫌がらせしてね」
おじさんがそんなことを言うのは、肌がちょっとだけ、赤銅色かかってるからだろう。あの三人組はやたらと肌の色にこだわっていたから、言いがかりをつけられてたに違いない。




